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1.招かれざる来訪者

カリスマブレイク要素が含まれます。嫌いな方はご注意を。

 幻想郷―現世で忘れ去られたものが、最後に行き着く場所である。



紅魔館にて

 湖の畔にそびえ立つ真っ赤な館、紅魔館。その姿は遠くからでもよく見える。そんな館で、今とあるアクシデントが起こっていた。


「・・・何なのかしら、これは」


 目の前にある“何か”を見て、彼女はそう口にした。

 彼女の名はレミリア・スカーレット。外見は幼い少女だが、この館の主であり同時に、気高き吸血鬼である。


「な、何なのかと言われましても・・・」


 その横で銀髪の女性が答える。彼女はレミリアの従者で、名を十六夜咲夜といった。


「ごめん、言い方を変えるわ。なぜ、こんな気色悪いものが紅魔館(うち)にあるのかしら?」

 

 レミリアが、“それ”を指差して言う。二人が眺めているのは、背丈が二メートル近くもある、黒い色をした鎧のような“何か”。しかし、その形状が人間の骨格そのものなので、非情に気味が悪い。骸骨をそのままコールタールで固めたら、こうなるのではないだろうか。

 咲夜の返事を待たずにレミリアは命じた。


「・・・早く捨ててきて。気色悪い上に、置いておいてもしょうがないわ」


 正直な話、頭の部分にある目のような空洞が、何やら光っているように見えて気持ち悪かったのだ。


 咲夜の方はそれに気づいていない様子だったが、彼女にとってもこの鎧は不気味で、早いところどうにかしたいと思っていた。


「かしこまりました。・・・しかしかなり重そうですから、妖精メイド達にも手伝ってもらいましょう」

「そうね、じゃあみんなを動員して・・・」


 鎧に背を向けて、レミリアと咲夜はメイド達を招集するため場所を移すことにした。と、その時二人の背中を、何者かが叩いた。


「? 何かしら、咲夜」


 レミリアが咲夜の方を振り返る。すると彼女は、不思議そうな顔で言った。


「え? 私は何も・・・お嬢様こそ、何か?」

「私だって何も・・・」


 そこで二人は、背後に何かの気配を感じた。


「「!? 誰っ・・・・」」


 そして同時に振り返って、レミリアと咲夜は言葉を失った。二人が振り向いたところには、あの骸骨のような鎧が立っていたのだ。明らかに移動している。


「・・・あの、捨てられるのはご勘弁・・・・」


 その口の辺りがカクカクと動き、鎧が言葉を発した。


「「いやあああああああっ!!!!」」


 それとほぼ同時に、二人分の絶叫が紅魔館中に響き渡った。











 その数分後、場所は変わってレミリアの部屋。


「・・・それで、あなたはなぜ紅魔館(うち)にいたのかしら?」


 レミリアは玉座に座って、目の前にいるものに問いかけた。彼女の気高い雰囲気は健在だが、心なしか顔が引きつっているように見える。

 その横にいる咲夜も同様だ。


「いやあ、それがどうにも分からなくて・・・気がついたらここにいた、という次第なのでございます」


 口をカクカク言わせながら、骸骨のような鎧は答えた。しゃべれるらしい。


「では名前を聞こうかしら。私はレミリア・スカーレット、ここの主よ。そしてこっちは、従者の十六夜咲夜」


 レミリアが自己紹介し、彼女に紹介された咲夜は頭を下げた。


「なるほど、レミリア殿に咲夜殿ですな。自分の名はヘイジと申します」


 そして今度は鎧が名乗る。彼の名前を聞いて、レミリアは考え込んだ。


「ヘイジ、ね・・・この辺では聞かない名前だわ。咲夜は知ってる?」

「いえ、私にも覚えはございません」


 彼女の問いに、横で控えていた咲夜が答える。すると、ヘイジと名乗った骸骨は困ったように頭を押さえた。


左様(さよう)にございますか・・・これは参りましたなあ」

「お姉様―っ!またおもちゃが壊れちゃったよ~!!」


 と、そこへ赤い服を着た金髪の女の子が、扉を勢いよく開けて入ってきた。その時は泣いているようだったが、彼女はヘイジの姿を見ると目を輝かせた。


「わあ・・・! 大きなおもちゃね」

「え!? おも・・・」


 ヘイジが言葉を発する間もなく、女の子は彼の足を掴むとずるずる引きずっていった。

小さいのに、もの凄い力である。


「あ、ちょっ・・・待ちなさいフラン! それは」


 止めようとしてレミリアは、やめた。


「(・・・まあ、フランと遊べば粉々になるでしょうね。それなら捨てる手間が省けるわ)」


 そして心の中でそう算段していた。











 何やら薄暗い部屋に、ヘイジは床を引きずられ連れてこられた。そこでようやく、足から手を放してもらえた。


「さ~て、どうやって遊ぼうかな~?」

「あの・・・」


 嬉しそうにヘイジの骨張った体(と言うより骨だ)に触る彼女を、彼は片手で制した。


「・・・自分、おもちゃではございませんので」

「しゃべれるの!? おもしろ~い」


 しかしますます笑顔になって、あばらの辺りや頭蓋をぺたぺた触ってくる。彼は正直なところ、参ってしまった。


「私はフラン。フランドール・スカーレットだよ、よろしくねお人形さん」

「自分はヘイジと申し・・・だから人形ではありませんて」


 可愛らしい彼女の笑顔に、彼も答えて自己紹介したが否定は忘れなかった。


「ヘイジっていうの?じゃあヘイジ、一緒に遊ぼうよ」

「・・・いいでしょう、何をして遊びます?」


 完全にフランドールのペースに引き込まれ、彼は諦めて彼女と遊んであげることにした。


「やったー、じゃあ弾幕ごっこしようよ!」

「弾幕・・・? 球の蹴り合いか何かですかな? それなら出来そうです」


 ヘイジがそう言うとフランドールは、嬉しそうにはしゃいで飛び跳ねた。


「じゃあ早速始めるよ~?禁忌“恋の迷路”」


 そして彼女はスペルを宣言すると、ヘイジに向かって凄まじい量の弾幕を浴びせかけてきた。


「こ・・・これ、想像と全然違っ・・・・」


 最後まで言えぬまま、彼は弾幕に飲み込まれた。


次回へ続きます。


いかがでしたでしょうか。ご意見・ご感想など待ってます。

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