23.お嬢様と骸骨
ヘイジと「普通に」接したいレミリア。しかし、なかなか上手くいかない。
では、どうぞ。
レミリアの部屋。彼女はこの場所で、深く悩んでいた。
「どうしよ・・・これじゃあまるっきり駄目だわ」
玉座に座ったまま、両手で頭を抱え込む。彼女が考えているのはもちろん、ヘイジについてのことである。
彼のことはどうしても苦手だ。理由は自分でもよく分からないのだが、あの姿を想像するだけでも背筋が冷たくなる。
しかし一応妹の従者だし、紅魔館の他の住人達は彼とかなり友好的なのだ。ヘイジも今ではすっかり紅魔館の一員なのだから、それを認めてあげるという意味でも怖がってばかりはいられない。
それにレミリアには、気高き吸血鬼としてのプライドがある。彼の為にも自分の為にも、この苦手だけは克服したいと思うのだが・・・
現実には、そう上手くはいかないものだ。
「はあ・・・・・」
長く息を吐き出すと、彼女は玉座の背もたれに体をあずけた。そこへ、
「レミリア殿―! この“チェス”というものですがね、一局指しませんか?」
ヘイジが四角い盤を持ってやって来た。声の調子からして、何やら上機嫌である。
チェス。嫌いではないのだがしかし、今のレミリアはどうにも気が乗らない。
「ああ・・・悪いけど、今はやる気分じゃ・・・・」
「でしたら、こちらの“オセロ”にしましょうか?簡単そうですし」
彼女が断ると、彼はもう一枚の盤を取り出してきた。こう言っては悪いが、しつこい。
レミリアはげんなりして、ため息をついた。
「いや、そういう問題じゃなくて・・・・」
「? それでは、どういう問題なのでしょうか?」
あきれかえるレミリアに、ヘイジは首を傾げて尋ねる。と、そこで彼は何かひらめいたのか、ポンと手を打った。
「ああ、盤の遊戯はお気に召しませんでしたか。でしたら、“弾幕ごっこ”などは」
今度はスペルカードを出してそう言ってきたヘイジに、彼女はいい加減頭に血が上ってきた。気がついた時には、
「うるさい! もういいって言ってるのよ!!!」
玉座を後ろに蹴り飛ばして、そう叫んでいた。吹き飛んだ玉座が、後ろの壁に当たってガアン!と大きな音を立てる。
ヘイジの体が、凍り付いたように動きを止めた。
「も、申し訳御座いませんッ!!」
次の瞬間、彼は跪いて頭を垂れた。レミリアはそこで、
「あ・・・ごめんなさい。私ったら、強く言いすぎちゃって」
「いえ、悪いのは自分で御座います。あなた様のお気持ちも考えず、遊戯など勧めて・・・・」
はっと我に返ってヘイジに謝ったが、彼は跪いたままそれを否定する。
「・・・ところであなた、どうして私にゲームなんか勧めてきたのかしら?」
ふと気になって、レミリアは彼に問いかけた。
「え?いやその、何と申しましょうか・・・嬉しかったのです。レミリア殿の、お側にいられることが」
「“嬉しかった”?」
顔を上げてその問いに答えたヘイジに、レミリアは聞き返す。すると彼は何やら口籠りながら、続けて口を開いた。
「レミリア殿とは、あまりお話をしたこともありませんでしたから・・・実を言うと、あなた様には嫌われているのではないか、と思っておりました」
「ヘイジ、あなた・・・」
でも、と言って彼は続ける。
「罰則とはいえ、自分をお側に置いてくれて・・・これを機にレミリア殿と、もっと親睦を深めたいと考えたのですが・・・・すみません、思い上がっていたようです」
「・・・・・そんなことは無いわ」
すまなさそうに喋るヘイジに、レミリアは小さく、しかし強い意志を込めて言った。
「私の方こそ・・・いえ、謝るべきはむしろ私の方よ。あなたのことが怖いからって・・・ろくにあなたを知ろうともせず、今まで避けていたのだから」
「レミリア殿・・・」
そこで彼女は、ヘイジの言葉を遮るように立ち上がった。
「ヘイジ、チェスの相手をなさい。これは・・・命令よ?」
それから彼に向けてそう言い放った。命令を受けてヘイジも、応じるように返す。
「・・・望むところ、でございます。これでも将棋は得意分野でして」
「ふふん。東洋のチェスが、本場でも通用するとは思わないことね」
お互いにそう言って笑い会うと、二人は小さなテーブルを挟んで向かい合って座った。
テーブルの真ん中には白と黒のチェッカー模様をした四角い盤が置いてあり、これまた白と黒に分かれた駒が並んでいる。
二人向かい合ったところで、レミリアは盤を回転させると、黒の駒が並んだ方をヘイジに向けた。
「黒のプレイヤーが、先攻よ。あなたに譲るわ」
「ほほう、余裕ですな。では遠慮無く」
おもむろにヘイジは駒の一つを手に取り、
「“歩兵”を進めましょうか」
ポーンの駒を一つ、前進させた。
「じゃ、次は私の番」
続いてレミリアも、白のポーンを前進させる。
さて、勝負は進んでいき・・・・・・・
「“僧侶”で王手をかけます」
ヘイジのビショップが、レミリアのキングを追いつめた。
「へえ・・・やるじゃないの」
しかし彼女は余裕の表情で笑うと、ナイトをキングの前に置く。
「・・・なるほど、そう来ますか」
ヘイジはクイーンを移動させ、キングの横に回り込ませた。すると、それを見たレミリアは突然、
「あっはっはっはっは!!!」
声を上げて笑い始めた。それから白のクイーンを手にすると、
「チェックメイトよ!」
「なっ・・・・!?」
ヘイジが場を確認すると、相手のクイーンに自分のキングが捉えられていた。
攻めに思考を奪われていて、守りが手薄になっていたのだ。
「ううむ・・・自分の、負けですな」
「ふふん、どうかしら? 私の腕前は」
潔く自らの敗北を認めるヘイジに、レミリアは得意げになってそう言った。それから、
「よし! じゃあ今度はオセロよっ!!」
チェス盤を横にのけて、今度は新たな盤をテーブルの上に置いた。こちらには白と黒の石が二つずつ置かれている。
「え、ええ? 連戦にございますか?」
「当然。私に付き添うことがあなたの罰則なんだから、嫌だとは言わせないわよ?」
何も言い返せず、ヘイジはレミリアとオセロを始めた。
ちなみに、ハンデなのかまた黒を譲られ、ヘイジが先攻となった。
「はい、ここに白を置けば・・・」
「ぬおっ!? こちらの黒石がわずか数個に・・・!」
結局、彼はまたしても負けてしまった。しかしゲームをしている間、レミリアの表情はとても輝いていて、
何と言うのだろうか。負けたのに不思議と、ヘイジは心が晴れ晴れとしていた。
ゲームの過程を描くのが難しい!大雑把でしたら、すみません。
良かったねおぜう様、骸骨と仲良くなれて。何事も、やればできるんだ!
ではまた次回。




