第125話 観戦
国王権限の下での討伐を終えた観客達はすがすがしい顔をしながら劇場を後にしていった。
「お兄ちゃん、僕の演技どうだった?」
「ああ、カッコよかったぞ!まさか主役をやるとは思ってなかったから凄く驚いたけどな?」
「うん!みんなでオーディションをやったら僕が選ばれたんだ!お兄ちゃんには本番まで秘密だって、丈お兄ちゃんと約束したんだよ!」
「ほう、そうだったのか。」
無邪気に話すロトに、勇吾は一部棒読みで返す。
今、勇吾とロトは2人だけで歩いている。
劇が終了した後、バカはお約束通りにワッショイされ、他のみんなとは劇場の前で解散となった。
勇吾はロトとアリアを迎えに行くために舞台裏の控え室に行き、そこで別の席にいたらしい姉と母とも合流した。
そこで勇吾の予定では家族6人で一緒にランチに行くはずだったが、外に出たと同時にアナウンスが入り、別会場で抜き打ちバーゲンが始まると知らされた女性陣は風の如く走り去っていった。
その10秒後にメールで「先に行っていてね♪」と連絡があり、今に至るのである。
「お兄ちゃん、夜の打ち上げパーティ、一緒に来てくれる?」
「ああ、母さん達も来るらしいから今夜は賑やかになるぞ?」
「うん!」
2人は手を繋ぎながら学生達の営業する露店などを見て回りながらランチの予約をした店を目指す。
「ねえねえ、さっき王様が花火を上げてたの見た?」
「見た見た!中心に変な人影があったよね?」
「怖~い(笑)」
横からよくある話が聞こえてきたが無視した。
ちなみに、国王一家も一緒にランチらしく、魔王の黒幕を引きずりながら別の都市へ向
かった。
その後、2人は港湾区のレストランで家族一緒にランチを楽しんだ。
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凱龍王国 武芸都市『西藍晶』
昼食後、勇吾は家族と一緒に藍晶湖の湖畔にある町『西藍晶』に来ていた。
幼馴染のツテでチケットが入手できたので、家族で闘技大会の観戦に来たのだ。
「お兄ちゃんは出場しないの?」
「―――――――気が向いたらな。」
「前回出たらボコボコだったからね~~~~♪」
「姉ちゃん・・・・・・・・・・・・。」
ちなみに、前回の闘技大会で勇吾は10代の部で予選突破を果たした。
しかし、本戦1回戦で良則の兄である剛則と当たってしまい、無双しまくった剛則に呆気なくボコボコ
にされて負けてしまったのだった。
その年の決勝戦は当然竜則と剛則の王族同士のチート全開、両者無双という言葉では説明できない兄弟対決になり、どっかの最終戦争かと言いたくなるような光景が続いた末に竜則の優勝で幕が下りた。
「流石に今回は竜則君は出場していないみたいね?」
「―――――――――出たら理不尽過ぎるだろ。」
良則と幼馴染の勇吾だからこそ、王族のチートっぷりは嫌と言うほど理解している。
この前の横浜の件での剛則の圧倒ぶりもそうだが、良則の家族は規格外しかいない。
「あ、始まるよお兄ちゃん!!」
「―――――この試合は・・・・・さっそく明則の登場か。」
大歓声とともに闘技場の中央に竜則と瓜二つの青年が片手に剣を持って姿を現した。
護龍明則、凱龍王国現国王の双子の弟である彼は難なく昨日の予選を突破していた。
「・・・・・どの道理不尽だったか・・・・。」
勇吾は明則のステータスを確認しながら呟いた。
【名前】護龍 明則
【年齢】18 【種族】人間
【職業】六皇 【クラス】雷霆の王
【属性】メイン:雷 光 サブ:風 水 土 火 氷 空
【魔力】7,209,000/7,209,000
【状態】正常
【能力】攻撃魔法(Lv5) 防御魔法(Lv5) 補助魔法(Lv4) 特殊魔法(Lv4) 属性術(Lv5) 武術(Lv4) 錬金術(Lv4) 鍛冶術(Lv4) 彫金術(Lv5) 占術(Lv4) 神眼 浄化 千里眼 雷化の法 箱舟の鍵 雷霆の剣
【加護・補正】物理耐性(Lv5) 魔法耐性(Lv4) 精神耐性(Lv5) 全属性耐性(Lv4) 全状態異常耐性(Lv5) 凱龍王の加護 龍神の加護 冥府神の加護 時空神の加護 雷龍の契約 神龍の契約 神獣の契約 幻獣の契約 雷神の契約 太陽神の契約 軍神の契約 豊穣神の契約 海神の契約 山神の契約 知識神の契約 神殺し 王の器 契約王 空間認識 超直感 etc
【開示設定】ON
チートの兄もチート、それのさらに上を行くドチートだった。
なお、明則は10月生まれなので今年で19になる。
(10代で魔力700万越えなんて無茶苦茶すぎるな・・・・・・・。)
現実とゲームの世界は違うが、魔力の数値はある程度はその人物の強さを測る目安にもなる。何故なら魔力は数値が上がるごとにその質や密度も上昇し、同じ魔力量をぶつけあったとして、結果的に魔力の総量の絶対値が高い方の攻撃が勝つのである。
この世界の若者の基準では魔力が1万でレベル1、100万ならレベル100といった感覚で認識されている。
