表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/50

6.骨とか本とか、スペルとか

今回は二話構成です。

それではどうぞ。

「ねえねえヘイジ、本を読んで~」


 壁にもたれていたヘイジのもとに、フランドールが絵本を持ってやって来た。


「ええ、構いませんが・・・」

「わーい! じゃあ早く読んでよ~!!」


 歓声を上げるとフランドールは、ヘイジの膝の上に座ると絵本を広げた。


「では、失礼して・・・こほん」


 一呼吸おいて、ヘイジは朗読を始めた。


「えー・・・昔々、あるお城に、それはそれは可愛らしいお姫様がおりました・・・・」












 絵本の内容としては、よくある物語だった。お姫様が悪者にさらわれて、勇気ある若者に助け出されるお話。

 最後に二人は結ばれるのだが・・・読み終えてからヘイジは一つ気になることがあった。


「(このお姫様を助け出した人物も、女子(おなご)なんですよねえ・・・)」


 ヒロインがヒロインに助け出されるとは、何か新しいジャンルの物語なのだろうか。と言うかその前に、少女と少女が結ばれてもいいものなのだろうか。

 ヘイジの抱いた疑問は尽きなかった。


「あっ! この本、今日返さなきゃ!!」


 そんなことを考えていると、突然フランドールが驚いたような声を上げた。


「おや、返却期限ですか。どこから借りたのです?」

「パチュリーの図書館からよ。今日気づけて良かった・・・返すのが遅れると、パチュリーはうるさいからな~」

「ほほう、あの方は図書館を・・・」


 前に夕食の席で会った、紫の髪色をした少女のことだ。あの時は突然攻撃されたので、本当に驚いた。


「本を返してくるから、ヘイジはここで・・・」

「ああ、自分も同行させてもらえませんか? 改めて彼女に会っておきたいのですが」


 部屋を出ようとするフランドールを引き留めて、ヘイジは彼女に頼んだ。


「うん、いいよ。じゃあ一緒に行こうか」

「ではお言葉に甘えて」


 ヘイジは腰を上げると、フランドールと一緒に部屋を出た。









 二人並んでしばらく歩くと、大きな扉の前にたどり着いた。


「ここがパチュリーの図書館。本がい~っぱいあるんだよ」


 フランドールの言葉に、ヘイジは興味を引かれた。彼はフランドールに聞き返す。


「おお、どのような本が置いてあるのでしょう?」

「え~っと・・・とにかく、何でもあるよ!」


 誤魔化すように言ってから、彼女は図書館の扉を開ける。ギギギ、ときしむ音がして扉が開いた。

 フランドールの後に続いてヘイジも扉の向こうへ入り、彼は扉を閉めた。


「パチュリー、いる~?」

「おおっ・・・! これは、すごい」


 名前を呼びながらパチュリーを探し始めるフランドールの後ろで、ヘイジは立ち止まって周囲を見回していた。

 大きな本棚が、まるで森林のように立ち並んでいる。どこを見ても本、本、本・・・本だらけだ。ただ、そのせいか部屋全体がちょっと薄暗い。


「これだけの書物、全て読むのに何年かかることやら」


 圧倒的なまでの書物の量に、ヘイジは思わずそんなことを口にした。


「人間の寿命では、到底無理でしょうね」


 その時不意に、彼の背後で声がした。


「!?」

「あっ、パチュリーそこにいたんだ」


 フランドールと共に振り返ると、そこには紫の髪色をした少女が、本を一冊小脇に抱えて立っていた。


「本を返しに来たよ~、返す日は守ったからね!」

「偉いわ、フランはお利口さんね」


 駆け寄ってフランドールが絵本を渡すと、渡された方のパチュリーは彼女の頭を優しく撫でて、そう言った。


「それで、あなたはフランの従者の・・・ヘイジだったかしら?」


 そして彼女はヘイジの方を見やった。


「咲夜から“見所がある”って聞いているわ。結構腕も立つとか」

「いえいえ、そんなことは・・・」


 気がつかないところで、良い評価をされていたようだ。ヘイジは否定しながらも、内心嬉しかった。


「私の“じゅうしゃ”なんだから当たり前だよっ!」


 パチュリーの横でフランドールが胸を張って言う。これもまた嬉しい。


「でも、スペルカードは持っていないみたいね」


 そこで唐突に、パチュリーがそんなことを口にした。


「はい? それは如何なる物なのでしょう?」


 ヘイジが問うと、彼女は彼に近寄って白紙のカードを数枚、差し出した。


「これを受け取りなさい、色々と世話になるはずよ」

「紙の札でしょうか? ・・・って、おおっ!?」


 差し出されたカードをヘイジが受け取ると、一瞬で白紙から色が変わって緑色になり、その表面に文字が現れた。


「それがスペルカード。あなたの力を主に“弾幕”として使う為の道具よ」

「“弾幕”・・・ですか」


 不思議そうにカードを眺めてつぶやいたヘイジに、


「ねえねえヘイジ! せっかくカードをもらったんだからさ、試してみない!?」


 フランドールがはしゃいだ様子でそう言った。その瞬間、パチュリーは顔色を変えた。


「や、やめなさいフラン。ここで弾幕ごっこなんて・・・」

「ヘイジ~! いくよ~!!」


 彼女が止めるのも聞かず、フランドールは図書館の天井近くまで一気に飛翔すると、カードを一枚取り出した。

「あわわ・・・って、ヘイジ! あなた従者なんでしょ!? 頼むから彼女を止めて!!」


 パチュリーは慌てた様子でヘイジの背中を叩くと、そこでなぜか、げほげほと咳き込んだ。


「ああっ、パチュリー殿! いかがなされた」

「気にしないで・・・ただの喘息よ。それよりフランを」


 彼女の身を案じるヘイジを止めて、パチュリーはそう言った。言われたヘイジは、フランドールの方を向くと、彼女へ叫んで呼びかけた。


「フラン嬢! “弾幕ごっこ”とやらは一度、場所を移して・・・」

「え~!? きこえな~い!!」


 しかしその声は届かず、フランドールがスペルを宣言する。


「禁忌“レーヴァテイン”」


 燃えさかる真っ赤な大剣が、彼女の手に握られた。フランドールはそれを、こちら目がけて振り下ろしてくる。


「ああ・・・このままだと本まで巻き込まれ・・・・げほっ、げほっ」

「パチュリー殿! ・・・ここは自分が」


 咳き込むパチュリーの前に、ヘイジは一歩進み出した。そして一枚のカードを取り出す。




ヘイジはフランドールを止められるのか?

次回へ続きます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