16 九尾の女の子の侵入者
俺と新一が玄関についたときには、すでに通勤ラッシュのときの満員電車のように人が集まっていた。
集まっているのが男ばかりなのは(新一いわく)金髪巨乳の女の子は男を引きよせる・・・らしい。
あながち間違っていないのかもしれない。
どこから持ってきやがったのか七人に一人ぐらいの割合でカメラを構えた男がちらほら。
悲しいかな、隣の新一の手にもカメラがセットされている。
俺が白い目で新一を見ていると、突然叫びだした。
「野郎どもー!セクシーショット撮影隊、今日こそベストショットを撮るぞ!!掛け声ーさんにーいちハイ!」
「谷間パンチラセクシーショット!おー!!」
「なに気持ち悪い掛け声あげてんだよ!!てか何でお前がリーダーポジなんだ!!今日こそってことはこんなくだらねーこと毎日やってんのか!?いやまずセクシーショット撮影隊ってなんなんだよー!!」
右手を突き上げて意気込む新一の頭をバシーン!!と思いっきり叩いた。
不意を突かれた新一は力んだゴリラのような顔で右手を挙げたまま、仰向けにバタンと倒れた。
「隊長、隊長!しっかりしろ!隊長―――!!」
カメラを構えたまま整列している男どもから多くの声が上がるが、隊長と呼ばれた新一は口からよだれをたらすだけでピクリとも動かない。
返事がない、ただの屍のようだ。
新一は急いで駆け付けた隊員AとBに担がれ、保健室に連れて行かれた。
まだ隊長、隊長!!と叫ぶセクシーショット撮影隊をギロリと一睨みすると、蜘蛛の子を散らすように隊列を崩して逃げて行った。
「はあ・・・何がしたいんだか・・・」
溜息を一つ吐いて俺は玄関を見渡す。
セクシーショット(ry)が消えたおかげでギュウギュウ詰めだった玄関でも大分動きやすくなった。
人が少なくなって人混みに隙間ができた。
俺は身をひねりながら人混みの中を進む。
がやがやとうるさい人混みだが前に進むにつれて生徒とは明らかに別の声が聞こえてきた。
「だから、君はどこから来たんだと聞いてるんだ」
ゲッ、この声は大山。
小さくて騒ぎにまぎれて聞き取りづらいがドスのきいたその声は聞くだけで体が震えそうだ。
今日の朝叱られたばかりの俺にとっては大山と顔を合わせるのはかなり気まずい。
だがどうやら文句を言うわけにはいかないようだ。
「人間の知り合いを探してたら良い匂いがしたから来ただけだってー・・・。お腹減って死にそうだからなにか食べ物くれたら嬉しいかなぁ・・・?」
聞き覚えしかない声が聞こえる。
おまけにキラキラ輝く金髪もちらほら。
これはもう確定した、侵入者は玖美だ。
しかし・・・言ってることがめちゃくちゃだな。
大山も怒鳴りたいのはやまやまだろうが、学校の生徒でもない見ず知らずの人に怒鳴るのはためらっている。
もう俺は隙間を探そうとせず、前に居る奴を押してドンドン進んでいく。
文句を言われながらも俺は押し続けてやっと大山と玖美が見える位置までついた。
やっぱり侵入者は玖美だった、アイツには後でじっくりと説教させてもらうか。
ふと、玖美がハッと顔を上げ鼻を頻繁に嗅ぎ始めた。
「クンクン、この匂いは・・・秀輝?」
いや、お前は犬か。
そう突っ込みたかったが玖美は九尾、狐なのに鼻が利くのかもしれない。
「ククン・・・秀輝は・・・そこだね!」
玖美はさらにクンクンクンクンと匂いを嗅ぐのを止めてバッ!!とこちらを見た。
その瞬間、俺と玖美は目があった。
玖美の目は俺を見た瞬間、ギラギラ輝き始め『やっと見つけた!』と語っていた。
そしてとてつもないドヤ顔に俺は腹が立ったが次の瞬間、サァーと一瞬で青ざめる。
大山がこちらに振り返った。
途中から文が色々とおかしいことに・・・。言葉不足過ぎる自分orz。




