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第十八話

 村の外れ、古びた石橋の上。

 ルシアは胸元の光を抱え、川のせせらぎを聞きながら歩いていた。

 光は手の中で微かに震え、守るべき存在の重みを伝えてくる。

 風は穏やかだが、空気には神界――アウレアの圧が潜んでいる。

 「……ルシア、見て」

 ミカが指差す先に、橋の下で水面が淡く輝く。

 光が触れるわずかな範囲で、水や草木が微かに反応している。

 小さな葉が風もなく揺れ、水面が淡く波打つ。

 ルシアは胸元の光を抱き直す。

 握れば痛みが胸に走る。手を離せば光は消える。

 重さと責任を全身で受け止めながら、前に進む。

 ヴァルは川向こうに影のように立つ。

 声はなく、視線だけで二人を追う。

 存在感だけで、空気を締めつけるようだ。

 突然、光が手の中で強く震えた。

 ――神界の干渉だ。

 冷たく、理屈のない力が世界の端から押し付ける。

 ルシアは呼吸を整え、光を胸に抱えたまま踏み出す。

 胸の奥で痛みが走る。

 それでも、守る。手を離せない。

 ミカは一歩前に出て、視線で光を追う。

 恐怖はない。純粋な共感と信頼が瞳に宿る。

 「……私も一緒にいる」

 小さな声。だが、力強さがある。

 ルシアは振り返らずうなずく。

 二人の決意が光を通して世界に伝わる。

 光が胸の中で強く輝き、橋と川沿いに淡い光を投げかける。

 小鳥が飛び立ち、草木が揺れ、村の遠くでも微かな変化が見える。

 ――光の力が、現実に届いた瞬間だ。

 ヴァルは影のまま、一歩も動かず見守る。

 距離と視線だけで二人の行動を確認し、世界の変化を観察する。

 ルシアとミカは歩みを止めず、胸の奥で痛みと覚悟を絡ませながら進む。

 今日、ここから、光と祈りの力が世界を少しずつ変え始めるのを感じた。

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