26.お邪魔しま~す
紅魔館に、招かれざるお客さんが。さて誰だろう?
地平線から日が差し込んできた頃の、紅魔館。
「やはり、ここはとても落ち着きます」
「だよねー、私の部屋だし・・・今はヘイジの部屋でもあるかな?」
「そうですか。自分も、ここにようやく馴染んできたのですな」
「え~、けっこう前から馴染んでたと思うけど?」
自室でフランドールは、ヘイジとおしゃべりしていた。ヘイジは壁にもたれてくつろぎ、フランドールの方はコップに入った水を鉢植えにあげている。
とそこへ、
「うわーっ! 広い! それに壁も天井も真っ赤っか!!」
「あまり良い趣味じゃないわね」
「ふ、二人ともあまり言わない方が・・・」
賑やかな声が三人分、部屋の外から聞こえてきた。ヘイジもフランドールも、最近聞いたことのある声だ。
「あれ? この声は・・・」
「聞き覚えがありますな、もしかすると・・・」
二人で顔を見合わせる。外の音に耳を澄ますとその直後、今度は一際大きな怒鳴り声が響き渡った。
「こらあーっ! 妖精二匹に宵闇妖怪! どこに行った!?」
「げっ! 門番だ。しつこいなーもう」
「取り敢えず、ここはどこかに隠れてやり過ごしましょうか」
「ねえ・・・大人しく謝るっていう選択肢は無いの?」
美鈴の大声が遠くから聞こえてくる。対して三人分の声は徐々に近づいてきた。ドタドタと足音も聞こえる。
やがて部屋の前で、止まる気配がした。
「よっし、ここに隠れよう」
「賛成」
「か、勝手に入っちゃっていいのかな・・・?」
ガチャリ、と音がして外側から扉が開く。それからフランドールの部屋へと入ってきたのは、
「あれっ、フランがいる」
「チルノにルーミアに、大ちゃん! やっぱりみんなだったんだね!」
青い髪色の妖精、チルノだった。フランドールが彼女に駆け寄ると、チルノの後ろからルーミアと大妖精が続けて入ってくる。
「そーなのかー、ここフランの部屋だったのね」
「ご、ごめんねフラン。お邪魔してます」
「わあ、みんな揃って遊びに来てくれたの?」
目を輝かせて問うフランドールに、三人は同時に頷いた。そして、ルーミアが一歩前に出てくる。
「いやー、チルノがどうしても行きたそうだったから」
「はあ!? 最初に行こうって言い出したのはあんたでしょ! 仕方ないから付いて来てやっただけなんだから!」
「でもチルノちゃん、昨日の夜から口を開けばフラン、フランってずっと言ってたよ?」
代表して話し始めるルーミアに、チルノが抗議の声を上げた。そこへ、大妖精が話を差し込んでくる。
するとチルノは、更に声を荒げて言った。
「ち、違う! あたいはフランに会いたいとか、一言も言ってないし」
「ふふ、今言ったじゃないの」
「・・・!」
ルーミアの突っ込みに、彼女は顔を赤くして黙り込んでしまう。そこで、ルーミアが仕切り直すように言った。
「まー、せっかく来たんだし?みんなで何かしましょうよ」
「じゃあ弾幕ご」
「却下。死んじゃうわ」
「うう~・・・」
笑顔でダメだしをされて、フランドールは不服そうな表情になる。すると次に大妖精が、一つの提案を持ちかけた。
「えっと、かくれんぼはどうかな?」
「あっ、いいわね。それなら安全だし。で、誰が鬼になる?」
「うーん・・・ヘイジ、やってくれない?」
「え? 自分が、ですか・・・」
フランドールに頼まれて、ヘイジは少し考え込む。
「・・・そうですな、引き受けましょう」
「あらありがとう」
「わー、フランの従者さんっていい人」
それから立ち上がると、了承した。考えてみれば、自分が隠れる側だったとしても、隠れられる場所が無いだろう。
彼の答えにフランドール、ルーミア、大妖精は目を輝かせた。
「じゃあ隠れ場所は、館の中全部ね!」
「・・・はい?」
ヘイジはその時、フランドールの口からとんでもないことを聞いた気がした。
「ヘイジ、三分間数えてね。私たち隠れるから――ほらチルノ、隠れるよ」
「わ、分かってる! あたいに構うなって!」
「あらあら、仲がよろしいこと」
「あー、フランったら抜け駆けしないでよ」
四人がドタバタと部屋を出ていく。一人残されたヘイジは壁に頭をつけると、
「三分数えなくては・・・いーち、にーい、さーん・・・・・・」
少々ゆっくりと、カウントを始めた。
それからきっかり三分後。
「さーて、どこへ隠れたのですかな?」
部屋を出て、ヘイジはフランドール、ルーミア、大妖精、チルノの四人を捜し始めた。すると廊下の向こうから、
「あっ、ヘイジさん!」
「おや美鈴殿。どうかされましたか?」
美鈴がやって来た。何やら慌てた様子で、彼女はヘイジに説明する。
「侵入者ですよ! 小さい妖精二匹に、宵闇妖怪が一匹! 私としたことが、門を破られて侵入を許してしまって・・・」
「ああ、それならちょうど、自分も探していたところです」
「そうなんですか!? じゃあ一緒に探して、とっちめてやりましょう!」
「ええそうしましょう」
この時ヘイジは心の中で、密かに喜んだ。紅魔館内部全てを一人で探すのは、さすがに無理がある。そこで美鈴に手伝ってもらおうという魂胆だ。
協力者を作ってはいけないとも言われなかったし、別に良いだろう。
「じゃあ私は向こうを探してきますから、ヘイジさんはあっちを頼みますね」
「ええ、幸運を」
二手に分かれると、美鈴とヘイジは捜索を開始した。
「・・・ここにいますかな?」
ヘイジは冷凍庫を開けてみるが、中には誰もいない。あのチルノとかいう子なら、こういうところが好きそうだと思ったのだが当てが外れた。
「ううむ・・・これは難敵」
続いて机の下、戸棚の中なども探してみるが、誰一人として見つからない。やはり館の中全体を探すなんて、無理がある。
とヘイジがあきらめかけた、その時、
「ねえヘイジ~」
「む!? フラン嬢! 見つけましたぞ!・・・って、おや?」
背後から声がかかった。彼は振り向きざまに彼女の名前を呼んだが――何かが変だとその時感じた。
「・・・あの、なぜ堂々と出歩いているのです?」
「ああ、それはねー」
まるで自分から見つかりに出て来たかのようだ。そして次の瞬間、フランドールの口から衝撃的な言葉が発せられた。
「みんな帰っちゃったよ、って言いに来たの」
「――!?」
ヘイジは気が遠くなってしまいそうだった。
前の更新から、気づけばもう一ヶ月以上経っていました。時間の流れの速さを、実感しております。
更新は不定期ですけれども、これからもどうか、うちのヘイジ達をよろしくお願いします。




