第10話 幼馴染達+α 動く! in 異世界
勇吾の幼馴染達の登場です。
タグに異世界入れたのになかなか書けなかったので今回の舞台は異世界です。
地球の存在する世界とは時空の壁を隔てた先にある世界―――――
地球のある世界同様、この世界そのものに決まった名前はない。しかし、この世界の生きる人々の多くは自分達の住む場所を『異界と繋がる場所』、または『青の上の世界』と呼んでいる。前者はこの世界そのものが異世界とつながり易いという性質から、後者はこの世界の陸地面積が地球より狭く、宇宙から見ると一番大きな大陸―――最大でもオーストラリアの1.2倍―――も海に浮かぶ島にしか見えないのが理由である。そのため、この世界を構成する国家の多くが島国となっている。
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創暦4105年7月2日 凱龍王国 首都 竜江
数多くある島国のひとつに凱龍王国がある。国土総面積は日本よりも広く―――日本は約38万㎢―――約50万㎢程ある。その中でも一番広い面積を誇る島――凱龍島――にこの国の首都・竜江はある。
島の東部沿岸に建つ竜江は「水の都」と例えられ、都市には多くの川や水路が通っている。水路の上を船が行き来する光景は地球とほとんど変わらない。
この世界の交通手段の中には地球同様自動車があるが、混雑するほど走っていない。それは単に移動手段が他にもある事と地球ほど人口が密集していないのが理由である。 この世界では科学の他に魔法が発展しており、多種多様な技術が開発されている。そのひとつが空間移動である。これは空属性を持つ者しかできなかったが、属性を変換するシステムを組み込んだ『転移装置』により魔力があれば誰もが利用出来るようになり、現在では同国内の都市間は公共の転移装置で結ばれている。 竜江もまた、転移装置によって国内各所とつながっている。
その少女、門原リサは転移装置を利用して竜江に来ていた。
彼女は栗色の髪を揺らしながら海岸沿いを歩き、一件の建物の前で止まる。その建物の前に掛けられた看板には『冒険者ギルド 竜江港湾支部』と書かれていた。
自動ドアの入口から中にはいると30人程の冒険者がいた。若い者だと10歳を過ぎたばかりの少年少女、高齢の者だと40歳前後、外見上はであるが。ここにいるのは人間だけとは限らないのである。
「リサ!」
その中の1人、壁際に立っていた茜色の髪を肩の下まで伸ばした少女がリサに向かって手を振りながら呼ぶ。
「ミレーナ!」
リサも手を振りながら彼女、ミレーナ=カフィの元へ向かった。
2人は適当に挨拶を済ませ、ギルドの2階にあるカフェへと向かった。
海の見える窓際の席に座り、適当に飲み物を注文した2人は互いに携帯端末を取り出し、端末からいくつかの情報を選択すると(ステータス画面のような)画面を目の前に表示させた。なお、この世界の普及しているこの空中に表示される画面は通称、PSと呼ばれ、科学と魔法の技術がコラボしたものである。
「ふ~ん?じゃあ、向こうに行って早々神様倒しちゃったんだ?」
「そう!何時もの事だけど、あいつってそういう運命の星の元に生まれたんじゃないかって思うわよね?」
「まあ、あの馬鹿程じゃないんだろうけど……」
「……そうね。一緒にするのは―――――人間として酷よね。」
リサのPSに表示されていたのは、彼女の幼馴染が異世界で神と戦い倒したという内容の情報であった。これはギルドが有料で販売している情報で、彼女は今朝起きてすぐに自宅からこの情報を購入していた。
最も、金を出せれば誰もが情報を得られると言う訳ではなく、冒険者としてのランクなどによって購入できる情報には制限がある。だが、リサのランクは中級クラスの上位であったのでこの情報は難なく購入する事が出来ていた。
一方、ミレーナのPSには彼女自身が集めた情報が表示されていた。
「―――で、こっちは今のところ収穫はこれだけよ。期待に応えられなくてゴメンね。」
「謝ることないわよ。頼んでまだ1日も経ってないのに、むしろ収穫があるだけでも十分凄いって!」
申し訳なさそうなミレーナ。リサは彼女を元気づけ、相変わらず優秀な彼女の情報収集能力を称賛していった。
そこへ、カフェの店員が注文されたドリンクを運んできた。2人はこの国ではメジャーなフルーツジュースを飲み、気を取り直して話を進めた。
「これに書いてある通り、『奴ら』の一部―――主に魔術師とゲス科学者の集団がここ20年ほど地球の方で如何わしい事をしていたのは間違いないわ。きっと、他の世界でやったみたいな正気とは思えない実験よ!」
「……『奴ら』が真っ当な実験をした試なんてほとんどないしね?これを見る限り、主犯はやっぱり『幻魔師』か『シャルロネーア』のどちらかってとこかな?」
「または両方――――確証がなくてもそう思っちゃうのに、今回は確証に近い物があるんだからほぼ確実ね。」
『奴ら』―――――――彼女達がそう呼ぶ組織は全部で10の部署に分けられている。それぞれの部署は数字で呼称され、与えられた数字がその部署の|総合的な(戦闘力)を示している。彼女達の話に出てきた魔術師は8、ゲス科学者は4の部署にそれぞれ属し、それぞれのリーダーが『幻魔師』と『シャルロネーア』の2名なのである。この2人は『奴ら』の中でも特に悪名高く、種族を問わずあらゆる生物を自分の手駒や実験生物にしている。この2人の何れかが活動した場所では必ずと言っていいほど悲劇や絶望が生まれ、最後は大国1つが滅びる事態になったことも少なくないのである。
「そうなると、勇吾と黒だけじゃ危険ね―――――。」
「うん……。勇吾なんか特に……」
リサは幼馴染の過去を思い出す。彼は友人であっても自分の過去―――闇の部分を語る事は滅多にない。彼は自分ですべてを抱え込んでしまう事がある。黒王と出会ってからはかなり改善されたが、それでも不安な点は消えない。
「・・・・・・・『幻魔師』は人の心を巧みに利用する。もし接触したら勇吾には――――――。」
「危険すぎるわね・・・・・・」
幼馴染のリサほどではないが、ミレーナも勇吾とは付き合いが長い。だからこそ、彼の持つ危うさは十分に理解している。
2人はしばらく沈黙し続ける。
そして数分が経ち、リサはあることを決意する。
「行くわ!!
「え!?」
「そうよ!考えてみれば遠くからしょんぼりとしてるなんて私らしくないじゃない!?私も向こうに行ってアイツを扱い―――じゃなくて、しっかり守ってやろうじゃない!!」
「……リサ、何だか危ないことを言おうとしなかった?」
「そう~~~~~?」
ミレーナはリサを訝しむが、彼女は適当に流した。
そうと決まれば善は急げと、出していたPSを閉じると、通信用のPSと入力用のキーボード型のPSを表示させ、必要な手続きをし始めていく。
するとそこへ、別の人物が割り込んでいる。
「イタイタイタ――――!!」
「――――トレンツ!?」
そこに現れたのはリサの幼馴染の1人、黒河トレンツだった。
何だかテンションの高いトレンツはドタバタと2人のいる席に走ってきた。
「なあなあ、これ見たか?」
「――――は?何よも……え!?」
トレンツは碧い目を輝かせながら1枚の紙を2人に見せる。それはギルドの1階で募集している依頼が書かれた紙だった。
内容はと言うと、
【依頼名】『異世界へのギルド新設による第1次冒険者募集』
【依頼主】冒険者ギルド 凱龍王国本部
【募集期間】発行日~4105年7月25日
【募集人数】20人(変更あり)
【ランク】Cランク以上
【内容】この度、異世界[A-2055](通称・地球)に冒険者ギルドの支部を試験的に新設する事が決定しました。それにより、凱龍王国内の冒険者の中から新設される支部に移籍してくださる方を募集します。なお、任務達成条件としましては、新設ギルドに現地時間で180日以上所属することを目安にしております。達成後、別の支部への移籍は可能です。ご希望があれば住居などはこちらで用意させてもらいます。ただし、異世界での活動に関しましては他の依頼同様、例外を除いて異世界法及びギルド基本法に則ったものとします。
*なお、新設される異世界ではEx級犯罪組織『創世の蛇』の活動が確認されてます。実力に自信のない方にはおすすめできません。
*希望の方は各支部の受付に直接申し込むようお願いいたします。
「「…………」」
「ここって勇吾が行っている世界だろ?何か面白そうだからみんなで行かねえ?」
リサとミレーナはジッと依頼の内容を見つめる。
「さっき募集開始ししたばかりだから今なら間に合うぜ!」
「他にも誰か誘ったの?」
リサが問いかけると、トレンツはニッと笑みを返した。
「ヨッシーにはさっき知らせておいた!」
「って、良則に!?」
「……それって嫌がらせ?」
ここで出た良則と言うのはリサやトレンツと同じく勇吾の幼馴染である。誤解の無いように言っておくと、しばしば出てくる『とある馬鹿』ではない。
「嫌がらせって何だよ?俺は面白そうだから教えただけだぜ?」
「勇吾にとってはいい迷惑よね……」
「嫌いってわけじゃないんだけどね……」
2人の少女は複雑そうな表情をしている。
と、ここで2人はある事に気が付きトレンツに訊いてみた。
「――――あ!もしかして、『あの馬鹿』も誘ってないでしょうね!?」
「『あの馬鹿』なんか誘ったら地球は終わりよ!!」
「い~や、誘おうと思ってヨッシーに訊いてみたら城の特別室で軟禁中だってよ。しばらくは外との連絡も禁止らしいぜ?」
「「ホッ――――」」
まるで天災が去ったかのような安心感に包まれた2人。それをトレンツは、どういう意味か知りながら見ていた。
「で?お前らはどうすんだ?」
「当然行くわ!っていうより、たった今向こう行く手続きをしよとしてたところよ!好都合ね♪」
「よっし!ミレーナはどうなんだ?」
「この調子だと行くしかないみたいね。(『あの馬鹿』の近くにいたくないし)私も行くわ。」
「なら、あとはヨッシーだな!」
そう言うと、トレンツは通信用PSを開いてもう1人の幼馴染に連絡を取り始めた。
こうして、勇吾の幼馴染+αは彼を追いかけて―――一部はノリで――――彼のいる世界へと旅立つことを決定したのである。
ちなみに、勇吾も彼らが受けた依頼の存在はネット越しに知ることになるが、彼らがこっそりの受けている事を知ることはなかったのであった。
ヒロイン2号登場!
ミレーナは勇吾達より1つ年上です。
『馬鹿』とヨッシーもいずれ登場します。




