03 迷い山と迷子の高校生
それからほんの一,二時間後のことだ。
案の定というか、俺は完全に迷子になっていた。
誰が何と言おうと迷子の高校生だ。
「・・・・・・」
油断もクソも無いが、油断した。
あのキノコロードは罠だったのか。
自分のことながら情けない。
ルートから外れて山奥に迷い込んだと気付いたのは三〇分ほど前のこと。
視界に入ったキノコを片っぱしから採り尽くし、いざ帰ろうと思った時には道が分からないことに。
適当に歩いてりゃ帰れるだろ、と思い山を下るつもりで歩いたが気付けば同じ場所に戻っている。
無限ループに陥ったと分かった途端に俺は頭を抱えて泣こうかと思ったがなんとか思い止める。
しかし悲しいかな、駄目押しとばかりに嫌なことまで思いだしてしまった。
そういえば、この山『迷い山』とか言われてたよな・・・。
迷えば永遠に出る事ができない山の迷宮だとか・・・ああ、ヘタすりゃもう帰れないかもな。
そんなことを思い背筋をブルブル震わせながらも改めて良く考えてみる。
いやいや、そんなのただの噂だろう。
まず永遠に出れない迷宮とかありえないだろ、山の中だぜここ?
そう思い直して意気揚々と歩き回るが結局同じところに戻って来てしまう。
しかも辺りも既に暗い。
これ以上むやみに歩くのは流石にまずい、足元が見えず崖から落ちるかもしれない。
「ちきしょー!!」
今まで叫べなかった分も含めて大声で叫んだ。
叫んだところでなにか起きるわけでもない。
そもそも迷子になったのは自分の責任なので八つ当たりといえば八つ当たりだ。
声は空しく木霊してやがて消えた、かと思った。
「―――くゥ~ん・・・」
まるで俺の声に対応するように、どこからか弱々しい声が聞こえた。
それは人の声ではなく明らかに動物の鳴き声だ。
「くゥん、くォ~ん・・・」
また聞こえた。
今度はハッキリと、すぐ隣の茂みから聞こえたと分かった。
俺は一瞬ビクッとしたが、弱々しく助けを求めているような鳴き声に恐る恐るだが茂みを覗いた。
そこには―――ぐったりと顔を伏せた、とても綺麗な金色の毛皮をもつ一匹の狐が倒れていた。




