04 金狐と足の怪我
しばらくの間、俺は狐に見惚れていた。
暗い山の中でも綺麗に輝く黄金の毛皮は毎日手入れをしているかのように滑らかそうだった。
まだ幼く小さな体と体よりもずっと大きなぶっとい尻尾は風が吹くたびにふさふさと揺れる。
・・・モフモフしたい。
「・・・くォん」
「・・・はっ」
そんな俺の思いが通じてしまった(というか感じ取った)のか怯えるように一度鳴いた。
その鳴き声に俺は妄想世界から現実に戻ってくる。
いかんいかん、たっぷり20秒も見惚れてしまった、なさけねぇ。
今度は見惚れるわけではなく、狐をじっくりと観察する・・・が、
(うわぁ、綺麗な毛皮・・・初めて狐見たけど想像してたよりずっと綺麗だな・・・。しかしちっこいな、まだ子供かな?にしては尻尾がバカデカイ。てかモフモフしてぇ。あの尻尾にダイブして思う存分モフモフしてぇ・・・)
やはり思考は尻尾へと向かってしまう、なさけねぇ。
そしてじっくりと観察していて、あることに気が付いた。
狐の後ろ脚辺り、尻尾に隠れて見えづらいが金色の毛が一部赤く染まっていた。
俺はそれをみてすぐに気付く。
――こいつ、もしかして怪我してるんじゃないのか?
だから動けず、こんなにぐったりしているんじゃ?
あの弱々しい鳴き声は本当に助けを求めていたんじゃ?
「・・・お前、助けてほしいのか?」
「くゥん・・・」
俺は馬鹿正直に狐に聞いた。
はたから見れば変かもしれないが、狐はちゃんと返事をしてくれた。
狐の言葉は分からないが、俺には『助けて』そう言ったように思えた。
いや、そう言ったんだ。
俺はすぐに狐を抱き上げた、
抵抗することも無く、大人しいので助かる。
いや・・・もう抵抗する元気さえないのかもしれない。
狐を強く抱きしめ、山の中を走りだした。
一刻も早く家に戻ってこいつの手当てをするために。




