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16.お遊戯、再び

一晩の騒ぎもおさまり、日常に戻るヘイジ達。

そんなある日のひとコマ。

 喜劇のような異変が終わって、少しだけ時間が過ぎた。

 そんなある日、夕暮れ時のフランドールの部屋にて。


「ヘイジ~、遊ぼうよ!」

 

 スペルカードをホルダーに綴っていたヘイジのもとへ、フランドールがやってきた。


「そうですな、何をします?」


 ホルダーから顔を上げ、彼女の方を向いてヘイジが聞く。


「弾幕ごっこ!」

「望むところでございます。今度は負けませんよ」


 フランドールは、彼の問いに元気良く答えた。ヘイジはカードを綴り終えたホルダーを提げて、腰を上げる。


「・・・さて、それでは早速始めましょうか」


 そして、フランドールから一定の距離を取る。離れてから、彼は呼びかけた。


「ご準備はよろしいですか?」

「おっけー♪」


 次の瞬間、二人は同時にカードを取り出すと、


「禁忌“カゴメカゴメ”!」

「“白骨手投斧”」


 それぞれのスペルを宣言した。まずは、先に宣言されたフランドールの弾幕が、網目状に広がってヘイジの逃げ場を奪うように迫ってくる。


「おおっと・・・!」


 網目の隙間へ入り込み、何とか最初の波を乗り切る。そしてヘイジは両手に一つずつ斧を生成すると、彼女へ向けて投げつけた。


「らくしょーらくしょー♪」


 しかしフランドールもさるもの。彼女を挟みこむように両サイドから迫る斧を、サッと真上に飛翔して難なくかわしてしまった。

 が、


「まだでございます!」


 突如、ヘイジの周囲から複数の斧が出現した。彼はそれらを手に取ると、次々に投擲してくる。

 いくつもの斧が、回転しながら彼女を襲った。まさに“弾幕”である。


「わわっ・・・その技、この前と違うよ・・・・」


 避けながら、フランドールはつぶやいた。初見の時には、こんなに投げてこなかった。

 それに斧の誘導性能が高く、こちらを狙ってカーブしてくるという厄介なものになっている。


「でも・・・面白くなってきた!」


 口角を上げると、彼女は新たなスペルを宣言した。


「こんなのはどうかな? “レーヴァテイン”!!」


 燃えさかる真っ赤な大剣が、フランドールの手中に出現した。


「!? あれはこの前の技・・・」

「えーいっ!」


 フランドールが剣を大きく横に振るうと、大量の火の粉が周囲に飛び散った。火の粉に触れたヘイジの斧が、一瞬で灰と化す。

 彼は慄然とした。


「何という高温・・・これでは近づけな」

「ほらほら、もう終わり!?」


 考える暇も与えず、フランドールはヘイジに向かって突進してきた。そして、レーヴァテインを大きく振りかぶる。


「ええい! この程度の窮地、脱せずして何とするか!!」


 彼は自分の頬を叩いて気合いを入れると、ホルダーからもう一枚のカードを取り出した。


「こ、これなら・・・“真・蝕斬ノ太刀”!」


 スペルの宣言と共に刀を引き抜く。

 すると彼の構えた刀から、緑色をした凄まじい量のオーラが放たれた。一瞬で刀を包み込んで、その刀身を何倍にも増す。

 そこへ、フランドールが突っ込んできた。


「えいやあっ!」

「それっ!」


 レーヴァテインの斬り上げと、緑の太刀による斬り下ろしが衝突する。直後、巨大な衝撃波が発生し、二人は大きく吹き飛ばされた。


「ぬおおおっ!!」

「わあああっ!!」


 吹き飛んで、壁に背中をぶつけて二人は倒れる。大剣と太刀が宙を舞い、床に刺さると同時に消えた。


「痛た・・・ヘイジ、もう終わり?」


 背中の痛みをこらえつつ、フランドールは立ち上がって言った。倒れたヘイジの体が、ぴくりと動く。


