09 眠れる彼女は九尾の子?
俺は全く動く事ができずに突っ立っている。
まばたきするのも呼吸をするのも忘れて、ただベッドに横たわる女の子を凝視していた。
まず最初に目についた長くて綺麗な金髪・・・から生えた狐のような耳だった。
本来、絶対にあってはならないところに大きな耳が生えていた。
その髪と同じ金色で耳元が見えないぐらい調和している。
そしてそれがただのコスプレ道具でないことはすぐに気付いた。
何故なら皮の薄い所から細い血管が見えるし、時々ピクピクと動くからだ。
俺はもしや、と思った。
次に目についたのは尻尾だ。
モフモフとした大きな尻尾が、腰より少し低いぐらいのところから9本も生えている。
やっぱり・・・、と心の中で小さく呟く。
この女の子は九尾だ。
何がどうなってこんな姿になっているのかは分からないが、確かに俺のベッドに侵入してきたあの九尾だ。
スゥスゥと可愛らしい寝息が聞こえる。
寝息をたてている彼女の顔を見た。
とても可愛い表情を浮かべた、人間の女性の顔だ。
しかし人間の女性以上に可愛くて美しい顔だ。
今度は彼女を体へと視線を移す。
滑らかな曲線を描く身体が露わになっている。
そしてたわわに実ったその胸が見え・・・ああ!
俺は無意識のうちに一瞬で手に掴んでいた布団をかぶせた。
俺の中の理性がそうさせた、後悔はしていない。
もし少しでも行動が遅れて見てはいけないものが見えてイケない感情が爆発したことだろう。
「んむー・・・何・・・?」
「・・・」
やっちまった。
俺の感情は爆発することはなかったが、代わりに彼女を起こしてしまった。
彼女は体を起こして状況を確認しようとする。
勿論、体を起こせばかぶせてあった布団はずり落ちて再び裸体が露わになってしまう。
それは不味い、今度こそイケない感情が爆発してしまう。
「ちょっと待て!今起きたら色々と不味いから!だからまだ起きんな!」
「えー、何でー・・・?あれ・・・何で私、裸なんだろ」
「こっちが聞きてぇよ!とにかく動くな良いな分かったな!」
俺は素早い動作で部屋から出て10秒も経たない間に戻ってくる。
手には何のプリントもされていないシンプルなシャツと男物の新品のパンツ、さらにジャージの上下を持っている。
それをまとめてベッドに放り投げた。
「それを着ろ、そして何も言わずにこっちに来い。文句は言うなよ。女物のパンツなんて持ってるわけねぇからな!」
「んー、分かったけど・・・このシャツ、胸のところが苦しそう」
「それはお前の胸がでか過ぎ・・・いや、何でもない。とにかく、ちゃんと着てから出てくるんだぞ」
はーい、という軽い返事に頭が痛くなる。
もぞもぞ動く布団を眺めてふと思う。
・・・どうしてこうなった。




