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48.少年の秘密・・・?

約一か月の間をおいて更新です。どうも最近、スランプ気味です・・・



さて、部屋に戻る途中のヘイジ。しかし一つ気になることが・・・

 フランドールの部屋に戻る途中、ヘイジはふと、あることが気にかかった。永遠亭で聞いた、永琳のとある一言である。


「(フラン嬢が魔導書を読みたいとおっしゃった時、永琳殿は『地上の種族には読めない』と言っていた。なら、それを読むことのできるオリジンは地上の種族ではない?)」


 地上の種族ではないとすると、彼は一体何者なのだろう。地の底や天の上に住む種族だろうか。そのような種族に関して、ヘイジは外の世界にいた頃に聞いたことはあったが、実際に会ったことは無かった。それにその情報もかなり曖昧なものであったため、彼としては半信半疑であったのだ。

 しかしここは幻想郷、あり得ないことなどあり得ない世界なのだ。地底や天上の種族がいても不思議ではない、のかもしれない。

 とにかく、気になることがあったのなら行くべき場所はほとんど決まっている。ヘイジはくるりと進行方向を変えた。






「あらヘイジじゃない、何だか久しぶりね」

「ええどうも、パチュリー殿。ご無沙汰しております」


 図書館に入ってきたヘイジを、ちょうど入口の扉付近にいたパチュリーが出迎えた。最後にここを訪れたのが、随分と昔のことのように感じる。

 そういえば、とヘイジは思った。小悪魔の姿が見えない。恐らくどこか本棚の陰にいるのだろう。


「あらら、ヘイジさんじゃないですか~。探し物か、調べ物ですか~?」

「え、ええ。まあそんなところですな」


 彼の予想通り、奥の方にある本棚の陰から、小悪魔が背中と頭の小さな羽をパタパタと羽ばたかせて、ヘイジのもとへ飛んできた。彼は彼女にも挨拶すると、早速要件を切り出した。


「地底や天上の種族についての文献など、ございますでしょうか」

「当たり前ですよ~、ここを誰の図書館だと」

「何であなたが得意げなのよ。・・・もちろんあるわ、でも私は手が離せないから、こあ! 案内してあげて」


 彼の質問に、なぜか小悪魔が胸を張って答える。隣でパチュリーはあきれつつも、彼女にぴしゃりと言い放って、また自分の作業に戻った。

 人使い・・・いや悪魔使いが荒いですよ~、と小悪魔は一言ぼやいてから、


「え~と、幻想郷の種族についての文献はですね・・・こっちですよ~」


 ヘイジの前に立って行き、彼を先導する。彼女の後についていくと、ある大きな本棚の前にたどり着いた。そこで小悪魔はくるりと振り返って、そばの本棚を指さす。


「この辺から~・・・この辺までが種族についての文献ですね~。じゃ、私はこれで」

「お、おお・・・しかし、これは・・・さすがに・・・」


 彼女は手を振ってその場を去ってしまう。ヘイジは彼女に示された本棚を見て愕然とした。本が多すぎるのだ。ヘイジの背丈の二倍はある本棚が、何列も並んでいる。ここから探せというのだろうか。

 背表紙に色々なタイトルがあるが、どれがどういう本なのか見当もつかない。取りあえず適当に一冊手に取ってみると、


「冗談ですよヘイジさ~ん! まさか本気にするなんて思いませんでしたよ~・・・え~と、どんな種族に関する文献でしたっけ~?」


 そこへ小悪魔が駆け足で戻って来た。何だ、冗談だったのか、ヘイジは少し安心した。さっきのが本当だったとしたら、いつまでかかるか分からない。


「地底や、天上の種族に関するものでございます」

「ああ、それなら・・・こういったものですかね~」


 彼の注文を聞いて、小悪魔がてきぱきと本を選び、ヘイジのもとに五冊ほど持ってきた。


「おお、ありがとうございます小悪魔殿」

「いえいえ~。もっと資料が欲しくなったら、呼んでくださいね~」


 手際のいいものである。ヘイジは感心してしまった。独特なしゃべり方をするので、まったりとした印象が強かったが、仕事は効率よくこなす少女のようだ。

 彼女に礼を言ってから、ヘイジは近くにあった椅子に座り、渡された本に目を通し始めた。


「ふむ。やはり地底にも天上にも、住んでいる種族はいるようですな。さすがは、幻想郷」


 読み進めていくと、地底には元々地獄界にいた妖怪や死霊、悪霊が住み着いており、天上には天人という特殊な種族が暮らしている、ということが分かった。

 また、地底の種族はひねくれ者や気性の荒い者が多く、天人は大らかではあるものの、地上を見下している所もあるようだ。ここまで読んで、ヘイジは少し考えた。


「ううむ、これだけではよく分かりませんな。直接本人に聞くべきか・・・」


 とそこで、何気なくめくったページが彼の目に入った。「月の民」とある。

 彼らは地上とは比べものにならないほどの、極めて高度な文明社会を築いており、独自の技術や文字を用いているようである。しかし、それ以外のことについては謎に包まれているらしい。


「独自の文字・・・もしや、永琳殿の魔導書がそれなのでは? だとすると、永琳殿やオリジンは月の民だということに・・・いやしかし」


 だとすれば、どうして地上にいるのだろうか。自ら高度な文明を捨てて地上に来る必要などあるまい。何か理由があるのだろうが、読み進めてもそれらしい記述はどこにもなく、結局は全く分からなかった。

 もっと資料が必要である。小悪魔を呼ぼう、と思ったところでヘイジは急にため息をついた。


「・・・はあ。思えば自分、どうしてコソコソしているのでしょうな。友人のことを密かに詮索するようなことをして・・・ああ、もうやめ!」


 バタン、と彼は本を閉じると、もとあった場所に戻した。何だか顔から火が出そうだ、ヘイジはそんな思いを抱きつつ、主の部屋に戻ろうと図書館の出口に向かう。

 扉の前までたどり着くと、そこにはまだパチュリーがいて読書をしていた。彼女は出ていこうとするヘイジの姿を認めると、おもむろに話しかけて来た。


「あ、そうそう! すっかり忘れてたわ。ヘイジ、さっきあなたの友人だと名乗る少年が来て、魔導書を何冊も借りていったのよ。名前は忘れたけど」

「は、はあ・・・」


 自分の友人で、しかも少年・・・きっとオリジンのことだろう。ヘイジはすぐに思い当った。同時に、自身の先ほどまでの行為を思い出してまた羞恥心がこみ上げてくる。

 彼のそんな気持ちには恐らく気付かずに、パチュリーは続けて言った。


「二週間後を返却日にしたけど、もし延滞とかするようなら、あなたからも何か言ってやってくれないかしら」

「ああはい、かしこまりました」

「しかしあんな、ゲテモノ魔導書ばかり・・・一体何をするつもりなのかしら」


 また魔導書の話である。彼は勤勉なものだ、とヘイジは思った。

オリジンは図書館にも来ていたようだ。またおかしな魔導書を求めているようだが、一体何に利用するのだろうか・・・今は誰にも分からない。

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