表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒龍の契約者―Contractor Of BlackDragon―  作者: 爪牙
第9-7章 凱龍王国編Ⅶ―7日目(四龍祭最終日)―
147/477

第135話 決勝レース

「―――――――洒落にならない効果だな。」



 勇吾は自分のステータスを見ながら呟いた。


 魔力の総量だけでなく才能、各能力の適正レベルまで上昇している結果に素直に喜べないでいたのだ。



「驚異的な効果だが、誰にでも同様の効果があった訳ではない。推測だが、四龍王や神達の用意した何らかの条件を満たしている者にのみ俺達のような硬化が現れる様にしているのだろう。そうでないと、世界のパワーバランスが数時間で激変しかねないからな。」


「……そ、そうよね!」


「どうした、リサ?」


「ん、何でもないわよ!効果がありすぎてちょっと動揺しちゃっただけよ!?」


「そうか。」



 リサは自分のステータスが見られないようにすぐに消した。


 基本的に勇吾はリサやトレンツといった幼馴染のステータスを見る事はあまりない。


 それは小さい頃から一緒に育ったので、ステータスを見なくても大体の事は互いに見ただけで理解できているからだ。


 まあ、緊急事態などの例外の時も存在するわけだが、今回に限って言えば態々覗き見る気もなかったのでリサのステータスを確認する事はなかった。



「―――――で、俺達の中で今回の《聖龍水》を飲んだのは今のところ何人いるんだ?」


「俺を除けば14人と言ったところだ。弟や慎哉達、後はミレーナを含めた女子のほとんどは現地で飲んでいる。全員、俺達と同様に驚異的な効果を受けているのは確認済みだ。」


「そうか、なら後でみんなにも説明しないといけないな。」


「だが、これで俺達は本格的に前に進むしかなくなったわけだ。俺はともかく、他の者達はつい最近までこちら側(・・・・)とは無縁な暮らしを過ごしてきた。それが事情は異なれど、今までとは比較にならないほどの危険のともなる世界に踏み込んでしまった以上は死のリスクも大きく背負うことになる。中には途中で引き返したくなる者も少なからず出ることを覚悟しておいた方がいい。」


「・・・・分かっている。俺も全員を積極的に組織と関わらせる気はない。可能なら、慎哉達には危険な戦場には立たせないようにしたいが、それは甘い考えなんだろうな。」


「そうだな、特に慎哉と瑛介(・・・・・)は確実に組織との戦いに突っ込んでいくのは避けられない。俺達が関わる以前から、それは決まっていたようなものだからな。」


「―――――――――!」



 勇吾は思わず絶句した。



「……何時からだ?」


「俺が気付いていないとでも思っていたか?最初に見た時(・・・・・・)だ。無駄に凝った小細工だったからすぐに気付けた。」


「…………」



 話してもいないのに気付かれていたという事実に勇吾は珍しく呆けてしまった。



「詳しく調べた訳じゃないが、俺の見立てだと慎哉に干渉したのは俺の昔の同僚(・・・・・・)だろうな。おそらく肉体にではなく精神への魔法的干渉、“縁切り”か“存在干渉”、どちらにしても命に影響の与える類じゃないのは確かだろうな。細かいところは直接調べないと何とも言えないが・・・・・・。」


「……見ただけで分かるのか?」



 勇吾は驚いた顔のままで訊いてみた。


 忘れている者もいるかもしれないが、慎哉は勇吾に出会うずっと以前に何者か、おそらくは『創世の蛇』の構成員の誰かに魔法による何らかの干渉を受けている。


 それにより、慎哉には《魔法耐性(Lv3)》という魔法を見破ったりできる適正が後遺症としてでき、《ステルス》によって姿と気配を消した状態で日本に来た勇吾と黒王の姿をあっさりと視認して彼らと関わりを持つようになったのである。


 この事は既に慎哉自身も知っている事であり、勇吾も組織を追う上で重要な手がかりとして今も慎哉の過去については調査している最中なのである。


 だが、今目の前にいる蒼空は、勇吾が未だ目ぼしい手がかりすら掴めずにいるのにも拘らず、自力でその事に気付いただけでなく、より詳しい情報を持っていたのである。



「―――――――手口を見れば大方犯人の予想はつく。この無駄に凝ったやり口は、多分アイツだろうな。確か、シャルの共同研究者だった男だ。」


「それは、シャルロネーアのことか!」


「ああ、あの女は愛称として同僚の間ではシャルと呼ばれていたからな。今は随分出世したようだが、シャルもアイツも正直性格が悪いというか、度の過ぎる悪趣味だというか、とにかく他人の人生を研究対象にしたりして好き放題やる連中だったな。」


「軽く言うのね?」


「実際、組織の中じゃ結構軽い面の多い奴らだったからな。俺も前世で()はよく参考意見を求められたりしたものだ。まあ、良く言えば純粋な研究者だな。一般人にとっては迷惑この上ないが。」



 蒼空は苦笑を漏らしながら話すと、リサは「フ~ン。」と拍子抜けしたような声を出した。



「奴らが今、何を研究しているのかは知らないが、そこに慎哉が大なり小なり関わっているなら慎哉の性格上、黙って結果を待つようなことはしないだろう。自分から危険に突っ込んで行くのが容易に想像できる」


「……それはそうだな。後で俺が慎哉に話をしておくから、その後にでも精密検査をしてくれないか?」


「ああ、ただし“呪いの件”も含めて有料だ。俺はボランティアで手伝う気はない。相応の代価を払ってもらうが、それでいいか?」


「……ああ、それでかまわない。」

(有料って……《聖龍水》をタダで持って来てそれを言う?それとも、これは治験だとかいうんじゃないわよね?)



