45 リラックスのはずなのに
「ふあぁ・・・やっぱ風呂に入ると生き返るな・・・」
俺はなんやかんやで一五分経って風呂に入った。なんやかんやの間、俺はずっと玖美とリビングにいたのだが、玖美の妙にそわそわとした挙動が目について仕方なかった。
『ちょっと落ちついたらどうだ?』と俺は注意したのだが、玖美は『なっ何でもないって!!私はいつだって落ちついてるよ!?』と挙動不審な動きでわけの分からないことを言う始末。どうやらタヌキの置物を気にしているようだったが、何故そこでタヌキの置物なのかが分からない。
結局疑問を解決することもできないまま一五分が経って、今こうして風呂に入っているわけなのだが。
(ってか、こうしてゆっくり休むのも何か久しぶりだな・・・)
俺は風呂の中に肩まで埋もれながらリラックスしてボンヤリとする頭でふと思った。
久しぶりといってもゆっくりと休む暇がなかったのはせいぜい三日ほどなので、久しぶりといって良いのかどうかは定かではない。
とはいえ、その三日間があまりにもハードスケジュール過ぎた。山で迷って、九尾と出会って、玖美を家に匿うことになって、妖怪達の人知れぬ事情を知って、エトセトラ・・・。至って普通に暮らしていたら体験できない出来事のオンパレードだ。一介の高校生の俺にとって奇怪過ぎる出来事の連続は精神的に来るものがある。むしろ良く平常でいられるなと自分でも思う。
ただ、精神的に平常でいられても、日常のスケジュールは駄々狂いだ。おかげで本来ゆったりと休憩を取るはずのところでまで気苦労が絶えなかった。学校で昼寝して休んだりもしたが、机に突っ伏して寝る状態では疲れがちゃんと取れるはずがない。
だからこそ、今この瞬間風呂の中でゆったりできることが久々に感じたのだ。
そう思った途端、強烈な眠気に襲われた。気が緩んで眠くなったのだろう。
このまま寝てしまおうかな、そう思いゆっくりと目を閉じたと同時に。
(・・・ん?)
ドアを開く音が聞こえた。
明らかに脱衣所のドアを開ける音だ。
誰だろう?と思ったが、眠気で頭が働かず誰が来たのかという答えは出なかった。ちょっと考えれば家には俺と玖美しかいないことに気付いただろうが、強烈な眠気を前にしてはこの程度の考えすら思い浮かばない。
脱衣所と風呂場を仕切る半透明よりもう少し曇ったドアの向こうから脱衣所に入った誰かが服を脱ぐ動作が見えた。
風呂に入るつもりなのか?俺が入ってるのに、と他人事のように思ったそのとき、不意に先程の玖美の言葉が脳内で再生された。
『良いから良いから!!私もすぐに入るから秀輝は先に入ってて!!』。
・・・すぐに、入るから?
「・・・はァっ!?」
俺は閉じかけた瞼を勢いよく見開かせ、一瞬で意識を覚醒される。
玖美だ、今脱衣所で服を脱いでいるあのシルエットは玖美のものだ。そして先程の『すぐに入る』という発言。
そこから導かれる答えは一つ。
(アイツ、まさかこんな狭い風呂で混浴する気なのか・・・!?)
それはマズイ、それだけはマズイ。
健全な一介の高校生として、妖怪とはいえ女性である玖美と一緒に風呂に入るのは精神的に非常にマズイ。
もし玖美が幼児体型だったら・・・本人には悪いが華奈のような体型だったらまだ良かったが、玖美ほどの脅威的なスタイルが相手では自分の理性が持つか危うい。
混浴が男の夢というのは否定はしないが、もしものことがあったりしたら世間に顔向けできなくなる。
しかし、その状況を回避するにはどうすれば良いだろうか。
このまま脱出しようにも、脱衣所を通るときに玖美と顔を会わしてしまう。玖美の性格を考えれば、勝手に風呂から出ようとする俺を無理矢理引きずってでも風呂に入ろうとするかもしれない。逃げ道も確実に玖美と会うルート一つだけのこの状況では逃げるという選択肢は実行に移せない。
その状況を回避する方法は一つしかない。
唯一の出入り口である半透明なドアのカギをかけるしかない。
「・・・ッ!!」
行動は迅速だった。
俺は風呂の中から勢いよく立ち上がり、ドアについている簡易なカギに手を伸ばす。
風呂の中のお湯が大きな波を作り、大量にこぼれたが気にしている余裕は一切ない。
あとちょっとで手が届く。
手が届けば最悪の状況は回避できる!!
「秀輝ー?私もお邪魔するねー」
しかし、俺の必死に対応は空しく散った。
あと少しで手が届くと思った瞬間、ドアは非情にも勢いよく開け放たれた。
ちょっと書き方を変えてみました。
正直、この書き方は得意じゃないので多少・・・だいぶおかしな点があるかもしれませんが、ご了承ください。
また、どこかおかしな点を見つけたときは知らせてくださるとありがたいです。
アドバイスなどもしてもらえるとかなり嬉しいです。
※もしかしたらまた前の書き方に直すかもしれません。
※四月四日修正




