36 いざ学校へ
俺は自分の部屋に置いてあるスクールバックを取り、キョロキョロと落ちつきのない玖美を連れて玄関へ。
学校指定のシューズを履いてとっとと外に出ようとしたところで玖美は自分の靴を持っていないことに気付いたが、玖美がどこからともなく赤いスポーツシューズのようなもの(なぜか靴底が下駄っぽい)を取りだした。
そういえば昨日も学校で会ったとき靴を履いていたが、どこで調達したのだろう?
「・・・その靴、なに?」
「え?あ、これのこと?これは今妖怪の間で大人気デザイナーイッポンダターラが手掛けた『アヤカシダッシュ』の最新モデルだよ。秀輝は知らないでしょうけど、すっごい人気なんだよ?」
「や、そういうことじゃなくて・・・もういいよ・・・」
どうやって靴を出したのかを聞きたかったのだが、こうも見事に勘違いされたら聞く気も失せる。
きっと妖怪の扱う術かなにかにどこからともなく靴を出せるようなものがあるんだろう、そうだろう。
妖怪に人間の常識が通用しないと改めて実感する。
・・・しかし『アヤカシダッシュ』とは凄いネーミングセンスだな。
妖怪というのだからもっと古風で和風なものだと思っていたが、それは大きな勘違いだったようだ。
きっと妖怪も人間と同じように外国の文化を取り入れているのだろう。
とにかく、外で待っているであろう涼香と合流するために、玄関のドアを開く。
涼香が飛び出して行ったときカギをかけていなかったのであっさりと開いた。
「あ、シュウちゃん、玖美さん。おはよう」
「お、おう。改めておはよう」
「う、うん。おはよー」
涼香の挨拶に対して、俺と玖美はギクシャクしながら挨拶を返す。
あんなことがあった後じゃどれだけ仲がいい者同士でもギクシャクとした空気からは免れないだろう。
逆にあんなことがあったのに平常でいられる涼香が変なんだよォ!!と俺は思ったが、よく観察してみると涼香の体が不自然にビクビクッと震えている。
本当は顔を真っ赤にするほど緊張しているのだろうが、それを表に出さないでいられる涼香の精神は大したものだ。
「そ、それじゃそろそろ行こうぜ?いい加減行かなきゃマジで遅れるしっつか走っていかなきゃ間に合わないんじゃねェか?」
「だっ大丈夫だよ。さっき時計で見たけど、まだ歩いていけるぐらいの時間はあったから」
「そっか、なら安心だな。まあ、とにかく行こうぜって俺もう何回この言葉言ったっけ」
「そんなの知らないよ。それより早く行こっ!!学校に行けるだなんて楽しみで仕方ないんだよ!!」
「あれ?そういえばなんで玖美さんが制服着てるの?」
「ああ、言ってなかったけど玖美も学校に通うことになったから。いつまでかは知らないけど仲良くやってくれ」
「ええ!?そんなの聞いてないよ!?」
「だから言ってないっつうの」
「はっ!?まさか私生活だけじゃ飽き足らず純粋清純純情スクールライフにまで愛の巣を!?くっ、このままじゃ私とシュウちゃんの数少ないキャッキャウフフタイムが減ってっちゃう・・・!!」
「だからお前は盛大過ぎる勘違いをしてねェか!?っつかやっぱお前キャラ激変してるしそしてなによりそんなこと大声で叫ぶんじゃねェ!!」
「??どうしたの、そんな慌てて?」
涼香の聞き捨てならないトンデモ発言に俺はパコーン!!と涼香の頭を叩いて黙らせる。
幼馴染だからこそ遠慮なしにできる秘技である。
そんな中、玖美だけは涼香の言葉の意味を理解できていないようで可愛らしく首をかしげていた。
愛の巣なんてモロ言ってるのにそれでも分からない彼女は正真正銘純粋乙女なのだと信じたい。
ちなみにガヤガヤガミガミと騒いでいるとき、同じ通学路を使っている男子生徒の集団が巨乳金髪美人玖美とお淑やか系和風美人涼香をたるみきった目でデレデレと見つめた後、敵意と殺意と嫉妬の念がこもったヘビのような視線を向けてきたがそれは完全に無視した。
そんなこんなとしていたらいつの間にか学校に着いていた。
時間はギリギリであったが、ギリギリでも間に合ったことには変わりない。
俺達は外履きから内履き(玖美は内履きを持っていないのでスリッパで妥協)に履きかえて教室に向かおうとしたが、
「待ってください」
背後から何者かに呼び止められ、足が止まる。
聞き覚えのある、というかもう何度も聞いた男性の声。
口調は丁寧なのになぜか見下されているように感じる独特のふんいき。
アイツしかいない。
俺はギチギチとゆっくりと振り返り、そこに佇む男に声をかけた。




