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7.骨とか本とか、スペルとか その2

前回の続きからです。それではどうぞ。

 ヘイジはパチュリーの前に一歩進み出ると、カードを一枚取り出した。


「骨斧“白骨手投斧”・・・こんな感じですかな?」


 そしてちょっと不安げにスペルを宣言すると、彼の両手に一つずつ、骨で出来た小型の斧が握られた。


「へえ~、それで私に勝つつもりかなっ!?」


 そこへフランドールが燃えさかる大剣を振り下ろしてくる。


「ぬうんっ!!」


ヘイジは二本の斧を交差させて、彼女のレーヴァテインを受け止めた。ゴォン、という音と共に火の粉が周囲に飛び散る。


「きゃっ! 消火、消火!!」


 その後ろではパチュリーが、水の術を使って火の粉を消していた。彼女のおかげで火事の心配はなさそうである。


「丈夫なんだねえ~・・・ヘイジの武器は」


 鍔迫り合いながら、フランドールがそう口にする。


「骨というものは燃えにくく、丈夫なのですよ・・・!」


 彼はそれに応じると、力を込めてレーヴァテインを押し返した。


「わっ!?」


 フランドールがひるみ、勢い余って背中を壁にぶつけた。そこを狙って、ヘイジは二本の斧を投げつける。

 彼の投げた斧は回転しながら弧を描いて飛び、フランドールの首筋ギリギリのところで背後の壁に刺さった。


「あわわ・・・・」


 二つの刃が、今にも首に届きそうな場所で止まっている。彼女は両手を上に上げたまま、動けなくなってしまった。


「フラン嬢、武器をお収め下さい。次は・・・当てますよ」


 そう言うヘイジの両手には、もう一組の斧が握られている。フランドールは無言で頷くと、レーヴァテインをスペルカードに戻した。

 それを見届けてからヘイジも、自分の武器をカードに還元する。壁に刺さった斧と、彼の手中にあった斧が消えて、一枚のカードに戻った。


「お騒がせを致しました、パチュリー殿。壊れた壁は後ほど自分が修復致しますので」


 パチュリーの方を向いて頭を下げるヘイジに、彼女は首を横に振って言った。


「いや、この程度の被害で済んだのだから、むしろ感謝したいくらいよ」

「ヘイジ~! 帰るよ!!」


 フランドールの不機嫌そうな声がする。いつの間にか彼女は、図書館の入口の方にいた。


「すみません、今行きます! ・・・では、これにて失礼」


 パチュリーに一礼して、ヘイジはフランドールのもとへと走っていった。


「フラン、いい従者を持ったわね・・・」


 その後ろ姿を見送って、パチュリーは少し微笑んでつぶやいた。










「さっきは油断しただけなんだからね! 本気を出せばヘイジになんて負けないもん!!」

「しょ、承知しております・・・」


 フランドールの部屋へ戻る途中、廊下を歩いている間、彼女はずっとそんな会話をヘイジと繰り広げていた。

 よほど悔しかったのか、同じ事ばかり言ってくる。ある意味、酔っぱらいよりタチが悪かった。

 そんな話にも、ヘイジは小言一つ漏らさずに応じている。


「絶対に、ぜーったいに、負けないんだからねっ!!」

「存じております、間違いありますまい」


 無駄にそんな会話を続けている内に、部屋の前に到着していた。

 フランドールが扉を開けて、先に中へ入る。後に続いてヘイジも部屋に入ると、扉を閉めた。


「ヘイジ~・・・? 続きを、やるよっ!!」


 その時、突然にフランドールはカードを取り出した。


「なっ!? 不意打ちとは」


 彼女に背中を向けて扉を閉めていたヘイジは、反応が少し遅れた。


「禁忌“クランベリートラップ”!!」


 フランドールのスペル宣言と同時に複数の魔法陣が出現し、それらが大玉の弾幕をヘイジに向けて放ってきた。


「ぬっ・・・! 指弾“骨指爆裂弾”!!」


 不意を打たれたものの、応じるように彼もスペルの宣言をする。するとヘイジの指の骨がまるでミサイルのように飛び、空中で爆発を起こした。

 その爆風がフランドールの弾幕を打ち消す。


「まだまだ~♪」


 しかし彼女は、余裕の表情で笑った。そして魔法陣から、更に多くの弾幕を撃ち出してくる。

 今の攻撃はあまり意味がなかったようだ。


「元を絶たねばなりませぬか・・・ならば」


 ヘイジは違うカードを取り出した。

 ちなみに、彼の指の骨は新しいものが生えてきたので問題ない。


「骨鎌“白骨首狩鎌”!」


 その宣言と共に、骨で出来た大きな鎌が二つ、彼の両手に現れた。ヘイジは体を回転させると、


「そおりゃあっ!!」


 遠心力を利用して、勢いよく大鎌を投げた。彼の手を離れた二つの鎌は回転しながら飛んでいき、フランドールの魔法陣全てを一気に切り裂いた。


「ええっ!?」


 フランドールが驚愕の声を上げる。ヘイジは手元に戻ってきた鎌を取ると、もう一度投げの構えに入った。


「(・・・!?)」


 が、そこで彼の本能的な感覚が働いた。ヘイジは腕を別の方に動かし、武器を目の前で交差させる。


「禁弾“スターボウブレイク”!!」


 いつの間にかフランドールは、攻撃を別のスペルに切り替えていた。様々な色をした無数の弾幕が、流星のように襲いかかってくる。


 ヘイジは交差させた二本の大鎌で、その攻撃を受け止めるが、


「こ、ここまでの威力・・・とは」


 大鎌に亀裂が走る。

 そしてフランドールの攻撃はヘイジの鎌を打ち砕き、彼の体までも貫いた。防御したにも関わらずこの威力とは、直撃した時のことを考えると恐ろしい。


「ぐっ・・・」


 弾幕ごっこを続行不能になり、ヘイジは床に片膝をついた。倒れなかったのは、彼なりの根性である。


「ふっふ~ん、私の勝ちだね。ヘイジ」


 フランドールが得意げに笑って言う。その表情は本当に嬉しそうだ。


「ええ・・・自分の、完敗にございます」


 膝をついたままヘイジは答えた。彼女の機嫌が直って何よりだが、今回ばかりは、さすがの彼も身体的な限界を感じていた。

 しかし次の瞬間、彼の耳に信じられない言葉が飛び込んできた。


「じゃあ・・・もう一回やろっか!!」


 フランドールの言葉に、ヘイジは気が遠くなった。




あの骨は犠牲になったのだ、犠牲の犠牲にな・・・惜しい奴を亡くした。


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