13.突入ッ!!
ヘイジ、オリジンと名乗る少年は、紅魔館へ。
一方こちらは紅魔館の中庭辺り。
「・・・オリジン、たった今気がついたのだが」
「何かな、ヘイジ」
二人並んで歩きながら、ヘイジはふとオリジンに尋ねた。
「貴殿は、アナザーの“能力”を受けないと言っていたが・・・自分は、そうではない。共に行動していては、貴殿の足手まといになるかも・・・」
「ああ、そのことなら大丈夫だって」
ヘイジに向かい、彼はヒラヒラと手を振って言った。
「私の近くにいれば、同じように“能力”の干渉を受けずに済むからな。・・・まあ、ちょっと大袈裟だが、大船に乗った気持ちでいてくれ」
「・・・それは頼もしいことだ」
オリジンが冗談っぽく言って、微笑を浮かべる。ヘイジは頷くと、彼と共に館の入り口へ急いだ。
そして、紅魔館の入り口である玄関先。
何やら不気味な静けさが漂っている。ヘイジは玄関の扉の前に立つと、勢いよく開けた。同時に中へ踏み込むと、周囲を素早く確認する。
「異常、無し」
「あーあ・・・後で、ここの人たちに賠償金とか請求されないだろうな・・・?」
ヘイジの後に続いて、オリジンが事後の心配をしつつ、足を踏み入れた。
館の中に入ると、彼はおもむろに人差し指を一本立てた。そして、メトロノームのように左右に振り始める。
「チッチッチッチ・・・近いな、この近くに“彼女”はいる」
「オリジン、その動作には何の意味が?」
「ああこれ? “ダウジング”という奴さ。指に魔力を込めて、目標物を探すレーダーにするんだ」
「はあ・・・」
よく分からないが、とにかくそれで“アナザー”の居場所が割り出せるのだろう。
ヘイジがその様子をじっと見ていると、唐突にオリジンが歩き出した。そして今度は、ヘイジが彼の後をついていく。
「・・・なあヘイジ」
とそこで、歩きながらオリジンは話しかけてきた。
「“従者”だと言っていたけど、君の主人ってどんな人なんだ?」
「ううむ、一言で言い表すならば・・・とても可憐な方、だと言わざるを得まい。それに、とても純粋な心の持ち主でもある」
「へえ、そんな人が主人なのか。幸せだな君は」
そう言って彼は、どこか憂鬱そうにため息をつく。
どうしたのか、とヘイジが思っていると、彼は自分から口を開いた。
「・・・アナザーときたら、とんだお転婆娘でね。“勝手に出歩くな”と何度言っても聞きやしない」
「は、はあ・・・それは大変なことで」
「それだけじゃない。毎回のようにちょっかいかけてくるもんだから、夜も落ち着いて寝ていられないんだ。まったく・・・アナザーはまったく!」
歩きながら愚痴をこぼし始める。足早に歩く彼の背中に、ヘイジは言った。
「まあそれも、“アナザー”が貴殿のことを信頼しているから、ではなかろうか?」
「はあ? あいつがそんなこと思うかな・・・私のことなんて、“面白い珍獣”みたいにしか思ってなさそうだが」
「いや、気心が知れていなければ、わざと反抗したり、ちょっかいを出したりするようなこともあるまい。それだけ、貴殿らは仲が良いのだろう」
ヘイジの言葉に、オリジンは歩く速度を少し緩めて、考え込むような素振りを見せた。
「そんなもんかね・・・ま、今は彼女を連れ戻すことが先決だ」
またもや、彼は足早に歩き出す。ヘイジも遅れないように、彼の後を追っていった。
十数分ほど、経った頃だろうか。
オリジンが突如、立ち止まった。
「・・・・・・・」
「どうしたオリジン、この近くなのでは」
「・・・やべえ、迷った」
彼は頭を抱え込むと、自棄でも起こしたかのように叫びだした。
「何だよこの館は! 近くにいるのは分かってんのに通路が入り組みすぎだ! このままじゃ、夜が明けても見つかりゃしないっての!」
「お、落ち着いて・・・その、“アナザー”はどの辺りにいるのか教えてもらえるだろうか」
ヘイジがなだめると、オリジンは自分の右下辺りを指差した。
「この下、二十メートル辺りにいる。はあ・・・館の構造を知っている人がいれば」
「なるほど。では、後は自分が案内しよう」
「え?」
情報を得たヘイジは、今度はオリジンの前に立って歩き出す。
彼の後姿を、しばらくの間ぼんやりとオリジンは見つめていたが、そこで気がついた。
「ああ! そういえば、ここの従者だったか。すっかり忘れてた・・・おーい、待ってくれえ」
彼はヘイジの後を追って、駆け出した。




