1 おっさん、なぜか美少女ロリ魔王に召喚される
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明日、4月出版の本業の本の印刷前の最終校正のゲラ原稿が送られてくるので、更新遅れます。
次回、更新4月10日です。
本条春陽は、過労死寸前の職場で働いていた。異世界で暮らしたい。国会会期中は、そう夢想することもあった。すると悪魔の誘惑、いやこの場合は魔王か、桃色髪の美少女魔王ちびっ子魔王様に本条春陽は誘惑されたのである。
「なぜ、ここに人間がいるのじゃ?異世界の魔王を召喚したのではないのか」
本条が、霞が関の職場で一瞬、寝落ちをして目を覚ますと彼の目の前に、背の低い童顔の美少女がいた。10代ぐらいだろうか?小学生か?本条は、大理石の冷たい床の感触を頬に感じた。どうやら、俺は大理石の床に、寝ころんでいるらしい。
本条が、床から見上げると、桃色のハイレグ、マイクロ水着姿の美少女の姿が目に映った。年齢は小学生高学年、いや、もう少し上か?。
鮮やかな桃色の髪の毛である。肩まで伸びた髪は美しくカールしている。
身長は140センチくらいだ。胸は小さい。美乳だが、微乳である。童顔で、かなり可愛い部類の美少女である。美少女は存在する。本条の大学院時代の指導教授は、今は80歳を超えた昭和の大女優と小学校からの同級生であった。教授が暮らす渋谷の邸宅に、19歳年下の奥様、噂では教授がまだ、准教授として、別の大学で教えていた時の教え子だという。
教授は、奥様と二人で暮らしていた。教授が両親から引き継いだ小さな洋館には、大量の本とそこを訪れる全ての学生に自慢をしている、小中時代の卒業アルバムを本条も見せられた。
昭和の大女優は、銀幕デビューをする前からとんでもない美少女だった。美女は、小さな時から美少女なのだと思った。
思えば、激務ではあったが短い官僚生命だった。明日は、本条は青少年健全育成条例違反で、逮捕され、留置所に送られているに違いない。役所も懲戒免職であろう。辞表を書く手間が省けたと桃色髪の美少女を床から、見上げる。
本条は、この状況に至極まっとうに困惑していた。ロリ美少女の頭上には、先日、仕事で視察した東京の赤坂にある迎賓館のような豪華なシャンデリアが目についた。
「ここは、どこのラブホだ?」
本条がいる場所はどんよりと薄暗い。身体も、気怠い。
そして、本条が困惑している以上に、桃色髪の美少女は困惑していた。
「リズウェル様・・・」
「魔王陛下」
豪奢なローブをまとった魔導士達が美少女を困った顔で見つめている。一人の魔導士は、おもむろに口を開いた。
「魔王陛下。大変、申し上げにくいことでございますが、異世界からの魔王召喚に失敗したと思われます・・・」
桃色髪の美少女、魔王リズウェルは、魔法陣に現れた人間の男性を観察する。そうなのだ、魔王を召喚したはずだった。しかし、なぜか人間の男性が床に転がって、幸せそうな顔で自分を見つめていた。
キモい・・・。
黒髪で、20代前半だろうか。随分とくたびれた顔をしている。中肉中背、着ている服は、人間が着る法官服に似ている。宮中の法衣貴族か。しかし、よく観察してみるとリズウェルが見たことがない服を男は着ている。何よりも不吉なことに男は、神が召喚する勇者の特徴に似ている。黒髪、黒い眼、そして、ユニークな服。
勇者は10代の子供達が召喚されることが多い。
しかし、この男、どう見てもおっさんである。
男は魔王であるリズウェルを見ても恐怖感を持っているようには見えない。魔王を恐れないということは、この世界の人間ではあるまい。
この男は、別の世界から召喚してしまった人間であることは間違いないのだろう。
「だが、なぜおっさんが召喚されたのだ?」
リズウェルは思わず呟いた。
リズウェルの呟きが聞こえた本条は、
「言いたい放題ですね、美少女ロリ貧乳」
喉元まで出かかったセリフだった。しかし、本条は、先日、内閣府の広報企画官も兼職したことを思い出し、ポリコレ的に言い返すのを我慢した。
魔王リズウェルは、薄汚いおっさんを無価値な家畜を見るような目で一瞥し、そして、小さなため息を吐いた。
神は汚い。
魔王リズウェルの忌むべき怨敵の神々は、人間に神を崇めさせるために、勇者を異世界から呼んで魔王を討伐させる。
リズウェルが魔王をやっているこの世界以外にも、並行世界と呼ばれるいくつかの世界があった。
並行世界の神々同士に交流があるように、リズウェル達、魔王同士にも交流があった。
この数年間に2つの並行世界でリズウェルの友人である魔王達が異世界から召喚された勇者に無惨に殺された。
魔王セグメトンは、愛らしい大型犬の姿をした優しい魔王だった。魔王ベルデガノンは、巨大な赤い龍だった。そして、ベルデガノンは、人型に化身すると、リズウェルにお菓子を持ってきてくれるジェントルマンな魔王だった。リズウェルの侍女にもおやつを持ってくるベルデガノンのことは、お菓子係陛下とリズウェルの侍女達が呼んでいた。
「邪悪な陰険神、この恨み許すまじ」
リズウェルは唇を噛みしめる。
リズウェルの住むこの世界には2つの世界がある。
人間領と魔王領である。人間領を守護するのが神である。一方、魔王領を統治するのが魔王リズウェルなのだ。
魔族と比べれば、人間は弱い。けれど、弱い人間は武器を使う。魔族は強い。そして、人間よりも長く生きる。長生きできる分、新しい魔族は生まれにくい。そして、神と同等の力を持つ魔王は不死であった。
不死ゆえに、勇者に討伐された魔王セグメトンや魔王ベルデガノンも、数千年後には復活するはずである。そう信じたい。
だが、魔王と異なり、弱い魔族は百年、二百年で死ぬ。魔王が復活する前に人間に魔王領そのものを奪われれば、魔族達の住処がなくなってしまうのである。
魔王リズウェルは、魔王セグメトンや魔王ベルデガノンから、もし自分達が勇者に殺されたら、別の異世界から新しい魔王を召喚して、自分達の眷属の魔族を保護して欲しいと頼まれていた。
日増しに激しくなる異世界のチート持ちの転生勇者の侵略行為に、魔王セグメトンや魔王ベルデガノンは死期を悟っていたのかもしれない。
「セグメトンやベルデガノンの代わりになる魔王を異世界から召喚するのじゃ。神どもがチート持ちの勇者を召喚できるなら、我らもチート持ちの魔王を召喚して対抗するのじゃ」
魔王リズウェルの命を受けた魔王お抱えの魔導士達が、魔王召喚の儀式を研究した。万全の研究の後、魔王召喚の儀式が行われたはずであった。
そして、召喚されたのがこのおっさん、本条春陽である。
「役に立ちそうもない。召喚しておいて、殺すのは気の毒じゃ。我ら魔族は神とは違うからの。異世界人の拉致はせぬ。元の世界に送り帰すのじゃ」
リズウェルは、床の転がっている本条に話しかける。
「人間。その方の名前は何というのか?」
返事がない。
「返事をせぬか。殺されたいのか」
本条は、鼾をかいて、寝ていた。熟睡している。本条は、日本で働く官僚である。労働基準法が適用して貰えない数少ない職種である。先月の残業時間は、数百時間、過労死ラインの数倍である。むき出しの冷たい大理石の上でも、横になっていると眠ってしまう。
「おい、お主どうしたのじゃ」
リズウェルが心配そうに、呼びかける。
本条の意識は、薄れていく。
体が温かい。
「目が覚めたか?」
本条の顔を美少女が覗き込む。
本条が、寝ころんでいるのは床ではない。ベッドだ。それも超豪華なベッドである。
本条は、今、目の前で起こっていることを整理する。
自分はきわどい水着の美少女に話しかけられている。
大学時代に塾で教えていた中学生ぐらいの年齢に見える。間違いなく未成年である。
青少年健全育成条例的に、話しかけても、大丈夫な相手だろうか?
童顔の美少女は、露出が多い恰好をしている。痴女か?痴美少女・・・。
塾の講師をやっていた大学時代には、生徒達と数歳しか年齢が離れていなかったので意識をしたことがなかった。しかし、どう考えても、このシチュエーションは犯罪っぽく感じてしまう。
いや、犯罪っぽくではなく、犯罪である。
もし、今起こっていることが夢の中ではなく、日本で起きている事なら本条は社会的に、確実に抹殺される。
美少女の周りには、10人前後のローブを着た、人らしき生き物がいる。ローブで全身を隠し、目だけが赤く光っている。こいつらは人間なのか?
本条は、これが夢か、地球以外のどこか別の世界である可能性にかけることにした。
人間と本条のことを呼んだ美少女が中二病ではないことを祈るしかない。
「私の名前は、本条春陽です。あなたのお名前をお伺いしてもよろしいですか?」
本条は身体を起こす。身体が軽い。久しぶりに熟睡することができた。本条は、仕事柄、年下にも丁寧語で話す。まだ、意識は朦朧としているが、睡眠のおかげで頭はスッキリしている。
ローブ姿の魔導士達を囲むように、人外の生き物がいる。リズウェルと魔導士達を中心にして、ハロウィンのコスプレのような姿の化け物達に本条は囲まれていた。手に持っているのは、剣と斧だろうか。
「余は、魔王リズウェルという」
中二病だろうか、夢だと良いのだが・・・。
最悪、動画配信のドッキリ企画なら拉致監禁の被害者であろう本条は社会的に抹殺されることはない。
「それでは、魔王リズウェル陛下。どうして私がこの世界にいるのかを説明をして貰えますか?」
「うむ・・・」
魔王リズウェルは、言葉に詰まる。なぜ、本条がこの世界にいるのか、魔王リズウェルにもよくわからなかった。
「お主、この状況でよく落ち着いていているな」
リズウェルは、部下に命じる。
「念のため、召魔鏡を持ってまいれ」
ミスリル性の大きな鏡を部下の魔導士が恭しくリズウェルに差し出した。
リズウェルは召魔鏡を本条の前に置いた。
「なんじゃ、この数値は」
思わず、リズウェルは叫び声をあげる。
魔王は人間以外の魔族の最終進化形態である。魔王には、龍族のものもいれば、吸血鬼もいる。リズウェルのように人間と外見がほぼ同じ魔王もいる。
人間以外の存在で、魔力や戦闘力が傑出しているものを魔王と呼ぶのである。
リズウェルが本条を人間と判断したのは、本条から魔力を感じなかったからである。生まれながらに魔力を放出するものが魔族である。この世界では、人間は、神や精霊と契約をして魔法を使う。生まれながらに魔力を持たない知的生命体、それが人間である。
召魔鏡は、召喚した魔王の適正能力を計測する魔道具の試作品である。
リズウェルの魔王適正値は90。エリート魔族である魔導士達は20~30の魔王適正値を持っている。リズウェルの部下達で実験すると幹部クラスの魔族でも。魔王適正値は50だった。
「お主は、本当に人間なのか?」
本条の魔王適正値は300であった。
リズウェルは、人間の能力判定に使う魔水晶も準備させる。
召魔鏡は、伝説の魔道具である。かつて、魔王が絶滅しかけた時に異世界から魔王を召喚した時に作られた魔道具を復元したのだ。
「お主。ちょっと、これに手をかざしてみよ」
本条は、リズウェルに言われたように素直に魔水晶に触れる。魔水晶は、人間世界で冒険者の適職を見つけるために使われているポピュラーな魔道具であった。
「魔力値は低いようじゃな。賢者?」
魔法の素養がある人間は、魔法使いか神官になることができる。魔法は魔族も人間も使える。しかし、神官は神か精霊と契約する必要があるので、魔族は神官になることが出来ない。そして、人間の中でもあらゆる魔法を使う素質を持った賢者が数十万人に一人生まれてくる。
歴史上、人間でも大魔法使いの中には、不死者となって魔王になったものもいる。
そう、魔王になるには、人間を止める必要があるのだ。
だが、本条には賢者の資質があった。賢者は、神聖魔法と魔法の両方を使うことが出来る。人間の中でも特殊な能力の持ち主である。それだけなら、珍しいことではない。
この一千年の間に、数十人の賢者が誕生している。
本条には、高い魔王適正があった。魔王適正値だけなら、大魔王と言える。
「お主には、賢者の適正能力と魔王の適正能力の両方がある・・・。お主は賢者にもなれるが、魔王にもなれるぞ。魔王の適正持ちの人間って、なんか引くのう」
勝手に話を進めていくリズウェルに本条は苦笑する。世の中には、魔王の適性がなければやっていけない職場もあるのだ。本条は、苦笑する。
本作品は、『小説家になろう』、『カクヨム』に同時投稿させていただきます。
『異世界文化汚染を食い止めろ!大精霊は、官僚を転生させて地球人を取り締まる』に引き続き、リアル官僚を転生させてみたシリーズ第2弾です。著者は元官僚。いわゆるキャリア組の官僚です。
絶対にクビにならないはずの公務員をリストラされました。




