02 キノコの誘惑
* ま さ に キ ノ コ 回 。
俺は山の奥へ奥へとドンドン進んでいった。
普通なら山奥へと突っ込んでいくなんてためらうだろうが、おっちゃんの教えてくれたルートだし大丈夫だろ、とのん気なことを考えていた。
しばらく進むとお目当てのキノコを見つけた。
すぐさま採集を始める。
「・・・少ねぇ」
ただしキノコは望んでいる程多くはない。
スーパーに売っているシメジのパックの半分にも満たない。
駄目だろ、こんな量じゃ。
新たなキノコを求めてキノコ探しを再開する
しかし中々見つからない。
キノコどころかその辺に勝手に生えてきそうな木の実さえ見つからない。
・・・おっちゃん、本当にこのルートで良かったのか?
そんなことを疑問に思いながら早一時間が経った。
もうキノコは諦めて帰ろうかと思った。
「・・・お、あれは・・・もしや!」
キノコ探しを諦めかけていたその時、やっとの思いでキノコの群れを見つけた。
先程の貧弱少数キノコ部隊とはまるで違い、もう一本一本が空き缶ぐらいの大きさでもうこの一セットでキノコパーティが出来るんじゃないか?と思うぐらいたくましい軍隊キノコだ。
貧弱なキノコやらたくましいキノコやら、何だか卑猥に聞こえるのは全て気のせいです、気にしてはいけない。
たかがキノコを見つけただけで身も心も震えたのは人生で一度だけの経験で良い。
さらに辺りを見てみればたった数メートル程先にキノコの群れが、その向こうにもキノコの群れ、そのまた向こうにもそのまたずっと向こうにも、キノコが直線になるように並んでいる。
それはまるで人を山奥へと迷い込ませるかのように並んでいた。
俺は無我夢中にキノコを採った。
おっちゃんから受け取った竹籠に採ったキノコをどんどん放り込む。
あっという間に竹籠の中は一杯になったが、予備の竹籠を取りだしてさらに採集を続ける。
本来進むべきルートから大きく離れている事にも気付かずに、だ。
いや、無理もなかったのかもしれない。
(うっは、凄ぇキノコ!キノコ王国がこんなところに!こんなデカイと某配管工のゲーム思い出すな、食ったら一気に成長しそうだ!これだけあったら報酬金どころかチップも貰えっかも!?)
頭の中はキノコのことでいっぱいいっぱいだった。
情けないとは思うが、流石に誘惑には勝てない。
キノコに釣られて俺は山の奥深く、決して人が入らないような場所に迷い込んでしまった。




