表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒龍の契約者―Contractor Of BlackDragon―  作者: 爪牙
第9-1章 凱龍王国編Ⅰ―1日目―
108/477

第96話 冒険者ギルド~説明~

・『ボーナス屋、勇者になる』も連載開始しました。スピンオフ作品になります。

 冒険者ギルドの各支部の構造は設置されている国家に関係なく基本的に同じである。


 1階、と言うより入口のあるフロアはロビーとなっており、冒険者の登録や依頼の受諾、依頼人の申請など各種手続きを行う場所である。医務室なども、同じ階にある。


 ロビーの上、ここでは2階にあたる場所は飲食フロアとなっており、昼間はカフェだが、夜になると支部によっては居酒屋やバーになる所もある。ここは冒険者に関係なく一般の利用者も多く、各種宴会などに利用される事も多い。


 更に上、3階は職員や冒険者などが利用する仮眠室や臨時の宿泊施設などがある。ギルドは基本的に24時間営業なので、主に仕事帰りが遅くなった冒険者や深夜勤務の職員が利用している。


 さて、慎哉達(+店長)が受付嬢のティナに案内されて来たのはギルドの2階にあるカフェである。5人が座ったのは窓辺にある6人用の席で、ティナは「初回登録者にはサービスしています。」と言ってソフトドリンクを注文してくれた。


「では、ギルドの利用に関しまして説明させていただきます。気になる点がありましたら、その都度訊いてくださって構いません。よろしいでしょうか?」


「ハイ!」


「ああ。」


「分かりました。」


 慎哉、晴翔、琥太郎の順番で返事をするとティナは営業スマイル(?)で説明を開始した。


 目の前に幾つものPSが展開され、そこには【冒険者 初心者講座】と表示されている。


「まず、ギルドのランクについてですが、お返ししたカードを見れば分かりますが、現在の皆さんのランクは“G”となっています。これは登録したばかりの冒険者全員が最初になる最下位のランクとなります。ここから順に“F”、“E”、“D”、“C”、“B”、“A”、“S”、“SS”、“SSS”と言う順番に上がっていき、“SSS”ランクの中でも上位に位置する冒険者には“Ex”というギルド最強のランクが授けられます。なお、Dランク以上ではさらに細かく“D+”や“D++”と言う表記が使われますが、これはあくまで便宜上のものなので、どちらも同じランクとして扱われます。」


「ランクは依頼を達成すれば上がるんですか?」


 琥太郎の質問に、ティナは「それも方法の1つです。」と答えた。


「ランクを上げる方法は大きく分けて3つです。1つは琥太郎さんが言ったように、『一定数の依頼を達成する。』です。今の皆さんのランクで説明しますと、同じGランクの依頼を2回、またはFランクの依頼を1回クリアすればFランクに昇格します。」


「それだけでいいんだ?」


「はい、Gランクはあくまで見習いのランクで、冒険者の仕事に慣れていただくためのランクなんです。言い換えれば、Fランクからが本当の冒険者としての活動開始となるのです。あ、言い忘れましたが、受けられる依頼は自分と同じランク以外には、ランクが1つ違うランクの依頼しか受けられません。ただし、パーティで受ける場合などの例外もあります。ここまではよろしいでしょうか?」


「大丈夫です!」


 そこにドリンクが届き、ティナは少しだけ飲むと説明を続けていく。


 なお、昇格に必要な依頼達成数はランクによって異なるらしい。それに関する説明はその都度話してくれるそうだ。


「2つ目の方法は『上位ランクの冒険者、またはそれ相応の人物からの推薦を受ける。』になります。これは既に相応の実力のある人物などが新規登録した場合、早い時期に高ランクの依頼を受けて貰う等が主な理由でできたものです。詳しく言いますと、Aランク以上の冒険者、または王族や軍関係者など、一定以上の実力や知名度のある人物からの直接の紹介や推薦状があればすぐにランクを上げられる仕組みになっています。ただし、この方法での昇格の上限はBまでとなっています。」


