第129話 鬼ごっこ
『え~~~~~、ゲームの内容は『キングドラゴン鬼ごっこ』でえ~~~~す!ルールは簡単、今日の日没までにただ今お祭りをエンジョイしている『四龍王』を捕まえた個人or団体に賞金1億G(百億円)ア~~~ンド、好きな王族1名と好きな日24時間自由に好きにしていい権限をあげちゃいま~~~~~~す☆』
バカのサプライズ発言の直後、凱龍王国全土ではいち早く臨戦態勢に入る者達の姿が軽く一億を超えた。
良則のファンクラブは即座に近くにいる同士とチームを組み、灯歌のファンクラブの男勢は未だ嘗て無いほどの闘気を全身に纏い、正則の同級生女子全員は父や祖父にお願いして助っ人を着々と確保していった。
また、日頃からバカ共に恨みが溜まっていた被害者達もこの機会に乗じて・・・・・と考えていた。
『―――――――――攻撃は自由!ついでに制限時間内は国内での結界系や隠蔽系の魔法は強制完全無効化しちゃうからYOROSHIKU!!んじゃ、スタ~~~~~~~ト!!』
そして、凱龍王国全土が戦場と化した。
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凱龍王国 海龍島-海岸地区-
バカの合図と共に、王国の全域から夥しい数の《探知魔法》が広範囲に亘って発動された。
そして勇吾達のいるカフェにはいち早く他の何所よりもいち早く狩人達が牙を剥いてきた。
「「イタ~~~~~~~~~~~~!!!!」」
最初にハイロンを発見したのは国王との24時間デートを企む・・・・夢見る少女達だった。
彼女達は狩人の目付きでハイロンに向かって特攻を仕掛けてきた。
「欲望に忠実な人間は時に神すら畏怖させるものだな。」
「言ってる場合か!逃げるぞ!」
勇吾は飲み干したコップの横に代金を置くとすぐにその場から離脱した。
「逃げたわよ!」
「追うわよ!」
彼女達は《探知魔法》を常に発動させながらハイロンの後を追った。
その数秒後、上空に展開されたままのPSの画面が切り替わり、そこには額に怒りのマークをいくつも浮かべた竜則の顔が映った。
『国王の護龍竜則だ!さっきのバカをいち早く捕まえた者には同じく一億と、祭の期間中限定で、あのバカの生殺与奪の権限を与える!以上!!』
その直後、国内のバカの被害者達が例外なく燃え上がった。
かくして、国内最大規模の鬼ごっこが始まった。
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凱龍王国 海龍島-山間部-
「あのバカ、後でコキュートスに突き落としてやる・・・・・・!!」
「奴ならきっと抜け出すから無駄だと思うが?」
「気分の問題だ!」
バカへの恨みを募らせる勇吾を黒王が冷静にツッコミながら3人は街から離れた山の中に逃げ込んでいた。
「まさか本当に私の結界を無効化するとは驚きですね。今の世代は良くも悪くも優秀なようです。」
「感心しなくていい!」
「変な方向に優秀な者がいるからな。」
3人は気配を殺しながら木々の陰に隠れていた。
海龍島周辺は亜熱帯性気候であるため、凱龍島よりも湿潤で、ハッキリ言えば暑かった。
それでも海岸付近は海風が吹いていたのでそれなりに涼しかったが、勇吾達が今いる場所は蒸し暑いの一言だった。
「さて、とりあえず君達とはここでお別れとしましょう。追っての狙いは私達と、アレだけのようですので一緒にいなければ君達に害が及ぶ心配はないでしょう。
「――――――アレ?」
ハイロンはある方向を指差した。
そこには数千人の大衆に追われるバカの姿があった。
「――――ハハハハハ!見つかるの早くね~~~~~~?」
「「待ちやがれ~~~~~~~!!」」
「「隠し撮りの恨み~~~~~~~!!!」」
「「ネタにされた恨み~~~~~~~!!!」」
「アハハハハハハ~~~~~~~!!」
ズドドドドドドド・・・・・!!
「ギャア~~~~~~~~~~~~!!」
集中砲火を浴び、バカは何所か遠くへ吹っ飛ばされた。
狩人達は空にも飛び出し、バカの後を追って行った。
「「「・・・・・・・・・・・・・」」」
3人は取り敢えずスルーした。
「では、私はこれで失礼します。連絡先はロトくんに教えてありますので、何かあれば一報をください。」
「――――――え?それは聞いてないな?」
「2日前に会った際、メールアドレスを教えておいたのですが、忘れているのかもしれませんね。」
「全く、そう言う肝心な事はちゃんと・・・・・・・」
「勇吾、ロトはまだこういう事にはまだ疎いのだからそれは仕方が無い事だろう。それよりも、この事を早く皆に知らせるのが先だろう。」
「・・・・そうだな。ハイロン、今日は色々聞かせて貰って助かった。」
「いえ、私も話ができて良かったです。また明日、最終日の夜にまた会いましょう。」
そう言い残すと、ハイロンは勇吾の目の前から姿を消した。
「――――――さて、まずは竜江へ行くか?」
「そうだな、機を見てみんなにも話す必要はあるが、まずは王城とギルドに報告するのが先だな。黒、竜江まで乗せてってくれ。」
勇吾の頼みに、黒王は「ああ。」と簡潔に答えるとすぐに龍の姿に戻って背中に勇吾を乗せて空へと飛びあがっていった。
移動中、あちこちで何やら騒がしい音が聞こえてきたが、その中には聞くに堪えないものもあったので2人とも全部無視したのだった。




