第三十四話
夜の帳が村を覆い、空は深い紺色に沈む。
ルシアは胸元の光を抱え、石畳の道を慎重に進む。
光は手の中で激しく震え、守るべきものの重みを伝える。
空気には神界――アウレアの圧力が濃く漂い、世界が微かに歪むのを感じさせた。
「……ルシア、これが本当の試練ね」
隣のミカが小さくつぶやく。
肩までの茶色い髪が月光に揺れ、瞳には覚悟と緊張が混ざる。
小さな手は光に触れず、守るように前に出している。
ルシアは胸元の光を握り直す。
握れば胸が焼けるように痛む。手を離せば光は消える。
全身で重さと責任を受け止めながら、一歩一歩踏み出す。
川向こうにヴァルの影。
動かず距離を保ち、視線だけで二人を見守る。
声はないが、その存在感だけで空気を張りつめさせる。
光が手の中でさらに強く震える。
――神界の干渉が、二人の限界を試すかのように強まったのだ。
冷たく理屈のない力が、世界の端から押し付ける。
ルシアは息を整え、光を胸に抱えたまま前に踏み出す。
胸の奥で痛みが走るが、それでも守る。手を離せない。
ミカも一歩前に出る。
触れず、視線で光を追う。
恐怖はない。信頼と共感が瞳に宿る。
「……私も、絶対一緒よ!」
小さく、しかし力強い声。
ルシアは振り返らずうなずく。
二人の決意が光に融合し、世界に伝わる。
光が胸で爆発するかのように輝き、黒い影を押し返す。
木々の影は揺れ、小鳥が一斉に飛び立ち、川面が光を反射する。
――光と祈りの力が現実を変え、初めて神界の干渉を押し返した瞬間だった。
しかし、遠くの空に新たな影が立ち上がる。
今度は形を持ち、圧力だけでなく意志を伴って二人に迫る。
光だけではまだ十分ではない、次の試練が訪れようとしていた。
ルシアとミカは互いに視線を交わし、胸の奥で痛みと覚悟を絡ませながら次の行動を決める。
光と祈りの力が、世界を変える鍵であることを、二人は確信していた。




