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第二十三話

 朝焼けの光が村を淡く染める。

 ルシアは胸元の光を抱え、石畳の道を慎重に進む。

 光は手の中で微かに震え、守るべき存在の重みを伝える。

 風は穏やかだが、空気の奥には神界――アウレアの圧が漂っている。

 「……ルシア、ここからが本番だね」

 ミカが隣でつぶやく。

 肩までの茶色い髪が朝日に光り、瞳には決意と覚悟が混ざる。

 小さな手を前に出すが、光に触れず、守るように構えている。

 ルシアは胸元の光を握り直す。

 握れば痛みが胸を焼く。手を離せば光は消えてしまう。

 全身に重さと責任を受け止めながら、一歩一歩を踏み出す。

 川向こうにヴァルの影。

 動かず、距離を保ち、視線だけで二人を見守る。

 声はないが、存在感だけで緊張が生まれる。

 光が手の中で激しく震える。

 ――神界の干渉が、二人の限界を試すかのように強まったのだ。

 冷たく理屈のない力が世界の端から押し付ける。

 ルシアは息を整え、光を胸に抱え、踏み出す。

 胸の奥で痛みが走るが、それでも守る。手を離せない。

 ミカは一歩前に出る。

 触れず、視線で光を追う。

 恐怖はない。信頼と共感が瞳に宿る。

 「……私も、絶対一緒に」

 小さく力強い声。

 ルシアは振り返らずうなずく。

 二人の決意が光を通して世界に伝わる。

 光が胸でさらに輝きを増すと、村全体に淡い光が広がった。

 木々や石畳が柔らかく照らされ、遠くの家々も微かに揺れる。

 小鳥が飛び立ち、川面が光を反射する。

 ――光の力が、現実に届いた瞬間だった。

 ヴァルは影のまま、一歩も動かず見守る。

 距離と視線だけで二人の行動を確認し、世界の変化を観察する。

 ルシアとミカは歩みを止めず、胸の奥で痛みと覚悟を絡ませながら進む。

 今日、ここから、光と祈りの力が世界を少しずつ変えていくのを感じた。

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