「何で“B”までなんだ?」

「Aランク以上は『上位ランク』とも呼ばれ、場合によっては国家の存亡に係わるような重要な依頼を受ける場合もあるんです。そのため、上位ランクへの昇格はBランク以下に比べると難易度を上げるのと同時に、ギルド側も慎重に見極めているのです。ですので、推薦のみでの昇格はできないのです。」


「あ~、ギルドの信用にも係わるってことか!」


「そう言うことです。最後に3つ目ですが、これは簡単に言えば『試験』を受けて合格する事です。」


「ゲッ!ペーパーテストとかやるのか!?」


「・・・慎哉、勉強好きじゃないからね。」


「いえ、確かに最近の情勢に対する質問程度の筆記試験もありますが、基本的には実技を重視します。」


「ふう~~~~。」


 慎哉は本当に安堵した息を漏らした。


 その後、ティナは『昇格試験』に関しては「ギルド側が出す依頼」を受けていただく形だと簡単に説明してランクに関する説明を終えた。


「次に“依頼”について説明します。依頼はロビーの掲示板で募集されている中から選ぶ“自由依頼”と、依頼人から直接指名されて受ける“指名依頼”に分けられます。なお、どちらも達成失敗した場合は降格や罰金などのペナルティが課せられます。」


「それって、性質の悪い依頼人から無理難題押し付けられたら終わりじゃね?」


「その点に関しては大丈夫です。昔、某国の変態王(・・・・・・)が変な依頼をバラ撒いた事例があったので、今ではギルド側で検討してから依頼を受諾する仕組みになっています。」


「――――――――変態王?」


「・・・・・・・・・。」


 ティナは視線を逸らして誤魔化した。


 なお、その『某国の変態王』とは、「とある馬鹿」の祖父の事を指すとだけ説明しておく。


「―――――続けますね。依頼の内容に関しましては、主に〈採取〉、〈運搬〉、〈討伐〉、〈護衛〉など様々な種類があります。詳しい説明はこちらのPSをご覧ください。」


 何枚かのPSを指差すと、それぞれのPSに依頼についての説明が表示された。


〈採取依頼〉

 ・山や森に自生する薬草や山菜、その他の植物などを採取する依頼。

 ・鉱山や海岸、川岸などにある鉱石や宝石などを採取する依頼。

 ・野生動物や魔獣などの各種部位を採取する依頼。


〈運搬依頼〉

 ・依頼人からの荷物を配達先に運ぶ依頼。

 ・主に民間の運送組織が配達しない地域への配達が多い。

 ・当日配送を希望する緊急の依頼も多い。


〈討伐依頼〉

 ・害虫や害獣などを討伐する依頼。

 ・指名手配されている犯罪者などを捕縛、始末する依頼。

 ・戦闘力が重要視される依頼が多いため、下位ランクの冒険者は受けられない場合が多い。


〈護衛依頼〉

 ・非公式に動く要人や、有力者の身内などの身辺を護る依頼。

 ・失敗が許されない依頼である為、Dランク以上でないと受けられない。


〈指導依頼〉

 ・教育機関などで臨時講師をする依頼。

 ・家庭教師など、個人に学問や武術を教える依頼。

 ・ベビーシッターなどもこれに含まれ、下位ランクからも受ける事ができる。

 ・依頼人からの評価が高い場合、ギルド側から関係する資格を与えられる場合もある。


〈調査依頼〉

 ・遺跡や未開発地域などで情報を集める依頼。

 ・浮気調査や身辺調査など、対象者に関する調査を行う依頼。

 ・戦闘力よりも頭脳を優先する依頼が多く、同ランクでも受けられない場合もある。


〈雑用依頼〉

 ・掃除や留守番など、誰にでもできる簡単な依頼。

 ・基本的には下位ランクに入るが、最近は依頼数が少ない。


「――――――――大体は分かりましたか?」


「まあ、大体は・・・・・。」


「〈採取依頼〉って、普通に店で売ってない物とかあるのか?こんなに発展しているなら無いと思うんだけど?」


「御尤もな質問ですね。確かに、最近では〈採取依頼〉の数はメッキリ数を減らしてますが、それでも一部の天然素材や高級食材などは乱獲防止などの法律によって店頭販売用の為の組織だった採取には制限がありますので、個人で食べたり使用したい場合はギルドに依頼するケースがほとんどなんです。」


