表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スキー場でクラスメイトの男の子に声をかけられた  作者: ユタニ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/20

16.がつがつしている自覚はある


帰り道にコンビニで夕食を買い駐車場に車を停めて、小綺麗な七階建てのマンションに着いたのは夕刻だった。


「引っ越してる……」

「そりゃあね。あそこ学生限定だったし」

「なんか高そうだね」

「駅から離れてるからそうでもないよ。会社から住宅補助も出てるし」

エレベーターで四階へと上がる。津山の部屋は403号室だった。


「どうぞ」

「お邪魔します」

玄関を入ると廊下が伸びていた。その右手に浴室と洗面所があり左手にはトイレ。廊下の先は十畳ほどのリビングで、引き戸で区切られた部屋が一部屋。


キッチンは以前の部屋より大きい。リビングにはソファとこたつが置いてあった。


「社会人って感じだね」

「へへ、そう? 荷物はソファに置いていいよ。部屋着取ってくる」

そう言うと津山は引き戸の部屋へと入っていく。そちらが寝室のようだ。ごそごそと引き出しを開ける音がして、しばらくすると上下グレーのスウェットに身を包んだ津山が出てきた。


「渡辺さんも着替えなよ。これ洗ってあるから」

紺色のスウェットが差し出される。


「じゃあ、お借りします」

奈津はスウェットを受け取ると、洗面所で着替えた。

着替えながら彼氏の部屋に来た彼女みたいだと思い、事実その通りなのだと気付く。


(…………うわあ)

奈津は洗面所で一人、赤面した。

リビングへ戻ると津山が嬉しそうに相好を崩す。


「永遠の憧れのシチュエーション。俺の部屋着を着る彼女だね」

「そ、そうなんだ」

津山の視線が熱い。彼女と呼ばれるのも慣れなくて恥ずかしい。

奈津は再び赤面した。


「照れてるの?」

「これは照れるでしょ。み、見すぎだと思うし」

「…………マジかぁ」

「なにが?」

「付き合ったらこんなに可愛くなるんだあ、っていうマジか」

津山は奈津の側まで来ると、しげしげと奈津を見つめてきた。


「あの、じっと見られるのはちょっと恥ずかしいんだけど」

「うん」

頷きながらも津山は熱っぽい目で見てくる。


「なのであんまり見ないでもらえると」

「うん」

頷くだけの津山。視線は変わらない。

落ち着かなくて自分の腕を体に沿わすと、ますます見られた。


「つ、津山くん?」

「うん」

「なんか、がつがつしてない?」

「うん、してる。自覚はある」

「…………」

一歩も引いてくれない津山に奈津は困り顔になった。


「困る渡辺さんが可愛い」

「いや、困ってるからね」

「うん」

「何もしないんだよね?」

「うん?」

「…………」

返事が疑問形だったように思うが、奈津は突っ込まないことにした。


「えーと、ほら、夕ご飯にしよう? お腹空いたし」

困り顔のまま提案すると津山は「あー、可愛い」と言ってからやっと奈津から視線を外してくれた。


「遠慮も我慢もしなくていいんだと思うと、止まらないんだよなあ。嫌な時はちゃんと言ってね、渡辺さん」

「頑張る」

「くっそ可愛い」

「へっ?」

「ごめん。今日は心の声が全部出ると思う。俺、かなり浮かれてるから」

「そ、そっか」

「うん、とりあえず飯にしよう。お湯沸かしてこたつも付けよう」

津山はそう言うと夕食の準備を始めた。


準備といっても本日のメニューは津山はカップラーメンとゆで卵で、奈津はカップ焼きそばとサラダだ。どれもコンビニで買ったもので、だから準備はお湯を沸かすだけである。


「サラダはお皿に取ったりする?」

「いいよ、パックのままで大丈夫」

「ビールならあるけど飲む?」

「じゃあ、もらおうかな」

そんなやり取りをしながらこたつの上に夕食を並べ、向かい合わせでこたつに入った。


「付き合った記念だね、渡辺さん」

ぷしっとビールを開けながら津山が言う。

「そうだね」

はにかみながら同意すると「可愛い」とまた言われた。


「梅酒じゃなくて、ビールになったんだね」

唯一二人で酒を飲んだたこ焼きの時、津山は梅酒を飲んでいた覚えがある。飲み物の違いについて何気なく言うと、津山は苦笑いになった。


「梅酒はあのたこ焼き以来飲んでないんだ。軽いトラウマ」

「えっ…………」

「渡辺さんを傷つけちゃったからね」

「私、津山くんには傷つけられてないよ」

「そう言われるとほっとするけど」

苦笑いのまま津山はビールを飲み、奈津はそれ以上突っ込まずに自分もビールを飲んだ。


カップ麺とゆで卵、焼きそばとサラダをそれぞれ食べ終わると、津山はチョコレートを出してきた。

「食べる?」

「うん」

「コーヒーとかいる?」

「ビールで大丈夫」

「じゃあ食べてて、この辺は捨てとくね」

津山は机の上の空き容器を集めるとキッチンに持っていった。

シンクで容器を洗っているのが見える。ちゃんと洗ってから捨てるようだ。


そして戻ってきた津山は奈津の向かいではなく、隣に座ってきた。

こたつは小さなサイズなので一辺はけっこう狭い。二人で並ぶと足や腰が触れた。


「ち、近くない?」

「んー、そうだね」

するりと腰に津山の手が回される。


「ひゃっ」

びっくりして身を引こうとしたが、ぐっと力を入れて阻まれてしまった。


「津山くん!?」

「いや? くすぐったい?」

「だ、大丈夫だけど、あれ? 何もしないんだよね?」

「渡辺さんの嫌がることは何もしないよ」

「…………」

それはつまり、嫌がらなければ何かするのでは?

(そういう話だったっけ?)


「渡辺さんてこんな感じになるのかあ、隙だらけじゃん。あ~、可愛い。ちゃんと嫌がるんだよ」

腰にある手とは別の手が肩に回り抱き寄せられる。距離が近い。


「チョコ、まだ食べる?」

「……食べる」

食べると言えば引いてくれるかもと思って奈津はそう答えてみた。

津山に触れられるのは嫌ではないが、とにかく恥ずかしい。


でも津山は全く引かないまま、チョコを一粒つまむと奈津の口に押し付けてきた。反射的に口をあけると甘い粒が津山の指とともに入ってくる。

奈津の体温で溶けたチョコが津山の指につき、津山はその指で奈津の唇をなぞった。


「甘い?」

「…………」

囁くように聞いてきたのは、チョコのことだろうか。それとも指のことだろうか。


(うわあ、なにこれ)

正直、奈津はもうチョコの味なんて分からなくなっていた。顔から火が出そうだ。

真っ赤な奈津に津山はちゅっとキスをしてきた。


「チョコ味の渡辺さん」

「…………」

「キスはいや?」

「いやじゃ、ないけど」

「本格的なのはまだ怖い?」

「う、うん」

「じゃあ、少しずつにしようか」

「え」

いつの間にか奈津の後頭部に津山の手が回っていて、頭が固定されると津山はもう一度キスをしてきた。


角度を変えてじわじわとキスが続き、奈津はとろんとしてきた。


「津山くん、なんか」

「ん、大丈夫だからね」

津山はそう言ってキスを続け、なし崩しで奈津を再び手に入れた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