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黒龍の契約者―Contractor Of BlackDragon―  作者: 爪牙
第9-1章 凱龍王国編Ⅰ―1日目―
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第94話 凱龍王国

・凱龍王国に関する説明会です。


 その後、問題なく手続きの終えた一同は竜則が用意した(王族専用の)大型バスに乗って竜江市内へ向かっていった。


「スッゲ~~~!ロイヤルだぜ!ロイヤル~~~♪」


「慎哉、とにかくお前は落ち着け!」


 まるでバスの中である事を忘れさせるかのような快適空間に、慎哉達はすっかり寛いでいた。


 数名、コッソリシャンパンのボトルを何本か開けて飲んでいる者もいたが、この国の法律では問題のないノンアルコールか低度数の物なので誰も怒らなかった。


「何か、ベネチアみたいだな?」


 至る所に川や水路が広がる光景に、晴翔はヨーロッパのとある都市を連想していた。


「元々、ここは水運で栄えた都市だからな。今も昔の名残で至る所に水路が通っているんだ。」


 勇吾は全員に見える位置にPSを展開し、首都の簡単な地図を見せた。



挿絵(By みてみん)



「大雑把だが、これが首都中心部(・・・・・)の地図になる。このバスが走っているのはココ、「港湾区」の北部で俺達が向かっているのは「商業・観光区」の中にあるホテル街だ。まずはここでチェックインして荷物とかを置いていく。」


「縮尺がよく分からねえんだけど?」


「海岸線は約25kmと言ったところだな。面積で言えば、日本の地方都市位のサイズになる。ただし、この地図はあくまで中心部で竜江そのものはもっと広い。」


「日本で例えるなら、東京都の中の1区だけを載せた地図ってところね。」


「なるほど。」


 勇吾とリサは互いに捕捉し合いながら説明していく。


 ちなみに、縮尺に対して凱王城が大きく見えるが、この地図での凱王城とは“城本体”だけを指しているのではなく、行政区の中の更に中枢部をまとめた部分を指している。


「そう言えば、高層ビルとか少ないんですね?」


 質問したのは亮介だった。


 バスの窓から外を見ると、日本と違って100mを超すビルはほとんどと言うか、全くと言っていいほど見当たらない。


 この質問に答えたのは良則だった。


「それはこの国の一番の特徴でもあるんだよ。知ってると思うけど、この国には龍族だけでなく、数多くの野生の竜種が生息してるんだ。その多くが空を飛行して移動しているから、下手に高いビルなんか建てたりしたら障害物になってしまって、場合によっては攻撃されてしまうんだよ。」


「うわっ!怪獣映画みたいだな!!」


「うん、だからこの国の法律でも建造物高さは煙突などんお一部の例外(・・・・・)を除いて――地方によって異なるが――最大で30~50m以下に制限されているんだよ。けど、今は何所も30m以下の建物ばかりで、それ以上の建物はここ100年は建てられてないんだよ。」


「あ!もしかして空間操作で・・・・!」


「そう、この世界の建築技術には魔法技術も多く採り込まれているから、外観は普通の一軒家位でも、中に入れば東京ドーム位の広さがあったりするんだ。」


「それで、日本の都市みたいに密集してないんですね?」


 亮介はもう一度窓の外を眺める。


 今はまだ港湾区だが、貨物などが運ばれる倉庫街などは別にして、それ以外は東京の様に建物が密集してはいなかった。


「そのお蔭もあるんだけど、行政区やビジネス区にも普通に森林公園があちこちに点在していて空気自体もきれいなんだよ。」


「ま、ガソリン車自体、今じゃ使われてないからな!このバスだって、化石燃料を一切使っていないエコカー何だぜ?」


「何か俺、SFみたいな街を想像してたぜ?」


「確かにな。」


 慎哉の言葉に晴翔も同意した。


 彼らは知らないが、ここから離れた所にある空港や軍用地区にはまさにSFのような光景が広がっている。


 特に軍用地区にはガン〇ムやナ〇トメアを連想するような様々な搭乗兵器が並んでいるんだが、今回の旅行で彼らが目にする事はない。


「兄ちゃん!空に電車が走ってるよ!」


「ああ、エアトレインだな。電車と言うよりモノレールに近いかもしれないが、まだ残っていたんだな?」


 蒼空と龍星の声に反応し、慎哉達は急いで蒼空の方を見上げる。


 そこには、まさにレールもないのに空中を何台もの電車が走っていた。


「おお!何だかスゲエ!!」


「あれは《重力魔法》を応用して走っているエアトレインだ。転移装置が普及している今では観光用に利用される事が多いな。後は通学用だな。」


「何か懐かしいよな?低学年の時はあれでよく学校に行ってたっけ?」


 トレンツはつい数年前の事を懐かしそうに思い出していた。


 すると、好奇心を刺激された慎哉は次々に質問をしていった。


「なあなあ、他にどんな乗り物があるんだ!?」


「―――――海を走る海上列車と本島を高速で移動するリニアなどがあるな。ああ、日本にもある路面電車もあるぞ?」


「祭とかイベントはあるのか!?」


「そうだな、今の時期だと・・・・・・」


「3日後に2年に1度の“四龍祭”が夏祭りを兼ねて四日間の日程で行われる。全国規模の祭だから楽しんで行けばいいぞ?」


 竜則の言葉に勇吾達もハッとなる。


「ああ、そう言えば今年だったか!」


「イッケネエ!スッカリ忘れてたぜ!!」


「最近は事件ばっかりだったから、仕方ないわよ。」


「なあなあ、その”しりゅうさい”って、どんな祭なんだ?」


 それは慎哉だけでなく、日本組ほぼ全員の質問だった。


 蒼空だけは知っているようだが。


 当然の疑問に、辰則が代表して答えていく。


「四龍祭は凱龍王国の黎明期から続く歴史ある祭だ。その由来は、この国の始祖である《凱龍王》の眷属だった四人の龍王が2年毎にこの国に集まって盛大な宴をしたのが始まりとされている。今では2年に1度、王国総出で盛大な祭を行うと言う訳だ。ちなみに、この国での建国祭は“凱龍祭”と呼ばれている。」


