第三十三話
黒い影は村の端から迫り、光の中で揺らめくルシアとミカを包み込もうとしていた。
風は止まり、空気が重く圧迫する。神界――アウレアの干渉が、初めて形を伴って二人に迫る瞬間だった。
「……来た……!」
ルシアは胸元の光を強く握り、痛みを押し込める。
光は手の中で熱を帯び、強く震え、闇に抗う力を示す。
ミカはすぐ隣に立ち、視線を光に集中させる。
小さな手は光には触れない。けれど守る意志は、全身から伝わる。
「私たち、負けない……!」
声に力が宿り、光は一層輝きを増す。
黒い影は動きを止めず、二人に迫る。
冷たく理屈のない力が、まるで世界を覆うかのように押し寄せてくる。
ルシアは息を整え、光を胸に抱えたまま前に踏み出す。
痛みが胸に走るが、それでも手を離さない。
光は胸の奥で脈打ち、二人の決意を世界に伝える。
ミカも一歩前に出る。
恐怖はない。信頼と共感が瞳に宿る。
「……私も、絶対一緒だ!」
小さく、しかし力強い声。
ルシアはうなずき、二人の意志は光に融合する。
光が爆発するかのように胸で輝き、黒い影を押し返す。
木々の影は揺れ、小鳥が一斉に飛び立ち、川面が光を反射する。
――光の力が現実に届き、初めて神界の干渉を阻むことに成功した瞬間だった。
ヴァルは影のまま距離を保ち、二人の行動を冷静に観察する。
目に見える危機が去った後も、その存在感は村を静かに引き締める。
ルシアとミカは互いに視線を交わし、胸の奥で痛みと覚悟を絡ませながら、次の行動を確認する。
光と祈りの力が世界を変える確かな証となった瞬間だった。