もちろん、現実はそう単純ではないため、魔力だけがそのまま強さの全てと言う訳ではない。
ただ、魔力量の増加には肉体の鍛錬や精神力も大きく関わる為、500万の一線を超えると大抵の場合は魔力の差が強さの差に繋がる場合が大きい。
慎哉達はまだ知らないが、全ての人間は修業次第では誰でも魔力量を500万近くまで伸ばす事は可能である。
だが、そこから先は個人の潜在能力、才能が理不尽なほど大きく係わってくるため、生涯かけても500万止まりになる者はこの世界でも少なくはない。
特に600万越えとなるとこの世界の平均でも100年以上の修業が必要であり、さらに最高位クラスとまで言われる700万越えは数百年から千年以上の修業が必要とさえ言われている。明則の様に10代で700万を超える者など、まずはありえないのである。
(しかも、兄弟のうち上3人が最高位なんだからな・・・・・・死後は神格化決定だな。)
「あれ?明則の対戦相手って、昨日騒ぎを起こした龍族の子じゃない?」
「――――――――あいつか!」
勇吾が再び意識を闘技場の中央に向けると、1人の少年が明則と対峙していた。
人間の姿をしていたが、纏っている気配から少年が龍族であるのはすぐに分かった。
「・・・・・・あの子、結構できるわね?」
「ああ、けど、昨日は暴れた挙句、明則に瞬殺されたらしいけどな。」
「あいつ、容赦しないのよね。子供にが甘いけど。」
「そう言えば、姉ちゃんは明則とは連絡とかとってるのか?」
「直接会うのは年に数回程度だけど、チャットとかだと毎週喋ったりしてるわ。」
勇吾の姉、明則と同い年の鈴音は彼とは学生時代からの友人関係にある。
ただし、あくまで友人であり、どっちも恋愛意識を抱いてはいない。そもそも、2人にはそれぞれ両想いの恋人がいるのである。
そうこうしているうちに審判が試合開始の合図を出して試合が始まった。
ドゴッ!カッ――――!!ズガッ!!ドン!!
最初の1分間は互いに様子見の様に近接戦闘をしていった。
(かなり戦い慣れているな・・・・・・・・・・・・)
勇吾が明則の対戦相手を感心していると、明則は剣を鞘から抜いて刀身から膨大な電気を放ちだした。
「―――――――――――《雷龍撃》!」
明則が剣を振るうのと同時に雷鳴と雷光がコロシアムを飲み込んだ。
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凱龍王国 海門
「ゴロゴロ鳴って凄かったね!」
「―――――――相変わらず派手だったがな。」
勇吾達は観戦を終えて帰宅の途についていた。
試合は明則の一撃により呆気なく終わり、対戦相手の少年は昨日の乱闘と同じ結末で敗北したのだっ
た。
「――――――そう言えば、この後の打ち上げには母さんも来るのか?」
「当然でしょ?私は2人のママなんだから♪」
「そして私達はお姉ちゃんだもんね~~~~♪」
「ね~~~~~~♪」
勇吾達はこの後、一旦家に帰って着替えを済ませ、再び竜江に戻ってロト達の演劇の成功を祝した打ち上げパーティに出る予定だ。
パーティそのものは主役が全員5~6歳の子供達ばかりなので数時間で終わるが、その後は教師や保護者達だけの“裏の”打ち上げパーティが催される予定になっている。
特に今回は正則の家族も参加するので相当なものになるだろうと勇吾は考えていた。
(まあ、俺は2人と一緒に帰宅したら2日目も終了か。明日は・・・・・・・・・)
勇吾は今日の劇の内容を思い出しながら明日の予定を考えていた。
この国の始祖である凱龍王と眷属達の出会いの物語、今では王国の領土である五大島の名称にもなっている始祖を含めた5人の龍王、伝承では四龍祭には彼らは人々に紛れ込んで祭に参加していると言われている。
普通ならただの伝承止まりだがこの国では違う。
実際に、伝説の龍王に出会った事のあると言う人はかなり存在し、その中には王族も含まれており、現国王の竜則もその1人だ。
そして、数秒ほどであるが勇吾も昨日初めてその姿を目撃している。
紅都のコミケ会場で銀洸と立ち話をしていた紅い神の男・・・・・・
(『紅龍王』サラマンダー、そして・・・・・・・)
昨日の晩、夕食の時にロトが会ったという蒼い髪に海色の瞳の青年、彼は行方不明のロトの父親と友人関係にあると言う。
(『海龍王』ハイロン・・・・・・。)
ロトはまだ知らない。
死んだと思っている自分の父親が生きているということ、そして、勇吾がその父親を探すために地球に行っているということを・・・・・・・・。
(明日は龍王探しだな・・・・・・・。)
家族の誰にも悟られないようにしながら、勇吾は明日以降の予定を立てていくのだった。
そして、四龍祭は後半をむかえようとしていた―――――――――――
・ヨッシーの家族はチートしかいない!その気になれば地球征服だって楽勝!
・同時連載の『ボーナス屋、勇者になる』も機会があれば読んでみてください。




