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07 闇の向こうの金色の髪

――足音が聞こえる。


誰も居ない筈の廊下から、確かに人が歩く音が聞こえる。


ギシギシと床がきしむ。


その足音は、恐らくリビングからだ。


小さな音でも静寂に包まれた闇の中では、ハッキリと聞こえる。


強盗が来た、とか。


幽霊が出た、などとは思わなかった。


その足音はとても柔らかく、聞いているうちに不思議と心が安らぐからだ。


足音は徐々に俺の眠っている寝室へと近づき、止まった。


音の主は確実に部屋の扉の前に居る。


うっすらと瞼をあけ、扉を見つめた。


ゆっくりと、ドアノブが回るのを見た。


――扉の向こうに、金色に輝く髪の毛が見えた。


暗闇の中でも輝く、さらりとしたそれは小さく波打っていた。


金色の髪の毛は、少し姿を見せただけで闇に溶け込むように消えた。


俺は扉の向こうの闇をジッと見つめるが、何も見えない。


何も見えない闇の中から、一匹の狐が出てきた。


9本の尾を持つその狐は、リビングで寝ているはずの九尾だ。


トコトコと歩いてきた九尾は、俺の横たわるベッドに近づくと配管工よろしく飛び移った。


ボフッとベッドは少しだけ沈んだがすぐに元に戻る。


ベッドに乗りこんだ九尾は布団に足を取られぎこちなく俺の隣まで来ると、再び眠り始めた。


九尾は俺のことを信用してくれたのか、一切の警戒をせずにぐっすりと眠っている。


俺はそっと九尾を撫でようとして、止めた。


幾つかの疑問が浮かんだからだ。


・・・どうやってドアを開けた?


九尾の手ではドアノブを回すことはまず不可能だ、それ以前に身長が足りない。


そして・・・先程、暗闇の中に見えた金髪は何だったのだろう。


先程はまるで気にしていなかったが、考えてみれば普通におかしい。


玄関は鍵がかかっていて入れない筈だ。


足音はリビングから聞こえてきたが、俺の部屋はアパートの3階に位置する。


窓から侵入するのは難しい。


なら・・・どうやって入ってきた?


しかし疑問を解決させることはできなかった。


疑問解決を邪魔するかのように強烈な睡魔に襲われたからだ。


抵抗することも空しく、すぐに眠りに落ちてしまった。

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