21.骸骨処分
レミリアに叱られるヘイジ。彼への処罰は・・・
さて、咲夜に連行されていったヘイジはというと、
「・・・・・・」
「・・・・・・・」
レミリアの部屋で、彼女の前に正座していた。しかし、じっと黙ったままレミリアは、口を開く気配すら見せない。
彼女がしゃべらないことには、ヘイジとしても何も言いようがないので、今はお互いに沈黙を貫いているという状況だ。
「・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
しかし、不気味すぎる静けさである。咲夜はレミリアが下がらせてしまったので、この部屋に第三者はいない。
これから何を言われるのか、ヘイジは気が気ではなかった。何しろ、規則を破ってフランドールを外に出してしまったのだ。自分がついていながら。
さぞかし厳しい沙汰があるだろうと彼が心の中で覚悟を決めたところ、
「・・・ヘイジ」
「は、はいッ!?」
そこで唐突に、名前を呼ばれた。返事をするが、緊張のせいで声が裏返った。
「規則を破った以上、あなたをこのまま見逃す訳にもいかないわ」
「はい、覚悟は出来ております」
レミリアの言葉に、頭を下げてヘイジは返答する。土下座した彼に向かって、彼女は続けて言った。
「・・・罰則として、フランにはしばらく自室での謹慎を言い渡すわ。あとあなたは・・・・」
何を言われるのだろうか。心臓などないのだが、ヘイジは胸の奥が騒いで仕方がなかった。
一呼吸ほど拍を置いて、レミリアが宣告を下す。
「あなたへの罰則は、しばらく私に付き添うこと!」
びしっと指を突きつけられた。
彼は何を言われたのか理解するのに、しばらく時間を要した。
その後、
「う~む・・・」
レミリアの傍らに控えながら、ヘイジはうなった。当の彼女は玉座に腰掛けたまま、時々ちらちらと彼の方を見てくる。
一体これのどこが罰則なのだろうか、とても気になる。しかし罰を科せられた当人が聞くのも、何となくおこがましい気がしたので、やめた。
「ね、ねえヘイジ?」
「あ、はい。何でございましょう?」
とそこで、レミリアが声をかけてきた。ヘイジは彼女の方を向いて返答する。
彼女は意味深に少し笑って、言った。
「あなた今、『これのどこが罰則なのか』って思っていたでしょ?」
「!? ・・・ええ、仰るとおりでございます」
内心驚きながらも正直に彼が答えると、彼女はもう一度笑みを浮かべた。
「そうよね、逆に思わない方がおかしいわ。説明してあげるから、よく聞きなさい」
「はい・・・」
何だかレミリアの態度は、高圧的である。しかしこれも、人の上に立つ者としての威厳なのだろう、とヘイジは考えた。
なので、大人しく彼女の話を聞くことにする。
「まずフランは自室で謹慎中。普通ならあなたも、彼女と一緒に謹慎処分を受けてもらうことになるけど・・・」
レミリアは一旦言葉を切って、それから続けた。
「“脱走”の手引きをしたであろうあなたを、フランと一緒にさせておく訳にもいかないわ。それと、罰として何か労働をしてもらうことを考えると・・・これがあなたにとって、一番適当な罰則なのよ」
「・・・・・なるほど」
さすがは紅魔館の主である。そこまで考えて、この罰則を与えたとは。
彼女の説明を聞いて、何となくヘイジは感心してしまった。
「おみそれ致しました、レミリア殿」
「ふふ、もっと讃えなさい。何も出ないけどね」
跪くヘイジに、レミリアは得意そうな笑みを浮かべてそう言った。
その顔がどこか青ざめていることに、彼は気づいていない。
「・・・正直じゃない奴」
「え? 誰がですか?」
大図書館。パチュリーがふと、ため息混じりにつぶやいた。
それに気づいた小悪魔が、彼女に問いかける。
「レミィのことよ」
「レミリアお嬢様の?」
聞き返してきた小悪魔に、パチュリーはうなづく。それから口を開いた。
「何でも、ヘイジが苦手なのを克服したくて、無理に理由をつけて彼を側に置いたそうよ」
「へえ~・・・“誰もがひれ伏す”とまで言われたレミリアお嬢様に、そんな弱点があったんですね~」
小悪魔は、レミリアのヘイジに対する苦手意識に気づいていなかったらしい。いかにも意外、といった感じに目を丸くしている。
「ちゃんと克服できるといいですね~・・・ああ、何だか応援したくなってきちゃいましたよ」
そう言った彼女を、パチュリーは押しとどめる。
「あ、それはやめといた方がいいわ。彼女、ヘイジが苦手なことは誰にもバレてないと思ってるから」
「え?そうだったんですか?」
「そうよ。まあ、隠そうと必死なところが見たいから、敢えて言わないけど」
少々意地の悪い笑みを浮かべて、パチュリーは言った。
自分も悪魔ながら、この人は悪魔だ。と、小悪魔は心の中で思ってしまった。
「(よし、面と向かって話すのは大丈夫だわ)」
レミリアは、心の中でちょっとした達成感に浸っていた。
今まではヘイジを目の前にしただけで体の震えが止まらなかったのだが、今回は比較的普通に会話することができたのだ。彼女にとっては大きな進歩である。
しかし、ここで気を緩める訳にはいかない。
「(さて次は・・・)」
ヘイジは部屋の掃除をしている。今はレミリアに背を向けて、棚にハタキをかけているところだ。
そこで彼女は、思いついた。
「・・・近づいて、肩を叩いてみようかしら」
早速玉座から立ち上がり、彼の背後から近づく。
抜き足、差し足、忍び足・・・端から見れば、まるで悪戯を仕掛けようとしている、幼い女の子のようである。
よし、もうちょっと。レミリアはヘイジの肩に手を伸ばした。
「おやレミリア殿、どうかなされましたか?」
とそこで、彼が突然に振り向いた。伸ばしかけたその手が、止まる。
「いやいやいや!!! な、ななな何でも、何でも・・・ないのよ? ははは・・・・」
そこからバックステップで一瞬にして距離を取ると、彼女は青ざめた顔で、表情を引きつらせつつそう言って笑った。
「・・・? 左様にございますか」
首を傾げながらもヘイジはまた、掃除に戻る。
恐怖で冷や汗が吹き出し、呼吸が乱れる。
こんなでは駄目だ。苦手克服の大変さを、レミリアは思い知った。
頑張れおぜう様。明日は明るいぞ!
?「あきらめんなよ!」
ではまた次回。




