第三十九話
夜空が裂けるように光が走り、村全体を白く染めた。
ルシアは胸元の光を抱え、足を踏み出すたび胸の奥の痛みが鋭く走る。
光は手の中で暴れるように震え、守るべきものの重みを全身に伝える。
神界――アウレアの圧力は限界を超え、二人の前に形ある干渉となって立ちはだかった。
「……ルシア、これが……神界の本気だ」
隣のミカが小さく、しかし強く声を出す。
肩までの茶色い髪が光に揺れ、瞳には恐怖と決意が混ざる。
小さな手は光には触れず、ただ守るように前に出す。
ルシアは胸元の光を握り直す。
痛みが胸を焼き、息を詰まらせる。
手を離せば光は消え、世界を守れない。全身で重さと責任を受け止め、踏み出す。
川向こうのヴァルの影は静かに二人を見守る。
声はなくとも、存在感が圧力の中で際立つ。
黒い影は意思を持ち、二人に襲いかかる。
光だけでは押し返せず、二人は初めて光と祈りの力だけでは限界があることを理解する。
ルシアは深く息を吸い、胸の光に自らの意志と覚悟を注ぐ。
ミカも同時に前に出て、二人の意志をひとつにする。
「……私たちの絆が、世界を変えるんだ!」
二人の声が重なり、光は胸の中で炸裂する。
黒い影は揺らぎ、形を崩し始める。
木々の影が揺れ、小鳥が飛び立ち、川面が光を反射する。
――光と祈り、そして二人の絆が神界の干渉を押し返した瞬間だった。
しかし影は完全に消えず、揺らめきながら再び襲いかかろうとしている。
光だけでは勝てない、二人にとって最後の試練が目の前に迫っていた。
ルシアとミカは互いに視線を交わし、胸の奥で痛みと覚悟を絡ませながら次の手を決める。
光と祈りの力の真の秘密――二人の絆があって初めて完成する力――が、ついに明かされようとしていた。




