12 学校の怪物
「うおおおおお!!」
今、俺は商店街の道路を雄叫びを上げながら全力で駆け抜けています。
道行くおばさん軍団が驚きでギャーギャー騒いだあと、白い目で見られたが気にしている余裕はない。
そして自分でも驚くほどのスピードで走る。
それほど長くない筈の道のりがとても長く感じるのは何故だろう。
しかし、そんな全力マラソンも終わりを迎える。
「見えた・・・ッ!」
100m程度の一直線の道路の先、校門と言う名のゴールが姿を現した。
もう少しで辿り着く。
だがタイムリミットは残りわずか。
さらに校門のわきには、遅刻した者学校の規則を乱す者に死より恐ろしい罰を与えると言われるゴリラ体育教師且つ生活指導の匠、スクール・ザ・モンスターこと大山先生が居た。
奴がこの学校に降臨して以来、教師に反抗する者はおらず、遅刻した者は一人も居ないと言われている。
噂では、偶然出くわした武装した銀行強盗グループを一人で壊滅させたという伝説を持つ。
そして――奴がいると言うことは俺の命が危ない。
「ッ!?おおおおおおお!!」
身体に残る全ての力をフルに使ってさらに加速する。
今の俺なら100m走で世界新記録だって出せそうだ、ボ○トなんぞ目じゃないだろう。
ヒィヒィ言いながら全力で走って、最後は頭から校門に飛び込んだ。
ズザッ!!と轟音を立てて地面を転がりまわる。
「・・・0.74秒」
しかし呟くように吐かれた言葉にガバッ!!と立ち上がり振り返った。
本家顔負けの仁王立ちをかましている大山の手にはあまりにも小さな(大山が大き過ぎる為小さく見える)ストップウォッチが。
「徳野、0.74秒遅刻だぞ・・・どういうことだ」
駄目押しするように言われた言葉に俺は汗を滝のように流して真っ青になる。
大山のこめかみには青筋がビキビキィ!!と立っている。
その迫力はどんな怪物だって逃げ出すレベルだ。
神様、何故俺を見捨てたのです。
俺は悪魔に連れて行かれてしまいます。
さようなら人生、さようなら皆、玖美も家に閉じ込めたまま勝手に出てきてごめんな。
しかし、死を覚悟した俺にまさに神のような一言が聞こえた。
「・・・まあ、何だ。たった0.74秒ぐらい許してやろう。とっとと行け、授業に間に合わなかったら承知しないぞ」
神よ、俺を見捨てなくてありがとう。
大山に遅刻したことに対する謝罪をして逃げ出す様に生徒玄関に入る。
もう二度とこんな目に遭わないよう気を付けようと心に刻む。
何はともあれ、間に合った。
靴を履き替え、駆け足でクラスへ向かう。
俺のクラスは2階にある1-7だ。
階段からも近くて助かる。
これなら授業には十分間に合うだろう。




