表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/15

『創造と創造の創造で創造〜創造しちゃった〜』

神界中央創造局、第3クリエイティブ・オフィス。

そこは、数多の宇宙の命運を握るトップエリートたちが集う、張り詰めた静寂の空間である。

「よし、これで提出だ。……おはようございます!」

作業を終えた一人の青年が、ガタッと椅子を引いて立ち上がった。

太い眉、獲物を射抜くような力強い目力。仕立ての良いスーツの上からでもわかる、無駄に筋肉質な胸板。彼は額の汗を爽やかに拭い、同僚たちに眩しい笑顔を向けた。

彼の名はソウゾウ。創造陣営が誇る、若き天才クリエイターである。

「おい見ろよ、ソウゾウがまた『通常世界』を一つ完成させたぞ」

「完璧だ……。スキャンエラーは驚異のゼロ。どこにでもあり、誰もが安心して暮らせる平穏な地球型惑星だ。これなら監視グループの冷徹な査察官どもも、ケチのつけようがない」

周囲の神々がため息をもらす中、ソウゾウは「いえ、当然の職務を果たしたまでです!」と爽やかに一礼し、オフィスを後にする……風を装った。

深夜。

誰もいなくなった暗黒のオフィスに、引き締まった足音が響く。

ソウゾウだ。

彼は爽やかな笑顔を完全に消し去り、劇画調の深い陰影を顔に刻み込んでいた。机に向かい、眼鏡をクイッと指で押し上げる。その瞳には、昼間のエリート青年からは想像もつかない、ドロリとした狂気の情熱が宿っていた。

「ふん……。誰もが安心して暮らせる平穏な世界、だと? 老害どもめ、あんな退屈な世界、反吐が出る……。あれはただの『提出用ハリボテ』だ」

ソウゾウの太い腕が、猛烈な速度でマルチモニターのキーボードを叩き始めた。残像が残るほどの凄まじいタイピング音。筋肉が軋み、彼の肌から熱気という名の蒸気が立ち上る。

「私の真の芸術……至高の箱庭エデンは、ここからだ! 監視グループの目を欺く『通常世界』の外皮(偽装ホログラムバリア)を展開……! ここからは、私だけの領域テリトリーだ!」

画面の奥深く、パスしたばかりの通常世界の「内側データ」へと潜り込んでいく。

ソウゾウにとって、ここからのコード構築は、神聖なる『園芸』そのものであった。

「まずは概念の『種』を植える……! よし、ここに物理法則の『水』を注ぎ込め。急速に発芽しろ、私のパッション(情熱)よ……!」

キーを叩く指先から血が滲む。しかし、彼の知的中二病脳は臨界点を突破していた。

「チッ……余計な重力子バグが混じったな。この『世界の邪気(雑草)』め、一本残らず根絶やしにしてやる……! 空間の広がりが美しくない。この次元の『無駄な葉』は、私の論理という名のハサミで切り落とす(剪定する)……!」

彼が血と汗を流し、すべての栄養を注ぎ込んでデータ上で開花させたのは、神界の規律では100%即処刑となる、歪みに歪んだ禁忌の世界。

――植物しかいない、しかし自立歩行し、驚くほどおしゃべりな奇抜すぎる世界であった。

「よし……。開花したな、私の最高傑作が……!」

画面の中では、生まれたばかりの植物たちが「わーい!」「喋れるぞ!」とガヤガヤと騒ぎ始めている。ソウゾウは鋭い眼光で画面を睨みつけ、ボソリと呟いた。

「静かにしろ。……神界の上層部どもにバレたら、お前たちも私も終わりだぞ」

完璧な偽装の外皮をパチンと閉じ、すべての証拠を隠滅した。

ソウゾウは椅子の背もたれに深く体重を預け、肩で激しく息をする。

全身から汗が噴き出し、やり遂げた達成感と、己の犯した大罪への恐怖が混ざり合う。彼は劇画調の最高にシリアスな顔で、冷や汗を流しながら、ポツリと呟いた。

「……創造しちゃったな。創造と創造の創造で……創造しちゃった」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