 蒼空の言っている事の矛盾に気づきつつも、リサは黙って聞いている事にした。


 その後、別件の話(・・・・)をいくつかした後、勇吾とリサは蒼空と別れてギルドを後にした。






---------------------


凱龍王国 凱龍島東部沿岸


 勇吾とリサがギルドを出た丁度その頃、凱龍島の沿岸には大勢の人々が集まって海に向かって大声を上げていた。



『さあ、四龍祭記念凱龍島周回飛行レース決勝戦も後半へと突入だ~~~~~!!先頭グループは激しい攻防を繰り広げている~~~~~!!』



 海面からわずか数十m上空をいくつもの影が音速を超えて飛び続ける。


 四龍祭初日から続いている『四龍祭記念凱龍島周回飛行レース』もいよいよ決勝戦が始まり、凱龍島沿岸部にはレースを観戦しに来た人々で埋め尽くされていた。


 このレースには多少の制限が付くがギャンブルの対象にもなっており、一獲千金のロマンを追い求める者達(ギャンブラー)は自分の賭けた選手が優勝するのを願いながら応援をしていた。



「おおおおお!イッケ~~~~~!!」


「お前の俺の今月の全財産(おこづかい)を全額賭けたぜ~~~~!!」


「これで負けたら俺は………死にたくないから買ってくれ~~~~~~!!」


「不純な連中がいるわよ!?」



 血の涙を今にも流しそうな観戦客もいたが、多くの物は純粋にレースの観戦を楽しんでいた。



『キターーーーー!!決勝後半の8周目の先頭を飛んでいるのは誰だ~~~~~!!』



 沿岸部のあちこちに展開されているPSからはアナウンサーの熱い実況が響いていた。


 普通なら騒音と訴えられても文句の言えない音量だったが、今は誰しもその実況がレースを盛り上げるBGMとして聞いていた。



「――――――――来たぜ!!」


「先頭は誰なんだ!?」




        ヒュンッ!!




 いくつもの黒い影が観戦客の視界を通過し、それに遅れて衝撃波が海岸に襲い掛かり、それに伴って発生した大波が海岸を飲み込もうとした。


 だが、レースの運営側が事前に展開してあった魔法防壁によって観戦客が巻き込まれる事はなかった。



『オ~~~ット!ここで順位が変動した~~~!!数秒前まで3位だった瑛介選手が2位になって先頭の匿名希望のミスター・シークレットを目の前に捉えた~~~~~!!』



 実況の声に、沿岸部に集まった人々は一斉に歓声をあげた。


 最も、観戦客の中には相当な実力者も混じっており、彼らは音速を超えて飛行する選手の姿を肉眼でハッキリと捉えていた。実況に合わせて歓声をあげたのは暗黙のマナーみたいなものである。


 一方、先頭グループでついに2位にまで上り詰めていた瑛介は今までにない高揚感に実感しながら残る敵をその赤い両目で捉えていた。



『―――――後はテメーだけだ!覆面野郎―――――――!!」


「――――――――――。」



 少々高揚しすぎて言葉が荒くなっている瑛介は、今まで一度も後ろを振り返らない人間の男に向かって挑発紛いな言葉をぶつけた。


 決勝レースが始まってからずっと先頭を維持し続ける謎の青年、頭部を覆面で隠し、その隙間からは白い髪がわずかにはみ出している。


 瑛介の言葉にも全くの無反応な青年だが、瑛介は先程から妙な違和感を感じていた。



(……この感じ、やっぱアイツは!)



 それはただの混血から龍族になった今の瑛介だからこそ感じられた違和感だった。


 《龍眼》でもある瑛介の両目は、彼の戦闘を飛び続ける一見人間に見える青年がとんでもない格上の存在であると認識していた。


 そして、背格好などから来る妙な既視感、つい最近、目の前を飛行する青年の素顔を見たことがあると瑛介は先程から感じており、数秒前にそれが何だったのかようやく気付いたのだった。



『――――――――――おい!いい加減、そのフザケタ格好をやめて本気の姿になったらどうなんだ!!』


「…………」


『さっきから妙な違和感を感じてたんだが、その理由がようやくわかったぜ!!テメー、人間のフリをしているが龍族だろ!?』


「…………」


『ていうか、お前昨日テレビに映っていた奴だよな?そうだろ!!『迅龍王』!!』


「―――――――――フッ!」



 瑛介の叫び声はPSを通して凱龍王国全土に響き渡った。


 そしてその直後、今まで無言だった青年はその覆面を脱ぎ捨てて高らかに笑い声をあげた。



「ハッハッハッハ!!自力で気付くとは思わなかったぞ?全く、親子揃って(・・・・・)抜け目のない奴らだな!!」


『―――――――何!?』


「お望み通り、こっからは本気で相手をしてやる!しっかり目ん玉を開いておくんだな、小僧!!」



 その瞬間、青年の姿は閃光を放ちながらその形を一瞬で変わった。



『………それが!』


『ああそうさ、これが俺の真の姿と言う訳だ小僧!!『迅龍王シュンロン』、本気でお前らの相手をしてやる!死ぬ気で追い抜いて見せろ!!』



 白い龍、『迅龍王』は瑛介や彼の後ろを飛ぶ者達に向かって高らかに宣言したのだった。


 後に、このレースはこの世界の歴史に深く刻まれたレースとなった。






・今日は同時連載中の『ボーナス屋』も更新しています。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