「何を仰います、まだまだやれますぞ」


 彼女の言葉に応えて、彼もゆっくりと立ち上がった。そしてホルダーから一枚のカードを取り出す。


「しかし長期戦は、性に合いませぬ・・・これで決めます」

「じゃあ、私もこの一枚で勝つよ」


 応じるようにフランドールも、カードを一枚だけ取り出した。二人は一呼吸ほどおいてから、


「行かせて頂きますぞ、“星骨弓”!!」


 先にヘイジがスペルを宣言した。彼の手に、骨で出来た弓が生成される。しかし矢は無く、弦も張られていない。

 彼は弓を構えると、まるで本当に撃つかのように弓引く動作をした。


「はっ!!」


 そして指をぱっと離すと、弓から何本ものレーザーが流星のように放たれた。


「あっ、私の“スターボウブレイク”に似てる」

「参考にさせて頂きました」


 レーザーを避けながらフランドールが言い、ヘイジはそれに答えながら第二射を放つべく再び弓を引く。とそこで、


「私のも見て欲しいな! “クリムゾン・デスサイズ”!!」


 フランドールがスペルを宣言した。その宣言と共に、彼女は自身の身の丈以上はある大きな鎌を手にする。

 普通の鎌と違って、柄の両端に刃が付いている。その刃は真っ赤に燃えさかる炎に包まれていた。


「ヘイジの鎌が格好良かったからさ、お手本にしたんだよ」

「光栄です」


 彼女が話している間に、ヘイジは狙いをつけて弓を引き、指を離す。再びレーザーが放たれた。


「わっ! 危ないなあ・・・それっ!!」


 光線の一本がフランドールの服をかすめる。レーザーをかわすと、彼女は手に持った鎌をヘイジに向かって投げつけた。

 大鎌が回転しながら、ネズミ花火の如く火の粉を散らして飛んでくる。


「・・・大技には、大技で応えるが礼儀」


 ヘイジは弓を引き、迫る鎌に狙いを定めた。


「避けるなど言語道断、迎え撃ちましょうぞ!!」


 指を離し、レーザーを放つ。いくつもの光線が、一直線に大鎌へと向かった。

 過たず目標に命中し、大きな爆発が起きる。


「よし!」


 その時、彼の心に隙が生まれた。ヘイジは弓を下ろしてしまったのだ。

 しかしその直後、爆炎の中から二本に分かれた鎌が飛んできた。


「なっ!?」


 油断していた彼は対応できず、無抵抗のまま胴体を寸断された。体が上半身と下半身に分かれて、床に崩れ落ちる。


「“ゆだんたいてき”だよ、ヘイジ」


 手元に戻ってきた鎌を取って、フランドールが言う。


「ええ・・・全てに於いて、自分の完敗でございます」


 慢心が敗北へと繋がった。もはやヘイジは、それ以上何も言えなかった。

 とその時、


「じゃあ、負けたヘイジにはバツゲームね!」

「はい?」


 フランドールは唐突にそう言うと、ヘイジに駆け寄って彼の下半身を持ち去ってしまった。


「あっ! な、何をなさるのです!?」


 その後を追いかけるが、足がないのでズルズルと這いずってしか移動できない。

 蛇足になるがその光景は、とてもホラーである。


「えいっ」

「あっ」


 持ち去ったヘイジの下半身を、フランドールはおもちゃ箱に投げ入れて、鍵をかけてしまった。

 それから彼女は振り向くと、


「しばらくそのままで過ごしてもらうからね」


 無邪気な笑顔でそう言った。


「そ、そんな・・・」


 危うく、彼は泣きかけた。骨なので涙は出ないが。



PV15000、ユニーク2000アクセスに達しました

読者の皆様には、常に感謝しております。


まだまだ未熟な自分の作品ですが、生暖かい目で見守って下されば幸いです。




はてさて、ヘイジの下半身はいつ返してもらえるのやら・・・

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