「まんまだな。」


「――――――滞在期間は1週間ほどだったな?なら、十分に祭を満喫できるはずだ。まあ、あのバカはそれを見越して計画を練ったんだろうがな。」


「「「・・・・・・・・・・・・・・。」」」



      チュド――――――――――ン!!!



 直後、行政区の方角で何かが爆発する音が響いた。


「―――――あ!花火だ!!」


「違うぞ龍星、あれはバカが―――――――――」


 そんなこんなでバスは走っていき、竜則がポケットマネーで用意したホテルに到着した。



----------------


「・・・・・ホテルと言うより、家じゃね?」


 用意された部屋を見て、最初に出た感想はそれだった。


 慎哉達がいるのは3人用の4人用の部屋だが、そこはホテルと言うよりは超高級マンションの一室だった。


「・・・・ねえ、この部屋って日本円で幾らくらいなのかな?」


「俺に訊くなよ・・・・・・。」


 琥太郎と晴翔も同じように唖然としていた。


 おそらく、他のみんなも同じように驚いているだろう。


 ちなみに、勇吾達は実家に帰るのでホテルの前で一旦別れている。


 良則だけは、この後の案内役もあるので1階のロビーに竜則と共に待っていてくれている。


「こういう部屋って、テレビの特番とかであったよな?」


「ああ、確か一泊数百万とかのヤツだよな?」


「いいのかな、僕達だけでこんな凄い部屋に泊っちゃって?」


「・・・・いいんじゃね?」


 慎哉は適当に荷物を置くと、ベランダに出て街の様子を見下ろした。


 竜則から聞いた通り、街は3日後に控えた四龍祭の準備で賑わっており、至る所に電飾などの飾りが広がっていた。


 空気を吸えば日本にいた時には感じられないような爽快感に満たされ、気のせいか力が湧いてくるような気もした。


「なあ、お前らはこの後どうするんだ?」


「ん?俺は特に予定はないぜ?」


 ベットに横になった晴翔は部屋に置いてあったガイドブックをペラペラと捲りながら答えた。


「僕も、午前中は特にないかな。午後にはちょっと行ってみたい所に行く予定だけど。」


「そっか!じゃあ、これから一緒に港湾区の方に行ってみないか?」


「何しに行くんだ?」


 晴翔の問いに、慎哉は目を光らせポケットから一枚のチラシを取り出して答えた。



「――――――冒険者ギルドだよ♪」



 チラシには、『冒険者ギルド 新規登録者募集中』と書かれていた。





-------------------


凱龍王国 漁業都市『海門(かいもん)


 慎哉達がホテルで寛いでいる頃、勇吾達は竜江から南に60kmの位置にある漁業が盛んな都市『海門』に来ていた。


 主に首都圏などに出荷する魚介類や加工品の製造を主産業にしている町だが、住民の半分は首都や近隣の街で行政や金融、情報関係の職に就いている家庭が多い。


 それでも労働人口の4割以上は漁業関係の仕事に携わっており、街の至る所にはそれを象徴するような水龍や海神をモチーフにしたオブジェが飾られている。


「う~~~ん!数週間ぶりの海の香りは良いわね~~~~♪」


「だな!やっぱ、故郷の風は肌によく合うぜ!」


「・・・まあな。」


 海岸から内陸に5kmほど進んだ場所にある住宅街、勇吾達は生まれ育った街を歩いていた。


 なお、ミレーナは竜江出身なのでここにはおらず、黒王は別用があると言って別れている。


「そんじゃ、俺はこの辺で!また後でな~!」


「時間に遅れないでよ?」


 交差点の一角でトレンツと別れ、勇吾とリサは横に並びながら自宅へと向かった。


 途中、馴染みの商店の店主などから「お帰り!」と言われ、勇吾も笑顔で挨拶していった。


 そして数分後、似たデザインの家が隣り合った場所に到着すると。手前の方の家の前でリサは足を止めた。


「じゃあ、11時前に集合よ~?」


「ああ、いつもの場所でな!」


 適当に手を振って返し、勇吾はリサの家の隣にある我が家へと向かった。


 玄関のドアノブを握ると、ドアノブに内蔵されていたセキュリティが指紋や脈などを確認し、勇吾本人と確認するとロックが解除された。


「――――――――ただいま。」



             ドタドタドタ・・・!!



 勇吾が家の中に入ると、元気のいい足音が目の前の階段から聞こえてきた。


「お帰り、お兄ちゃん!!」


 5歳くらいの男の子は元気のいい声をあげながら勇吾に飛びついて来た。


「――――――――ああ、ただいま、ロト。」


 勇吾は小さな頭を撫でながら、優しい声で返事を返した。


 彼は自分が家に帰ってきたのだと、ようやく実感したのだった。







・ロトくん登場!度々会話の中にだけ登場していましたが覚えていたでしょうか?彼については物語が進むにつれて明らかになっていきます。


・感想&評価お待ちしております。


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