「けど、それって冒険者が乱獲する場合とかあるんじゃないのか?」


「その点に関してもいろいろ細かい制限などがありますので、最近は特にそう言った問題はありません。それに、希少な素材や食材に関しては“とある方法”で確認してますので、隠れて乱獲する事も不可能なのでご安心ください。」


 「“とある方法”?」と慎哉が質問すると、「極秘事項です。」としか回答しなかった。


 その後、依頼の受け方に関する簡潔な説明や、ギルドの各施設の利用法などを聞いて説明会は終わった。


「―――――説明は以上ですが、皆さんはこれからすぐに依頼を受けますか?早ければ今日の夕方までにはFランクに昇格する事も可能ですよ?」


「マジで!?すぐ受けま~す!!」


 ティナの言葉に、慎哉は迷う事無く手を上げて答えた。


「おい、依頼の内容も見てないのにすぐ決めるなよ?」


「そうだよ、それに僕達はこの国の地理とかに詳しくないから、郵便配達でも苦労すると思うよ?」


 興奮する慎哉を、琥太郎と晴翔は冷静に諌める。


 すると、今まで黙っていた店長が「出番だな。」と言って3人の会話に入ってきた。


「だったら、俺が街の案内も兼ねて依頼の手伝いをしてやるぜ!ティナ、今日は俺がこいつらの後見人として仕事

を見てやるから、そう手続しておいてくれ!」


「分かりました。填刃さんはSランクですので問題ありません。」


「ええ、オッチャン、Sランクの冒険者だったのか!?」


「ハッハッハ!まあ、今は店の方が本業で滅多に依頼は受けないけどな!」


 店長は大笑いしながら自慢した。


 ティナは「では、私は受付に戻っています。」と言って1階へ下りていった。


「それじゃあ、取り敢えずは午前中に達成できる依頼を探しに行くぞ!付いて来い、お前ら!!」


「あ、はい!!」


「おい、急ぐなよオッサン!!」


「ヨッシャ~~~~!!」


 笑い声をあげて下りていく店長の後を追い、3人はロビーに設置されてある掲示板の前に行く。


 掲示板はタッチパネル式の電子掲示板になっており、画面に表示された依頼を選択すると掲示板の前に設置されたプリンターから依頼書が出る仕組みになっている。


 なお、簡易型PSTを利用している慎哉達はまだ使えないが、冒険者用にカスタマイズされたPSTに直接依頼情報をダウンロードする方法もある。


「お前らの力量から考えると、こんな所だな。」


 店長はいくつかの依頼を選択して表示させた。



【依頼名】『新鮮な魚求む!』

【依頼主】料理研究家 清水(しみず)浜生(はまお)

【募集期間】四龍祭前日まで

【募集人数】何名でも可

【ランク】G

【内容】竜江沿岸で釣れる魚介類を種類を問わず5匹以上釣って届けてほしい。特に店頭では販売していない魚を希望しており、その場合は追加報酬もある。

*釣り道具一式はギルドで無料レンタルしています。

*届け先の地図は依頼受諾時に受付でお渡しします。


【依頼名】『装飾用の翡翠(魔力あり)の採取』

【依頼主】アクセサリー工房『シーリング』(代表:四十川(しとがわ)フィリップ)

【募集期間】本日中

【募集人数】5名まで

【ランク】F

【内容】四龍祭で出品する装飾品の材料が不足しています。竜江沿岸の砂浜で採取できる天然の『碧海翡翠(へきかいひすい)』を5個以上採取してください。ただし、自然魔力のある物に限ります。

*採取した数に応じて報酬を上乗せします。

*『碧海翡翠』は竜江近海の自然魔力を吸収した翡翠です。外見は他の翡翠と見分けが付き難いため、必ず《鑑定》か《探知魔法》で確認を取って採取してください。


【依頼名】『新作お菓子の試食』

【依頼主】スイーツハウス『麦の森』(代表:春城(はるしろ)蹄斗(ていと)

【募集期間】本日中

【募集人数】若干名

【ランク】G

【内容】四龍祭用の新作菓子の試食をしてくれる人を募集しています。甘い物が好きな方大歓迎です。


【依頼名】『迷子の捜索』

【依頼主】蒼穹(そうきゅう)玲人(レイジ)

【募集期間】本日正午まで

【募集人数】1名またはパーティ1組

【ランク】F

【内容】やんちゃな息子が近所の友達と一緒にどこかに遊びに行ってしまいました。午後から外出する予定があるので正午まで見つけて家まで連れてきてください。なお、息子は魔法を覚えたため捕まえようとすれば反攻するかもしれませんので注意してください。

*蒼穹家の住所などの情報は受諾後、受付でお教えします。

*子供には可能な限り攻撃魔法は使用せず、怪我も最小限で済ませるようお願いします。



 店長が選んだ4つの依頼を3人は順に見ていく。


 依頼のランクについて訊くと、翡翠の採取は発見難易度などを、迷子の捜索は時間制限がある事と子供が魔法を使ってくることを考慮した上での判断だそうだ。


「取り敢えず、この中からお前らで選びな!」


「Gランクって、思ったより少ないんだな?」


「ああ、Gランクの依頼ってのはみんな雑用か簡単な採取だけだからな。この国の連中なら、基本的には自分達か近所の連中に直接頼むから数が少ないのさ。」


「ああ、だから1ランク上の依頼も受けられるようになってるのか!」


 慎哉は感心しながら依頼を選んでいく。


 どれも数時間で達成可能なだけあって、一見すれば簡単そうに思える、


 しかし、魚や翡翠の採取は運の要素も絡んでくるので午前中に終わらない可能性もある。迷子の捜索も、地元の土地勘が無ければ困難になることが予想でき、最後に残った試食の依頼が一番無難に見える。


「う~ん、俺としてはFランクのどっちかにしたいんだけどな~~?」


 悩んでいると、琥太郎が依頼の中のひとつを指差した。


「だったら、この『迷子の捜索』を受けない?これなら一緒にできるし、店長さんに街の案内をして貰いながら子供を捜せるんじゃないかな?」


「お?なかなか良いとこに目をつけたな?さっきも言ったが、今は俺がお前らの後見人だ。新人のうちは先輩を頼って経験を身に付けるのも手だぞ。」


「なら、俺もこれにするぜ!晴翔はどうするんだ?」


「俺もそれで構わないぜ?釣りは経験ないし、翡翠探しだと集める総数が多くなるからな。だったら、パーティで受けられるコレが妥当じゃないのか?」


「なら決まりだな!」


 慎哉は『迷子の捜索』の依頼を選択して印刷し、それを受付に持っていった。


 受付にはティナが戻っており、依頼書と3人のカードを受け取って手続きを済ませていく。


 ちなみに、パーティのリーダーはジャンケンで決めた。


「ハイ、これで依頼の受諾を完了しました。期限は正午までなので、時間に注意してくださいね?」


「ハイ、分かりました。」


「よし!迷子探しに出発だ~~~!」


 テンションの上がってきた慎哉を先頭に4人はギルドを出ていく。


 かくして、新人冒険者3人の初仕事が始まった。






・次回は慎哉達の初依頼です。

・「某国の変態王」については・・・・察してください。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