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第二十話

 夜が訪れ、村は静まり返った。

 しかし、胸元の光を抱えたルシアが歩くたび、草木や小川が微かに揺れ、空気が光を帯びている。

 神界――アウレアの圧力が、夜の闇の中でも確かに感じられた。

 「……ルシア、気をつけて」

 ミカが隣で声をかける。

 肩までの茶色い髪が月光に光り、瞳は光に映る。

 小さな手は前に出すが、触れることはせず、守る覚悟を示す。

 ルシアは胸元の光を握り直す。

 手を緩めれば消えてしまう。握れば痛みが胸を焼く。

 重さと責任を全身で受け止めながら、前に進む。

 川向こうにヴァルの影。

 距離を保ち、視線だけで二人を見守る。

 声はないが、存在感だけで緊張が生まれる。

 光が手の中で強く震えた。

 ――神界の干渉が、限界を試すように強まったのだ。

 冷たく理屈のない力が、世界の端から押し付ける。

 ルシアは息を整え、光を胸に抱え、踏み出す。

 胸の奥で痛みが走る。

 それでも守る。手を離すわけにはいかない。

 ミカは一歩前に出る。

 触れず、視線で光を追う。

 恐怖はない。共感と信頼が瞳に宿る。

 「……一緒に、頑張ろう」

 短く力強い声。

 ルシアは振り返らずうなずく。

 二人の決意が光を通して世界に伝わる。

 光が胸でさらに輝き、村全体に淡い光が広がる。

 木々や石畳が柔らかく照らされ、遠くの家々も微かに揺れる。

 ――光の力が現実に届いた瞬間だ。

 ヴァルは影のまま、一歩も動かず見守る。

 距離と視線だけで二人の行動を確認する。

 世界はまだ途中で止まったままだが、少しずつ前に動き始めている。

 ルシアとミカは歩みを止めず、胸の奥で痛みと覚悟を絡ませながら進む。

 今日、ここから、光と祈りの力が世界を少しずつ変えていく。

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