第126話 龍王捜し
・四龍祭三日目に突入です!
凱龍王国-海龍島-
四龍祭3日目、この日は4日間の中でも最も活気付く日と言われている。
各地で行われる各種大会の決勝戦を始め、最終日前までに大規模なイベントを終わらせるところが多いので、観光客も3日目のうちにまだ見ていないイベントを全部見て回ろうとするので国中が活気づくのである。
そんな中、勇吾は単身で凱龍島の南西の位置にある『海龍島』に来ていた。
(―――――――当てもなく来てみたが、そう都合よく会えるわけがないよな。)
勇吾は義弟の父親の手がかりを探すためにこの島に訪れていた。
一昨日のロトの話から、今この国に来ている伝説の龍王、『海龍王』ハイロンが行方不明になっているロトの父親と親しい関係にある事が分かっている。
飛躍しすぎかもしれないが、この祭の由来でもある『四龍王』はロトの父親に関する情報を持っている可能性があると勇吾は推測していた。
(本命は『海龍王』だが、双子の兄である『迅龍王』も可能性はある。『紅龍王』もいる。なら、他の龍王がいてもおかしくはないな。)
勇吾は周囲を歩く人々を怪しまれない様にしながら観察しながら歩いていた。
本来なら魔法を駆使して探していたが、祭の開催期間中は余程の事がない限りは人混みの中で《探知魔法》などは使用しない事がマナーになっている。
法律で禁止されているわけではないが、祭の楽しい空気を壊さないために暗黙のルールとなっているのである。
(史実では、海龍王はこの島を拠点にしていた。なら、四龍祭の期間中はこの島を出入りしている筈・・・・・・と思っていたんだが、島と言っても広いからな。かと言って大声で呼ぶわけにもいかないしな・・・・。)
1日や2日考えただけで見つかるのなら勇吾以外の誰かでも見つけられている訳なので、勇吾の行動はほとんど無策に近かった。
それでも動かないと手がかりすら見つけられないので勇吾はとにかく歩き続けた。
すると、不意に勇吾の目の前にPSが展開した。
「・・・・・チャット?」
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・タダハナ:緊急事態よ!!
・U5:どうした!?
・淑女:どうしたの!?
・タダハナ:ヨッシーが知らない女とデートしてる!!
・日本人約全員:!!!???
・バカ:何?ヨッシーハーレム始めたのか?
・U5:お前は黙ってろ!!
・クロトレ:それって、きっとヨッシーの彼女だぜ?去年から付き合ってるからこっちじゃ有名だぜ?
・予言者:・・・・・ガ――――ン!!
・タダハナ:初耳よ!?
・307:そういえば言ってなかったわね?
・白狼ボーイ:それマジ!?
・淑女:あの時は大変だったわよね。ファンクラブが暴走して軍隊が動く寸前までいっちゃったから・・・・。
・クロトレ:面白かったけどな♪
・ハル:何があったんだ?
・U5:・・・・・・・抜けるぞ?
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PSを閉じ、勇吾は再び龍王探しを再開する。
周囲からは良則のファンらしき少女達が殺気立って何処かへ走っていく光景があったが、この世界でも見慣れた光景なので勇吾は無視した。
(やっぱり黒を呼んだ方がいいのか?だが―――――――――――――――)
再び考えながら歩いていると、また勝手にPSが展開した。
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・天翔丸:助けて!!変な人たちが無理矢理変なイベントに連れて行こうと・・・・うわっ!来た!!
・スカイ:おい、こっちは何故かデートさせられているんだが・・・・・。
・勤労少年:祖父さんが勝手に弟妹を拉致りやがった!!
・淑女:ちょっと!裏路地に変なポスターがあったわよ!?何よ『若き全裸パーティ』って!?
・天翔丸:僕、その勧誘に襲われてる~~~~~~~!!??
・クロトレ:ヤバ!琥太郎の貞操の危機じゃね!?
・予言者:・・・・・全裸がいた。
・U5:通報しろ!!
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何だかあっちこっちでトラブルが発生しているらしい。
(あのバカ、碌でもないイベントを企画しやがって・・・・・・・・)
苛立ちを覚えつつ、勇吾はとにかく歩き続けた。
20分ほど歩いていると、目の前に見覚えのある背中が見えた。
「―――――――――――――黒!!」
「――――――!勇吾か?」
呼びかけられて振り向いたのは黒王だった。
「・・・・・黒、お前里の方にいたんじゃなかったのか?」
「どうやら心配かけたようだな?」
「い、いや、少し気になっただけだ・・・・・。」
「―――――――悪かった。ある御方を探していてお前に連絡する事を忘れていた。」
「――――――“御方”?まさか、黒も四龍王を探してるのか!?」
「・・・・・どういう事だ?」
その後、勇吾は簡潔に事情を説明した。
話を聞いた黒王は目を丸くしながら驚愕するも、どこか納得したような表情を見せた。
「―――――――なるほど、なら“あの噂”もあながちただの噂ではないな。」
「噂?」
「ああ、10年ほど前から里の子供達の間で囁かれていた話だが、『伝説の龍王が今の人間と契約し
ている。』という噂だ。重鎮達は半信半疑だったが、ロトの父親の事を考えれば―――――――――」
「・・・・・十分あり得る話だな。」
勇吾は頭の中で今までに集まった情報を整理し始めた。
一時帰国してから数日、主に龍族関係の事件ばかりが続発していたが、その中にロトの父親が関わっ
ている可能性があると思われるものがいくつか混ざっていた。
ひとつは瑛介の父親である『飛龍王』の件、そして2つ目は今勇吾が捜している『紅龍王』の件だ。
(―――――少なくとも紅龍王と関わりがあるのは疑いようがない。なら、行方不明の他の龍王とも接点
があってもおかしくはないか・・・・・・・・・・?)
「―――――――――そのとおりだ。」
「「――――――――!」」
「私を捜しているようだね?」
心を読んだかのような言葉で呼びかけられ、勇吾と黒王は反射的に同じ方向を振り向く。
そこには、蒼い髪と海色の瞳の青年が微笑みながら2人の前に立っていた。
「初めまして、私がお捜しの『海龍王ハイロン』です。」
・今日は『ボーナス屋、勇者になる』も更新してあります。




