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黒龍の契約者―Contractor Of BlackDragon―  作者: 爪牙
第9-3章 凱龍王国編Ⅲ―3日目―
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第112話 龍族の会合

・できたてホヤホヤです。

・今週は少し文章を短くして投稿する事になりそうです。

飛龍の都 龍王宮


 龍王宮の中心部の地下、そこは部屋と言うより大空洞に近く、元々あった大空洞の外壁部を整備して造られた龍族の為の大会議場だった。


 大空洞である特徴を生かし、人化しなくてもそのままの姿でいられるこの場所は、龍族にとっては長い会合で生じるストレスを少しでも和らげる役目も担っている。それほど負担になる訳ではないが、やはり本来の龍の姿の方が龍族にとっては自然体であり、精神的にも気構えなどが違ったりするのである。



『――――――粗方揃ったようだな?』



 正面に立つ一際高い石柱の上から全体を見渡したアルビオンは、今回の会合の参加者が粗方集まっているのを確認すると、隣の石柱に立っている先代飛龍王、瑛介の祖父であるヴォルゲルに視線を送るとヴォルゲルもコクリと頭を前に振る。



『では、これより臨時の会合を始める。ほとんどの者が知っているだろうが、昨日彩雲山で放たれた魔力は30年前に消息を絶った当代飛龍王、『天嵐』の長子の一時的な魔力の暴発によるものだ。』


『『―――――――――――!!』』



 『天嵐』の名が出た途端、参加者達全員の視線がヴォルゲルに集中する。


 予想していた反応なのでヴォルゲルは全く動じることなく、アルビオンは気にせず話を続けていく。



『――――付け加えるが、暴発は彼に掛けられていた《神龍術》による“封”を俺が解除した事により発生したものだ。彼は強固な“封”により気配もステータスも完全に人間のものに偽装され、解除した俺自身もほんの数十分前まで彼が『天嵐』の子供であるどころか、混血であることにすら気付かなかった。』


『――――――“封”だと?』



 参加者の1人、藍色の神龍がアルビオンに疑問の目を向ける。



『ああ、俺が気づく事が出来たのは、最近各地の王達を手当たり次第にケンカを売っていたこの里の問題児が《縁の眼》と《龍眼》を使って彼の“中”を視たのがキッカケだが、それについては別件になるのでここでは省く。それよりも、俺は彼に父親について訊いたが、話によれば彼の父親、つまり『天嵐の飛龍王』ヴェントルは6年前に異世界地球で死亡したと言っていた。』



 会場内が一気にざわつく。


 龍王の死は龍族にとって大事件であり、本来ならあってはならない事件でもあるのだ。何故なら、死を悟った龍王は一部の例外を除き、そのほとんどが後継者を見つけて継承させるか、死期を悟るより前に王位を掛けた決闘で勝った者に継承させるのが龍族共通の慣例なのである。


 にも拘わらず、現役の龍王が同族にも知られずに死ぬと言う事は、永い歴史から見ても異常な事件なのである。



『随分、キナ臭い話だな?』


『―――――――闘龍(とうりゅう)。』



 参加者の大半が抱いていた感想を代弁する者が現れた。


 皆の視線はその者に移り、その龍は気にすることなくアルビオンに質問をぶつけた。



『俺も昨日のうちに契約者と共にそれなりに調べたが、飛龍王が死んだという事件はトンネルの崩落事故だっていうじゃないか。正直、俺は龍王がその程度の事で死ぬとは天地がひっくり返らない限り信じられないぜ?大体、飛龍王は人間のフリをしていたんなら、死んだら現地の人間達が騒がないのも可笑しいだろ?龍族なら誰でも知ってるだろ?俺達が死んだら、その躯がどうなるか(・・・・・・・・)・・・・・・?』


『――――それは俺達も同意見だ。実際、30年前からのヴェントルの行動は自身の死を偽装するためのものとみられる節がいくつもある。何より、この都にある“玉座”は細工をされているが、僅かに在位を示す反応が残っている。』


『俺は噂でしか知らないが、飛龍王は洒落にならないほど技巧的な男だな。ここにいる全員が昨日まで気付かないなんて、ここ二千年を見ても正直ありえない・・・・と言うより、龍王としても神龍としても規格外だろ?この中に同等の芸当ができる奴なんかいないんじゃないか?』


『闘龍、少し口を慎め!』


『いや、闘龍の言う事は間違ってはいない。実際のところ、俺自身もまだ呆気にとられている部分がある。同族だけでなく、龍族全体や数多の神格をも欺いてきた手腕を、俺はここ千年以上数える程度しか知らないからな。』



 それは紛れもないアルビオンの本心だった。


 今この会場にいる龍族の中で最も強いのはアルビオンである。そのアルビオンですら、昨日まで気付けなかった

という事実は、ヴェントルの龍王としての力量の高さをここにいる全員に知らしめていた。


 だが、それは同時にそれほどまでの力を持ったヴェントルですら敵わない敵が存在する事を証明する事にもなった。



『―――――話を戻そう。知らない者もいると思うが、『天嵐』を含めこの半世紀の間に龍王が襲撃され、中には殺害される事件が判明しているだけでも5件ほど起きている。さらに遡ればもう1件(・・・・)あるが、今は置いておく。』


『待て、5件だと!?4件じゃないのか―――――!?』


『先日・・・・一昨日になるが、『夜闇』が何者かに襲われて重体になっている。』


『『『――――――――――――!!??』』』



 一瞬にして会場は騒然となった。


 『夜闇の龍王』、つまり黒王の従兄弟である龍王はヴェントル同様に若くして龍王となった、いわゆる龍族の神童であった。


 その龍王までもが重体になったという事実に、戦慄する者も1人や2人だけでは済まなかった。



『一体、何者が・・・・・・・!?』



 神龍の1人が呟く。


 すると、その問いに答える者が声と共に会場に現れた。





『―――――――――『神話狩り』だ!!』





 全員が一斉に視線をそこに向ける。


 そこにいたのは空色の鱗を持った東洋龍だった。


『『碧落』か、久しいな。いや、それよりも先程の言葉は?』


『――――『神話狩り』ペリクリス=サルマント、あの組織の『真なる眷属(オリジン)』の1人、私の兄を殺した男だ!』


『それは本当か!』


『『創世の蛇』か・・・・・。』


『あの『碧羅』を殺しただと!?』



 場は再び騒然となる。


 この数十年、誰も手がかりひとつ見つからないまま時間が過ぎるだけだった事件の容疑者の名前がついに挙がったのだから無理もない。



『静粛に!!お前達、騒ぐのも無理もないとは言え、上に立つ者として落ち着きが足りないぞ!一体、何年生きてるんだ!?』


『17だが?』


『14年だよ~~~?』


『『『・・・・・・・・・・・・・・・・・』』』



 ここにいる参加者の中でも最年少の2人、闘龍とバカ龍王の声で会場は一瞬にして静まった。


 得にバカ龍王の声を聞いた瞬間、多くの参加者達が「何故いる!?」と心の中で叫んでいた。


 そして多くの参加者達は《念話》を使って荒れまくった。



〈おい!何故アイツがここに来ている!?〉


〈ワシに訊くな!腐っても龍王だからじゃないのか!?〉


〈腐りすぎだろ!?うちの娘なんか、奴と関わって以来、腐った薄い本を読む様になったんだぞ!!〉


〈読むだけならまだマシだろ。俺の所は妹が俺をネタにし始めて・・・・・・・・うぅ・・・・。〉


〈おい!『戟鎧(げきがい)』が泣き出したぞ!?〉


〈先の戦の英雄が・・・・・・・・・ムゴイ・・・・・。〉


〈あのバカども、また被害者を増やしやがって!!〉


〈・・・・俺の里、最近老若男女問わずオタクが増えてきているんだ。最近は妻も・・・・・・・〉


〈って、『砂塵の龍王』までもか・・・・・・!〉


〈しっかりしてくれ!!龍王のアンタまで落ちたら・・・・・う・・・俺も・・・心が・・・・・〉


〈わ~~~~~~!!誰か医者、いや、カウンセラー呼んで来~~~い!!〉


〈・・・・・・俺、帰っていいか?〉


『――――――お前ら、いい加減に・・・・・!』


〈――――――アルビオン、儂、孫の所に早く戻りたいんだが?〉


『お前もか!!』


『・・・・私のこと、もう忘れられてない?』





----------------------


 1時間後、会合は内容が逸れまくってしまったがどうにか再開された。


 なお、バカ龍王は黒王がしっかりと押さえたのでしばらくは安全である。



『―――――――――と言う訳で、現在我らは『創世の蛇』の脅威に曝されている。龍王が何人も命を落とされている以上、奴らは・・・・特に『神話狩り』は何らかの“龍殺し”の手段を入手したものと考えていいだろう。種類まではまだ特定できないが、どちらにしても敵は我らに刃を向けた事は変わらない。ならば、今より我らは――――――――』



 結論から言えば、この会合により龍族達は一丸となって『創世の蛇』の脅威と戦う事を決定した。


 当面の優先事項と言えば、現在行方不明となっている2人の龍王の捜索、そして格差との垣根を越えての戦力の強化、そして契約者持ちを増やす事である。


 神同様、龍族も異世界で大掛かりに行動するには人間との契約が必須となる。それは戦力の強化の為でもあるが、何より重要なのは世界への過剰な負担の緩和のためである。


 龍族の力は強大である以上は世界そのものへの影響は避けられない問題である。


 それは可能な限り減らすための手段が《契約》であり、ここにいる参加者達にとっては頭を抱えたくなる難問でもあった。



『では、今日の会合はこのあたりまでにしよう。これより先は今回来ていない者達も揃った時ではないと進められないからな。』


『そうですね、今日は青龍殿や黄龍殿も不参加でしたし・・・・』


『あ、親父なら二日酔いでダウンしているだけだぜ?』


『・・・・・・・・』


〈あれ~~?昨日、ティアマトさん見かけたけど、いないな~~~?〉


『待て!ティアマトがいただと!?』


〈うん、何だか知らない龍と一緒に飛んでたよ~~~!〉


『・・・・・・・・』


『そういえば、どうも一部の龍王の中に、どうも様子がおかしいのが数人いるな。まい、元から変わり者な輩ばかりではあるが・・・・』


『・・・後で俺が確かめてこよう。では、他に何も無いのならこれにて散会とする!』



 そして会合は閉会となった。


 だが、参加者の中には会合とは別に非公式な対談を計画していたらしく、散会となっても会場に残る者の姿が複数あった。



(さすがに吐かせるまでにはいかないが、各氏族に問題が発生しているのは確認できたな。明日の四龍祭、何らかの動きがあるかもしれないな・・・・・)



 あえて残っている者達に意識を向けず、アルビオンは会場を去ろうとするが、そこにひとつの影が彼の行く手を遮った。



『龍皇殿。』


『―――――霄龍か。』



 アルビオンの前に現れたのは、会合に途中から参加した『碧落』と呼ばれた龍だった。


 『碧落』霄龍、それが彼の名前である。



『この後、時間をいただけないだろうか?』


『――――構わないが?』



 2人は横に並びながら会場を後にした。








・実はこの会合の参加者の平均年齢は軽く500歳を超えます。

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