第三十六話
空は漆黒に染まり、村全体が静寂に包まれる。
ルシアは胸元の光を抱え、石畳を踏みしめるたびに胸の痛みを感じる。
光は手の中で激しく震え、守るべきものの重みを訴える。
神界――アウレアの圧力が極限まで高まり、世界が二人を試すように揺れていた。
「……ルシア、これ以上は光だけじゃ無理かもしれない」
ミカが隣で声を震わせる。
肩までの茶色い髪が夜闇に溶け、瞳には覚悟と不安が混ざる。
小さな手は光に触れず、ただ守るように前に出していた。
ルシアは胸元の光を握り直す。
握れば痛みが胸を焼く。手を離せば光は消える。
全身で重さと責任を受け止めながら、踏み出す。
川向こうにヴァルの影が立ち、動かず二人を見守る。
声はなくとも、圧力の中で冷静な存在感が際立つ。
黒い影は形を持ち、意志を持ち、二人に迫る。
光だけでは押し返せず、揺らめく黒は迫力を増していた。
ルシアは目を閉じ、胸の光に意志を込める。
痛みを受け入れ、覚悟を光に注ぐ。
ミカも同時に前に出て、二人の意志をひとつにする。
「……私たちの絆が、光の力を超えるんだ!」
二人の声が重なり、光は胸の中で炸裂する。
黒い影は揺らぎ、形を崩し始める。
木々の影が揺れ、小鳥が飛び立ち、川面に光が反射する。
――光と祈りの力、そして二人の絆が、世界を変える真の力を示した瞬間だった。
ヴァルは影のまま、一歩も動かず、二人の力を静かに評価する。
光は揺らめきながらも、世界に確かな変化をもたらした。
ルシアとミカは互いに視線を交わし、胸の奥で痛みと覚悟を絡ませながら次の行動を決める。
光と祈りの力の核心――それは二人の絆と信念によって完成することを、二人は理解した。




