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35.「八雲」の手がかり

パチュリーから八雲紫の情報をもらったヘイジ。さあ、彼女に会いに行こう。



※紫の住んでいる場所に関して、自己解釈があります。

 図書館を後にして、ヘイジとフランドールは部屋に戻っていた。


「八雲紫、か・・・」

「へえ、こんな場所に住んでるんだね」


 パチュリーからもらった資料に、ヘイジはフランドールと一緒に目を通していた。八雲邸という屋敷に彼女は住んでいるらしい。紅魔館からそこまでの、詳細な地図も載っている。

 ただ、この“屋敷自体が神出鬼没”という問題が。普段は空間と空間の狭間にあり、見ることも触れることもできないのだが、時々姿を現すらしい。パチュリーの予想では、今日の夜中に、大体この辺りに現れるだろうとのことだった。しかし、それも確実とは言い難いそうだが。


「さて、と・・・ところで、今は何時でしたかな?」

「お昼の三時。夜までは、まだまだあるね」


 彼は部屋の時計を見上げた。とそこで、フランドールが現在時刻を報告する。

 ヘイジはため息をついた。


「はあ・・・何やら落ち着きませんな。こう、胸の辺りが」


 彼が自分の胸部に手を当てて、ワサワサ動かす。するとフランドールも胸に手を当てて言った。


「私もだよ~・・・何だかソワソワしちゃう」

「いやいや、フラン嬢がそわそわすることは・・・ん?」


 とそこで、ヘイジはあることに思い至った。彼は主に、おずおずと問いかける。


「あの、もしやとは思いますが、フラン嬢。・・・自分と一緒に行くつもりでしょうか?」

「え? 当たり前じゃない。ヘイジの“ごしゅじん”として、あいさつしなきゃ」


 さも当然のように、彼女は腰に手を当てて言った。

 ヘイジは困惑した。また主を勝手に連れ出そうものなら、レミリアか咲夜からお咎め無しでは済まされないだろう。彼は片手で頭を抱えると、絞り出すように言葉を発した。


「・・・いやその、外出禁止なのでは」


 しかしフランドールは気にした様子もなく、


「いいのいいの。もう二回も、お外に出たんだから。“二度あることは三度ある”って言うじゃない、きっと今度も許してもらえるって」

「むむ・・・・・・」


 違う。何か違うような気がする。だが、これ以上何を言ってもフランドールは聞き入れそうにない。今までがそうだったのだから。

 ヘイジは低くうなると、説得を諦めて黙り込んだ。











 時は流れて、夕食後。もうすっかり日も暮れてしまった。


「見つかったのね? その相手」

「ええ、まあ・・・」

「・・・どんな人なのかしら?」


 キッチンで食器を洗いつつ、ヘイジと咲夜は話し込んでいた。咲夜の洗い上げた食器を受け取って、布巾で丁寧に拭きながら彼は応じる。


「それはその・・・今は、ちょっと」

「ああ、話したくないのならいいのよ。で、これから会いに行くわけね?」

「はい」

「大丈夫? 体がガチガチじゃないの」


 咲夜にドン、と背中を叩かれる。その時に初めて、彼は自分の体が強張っていることに気づいた。

 手に持った食器を置くと、肩と首をグルグル回して凝りをほぐす。


「あ、ああいや・・・き、緊張していまして・・・はは」

「あらら、ヘイジったら純情なのね」


 焦ったような様子を見せる彼に、咲夜は思わず笑ってしまった。

 恋人との対面とあって、きっと照れているのだろう。可愛いものである。まあ、実際には彼女が想像しているようなものではないのだが。


「・・・ところで、そろそろ出発の準備をした方がいいんじゃないかしら?」


 とそこで、彼女は懐中時計を取り出すと、そう言った。


「おや、もうそんな時間でしたか。で、では、行って参ります」

「行ってらっしゃい、頑張りなさいよ」

「はい~・・・」


 そそくさと、ヘイジがキッチンから姿を消す。その後姿を、咲夜は微笑ましそうに見送った。






 フランドールの部屋に戻り、ヘイジは準備を整えた。まあ、特に何かをしたわけでもないのだが。やったことと言えば、手土産にと咲夜に持たされたお菓子をちゃんと持ったか確認したぐらいだ。


「さて、準備万端。出発するとしましょう」

「よーし、出発進行!」


 元気な声を上げるフランドールと共に、ヘイジは紅魔館の裏口に回った。

 もちろん、正門から出て行っては美鈴にバレてしまうからだ。二人は足早に館を抜け出すと、前に館を抜け出す時に使った、地下用水路の入り口へ急いだ。


「ヘイジ、急いで!」

「はいっ」

 

 夜空に月は無く、代わりにいくつもの星が瞬いている。その光の下を、大きな影と小さな影が駆けていった。


「・・・ここですな」


 そして、まず第一の目的地に辿り着いた。前にここを通って抜け出したのはバレているはずなのだが、何か対策が施されているわけでもなかった。まあ何はともあれ、これを利用しない手は無い。

 ヘイジは蓋を持ち上げて、入り口を開いた。


「フラン嬢、お先にどうぞ」

「ありがとヘイジ。“レディファースト”だね」


 彼が開けた入り口に、フランドールが飛び込む。その後に続いて、ヘイジも慎重に入っていった。

 それから地下道に降り立ったが、やはり狭い。フランドールが振り返って、彼に聞いてきた。


「ヘイジ大丈夫? 狭いから、ぶつからないようにね」

「ええ、心配には及びません」


 先を行くフランドールの後を追うような形で、ヘイジは狭き通路を進んでいく。一度通った経験からか、今回はあまり天井や壁にぶつからずに歩くことができた。

 そしてしばらく進んでいくと、


「あっ、はしご。出口だよヘイジ!」

「おや、もう着いてしまったのですか」


 歩いていたフランドールが、突然大きな声を出して前方を指差した。その先には壁に取り付けられた梯子があり、ぽっかり空いた出口からわずかに光が差し込んでいる。

 ヘイジは彼女に追いつくと、自分から先に梯子を登っていった。彼が地上に出ると、今度はフランドールがパタパタと翼を羽ばたかせて、地下道から飛び出した。


「・・・さて、現在位置はこの辺りですから・・・・・・」

「どこに行けばいいの?」


 パチュリーから貰った地図を開いて、ヘイジは場所の確認をする。その横から、フランドールがぴょんぴょん跳ねながら覗き込んできた。

 地図によれば八雲邸の場所は、ここから近いとは言えないが、そう遠くもない。要するに中途半端な距離である。まあ、いい運動にはなりそうだ。彼は地図を閉じると、行くべき方向に向き直った。


「こちらですな、では参りましょう」

「う~ん、何だかワクワクしてきたなあ!」


 ヘイジが進行方向を指差す。フランドールは興奮を抑えきれない様子で、彼と一緒に歩き出した。


謎多き相手に近づきつつあるヘイジ。フランドールも久しぶりの外出で、期待と不安の入り混じった出発・・・!



投稿が遅れても、クオリティーを落とさぬよう力を入れてはいますが、読者の方からするとどうなのでしょうか。何かあれば、感想やメッセージにお願いします。

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