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第十七話

 夕暮れの光が広場を赤く染める。

 ルシアは胸元の光を抱え、川沿いの小道を慎重に進む。

 風は穏やかだが、空気の端に微かにざわつきがある。

 神界――アウレアの圧が、現実に干渉しているのを感じる。

 「……ルシア、大丈夫?」

 ミカが小さな声でつぶやく。

 肩までの茶色い髪が夕日に光り、瞳は光に映る。

 小さな手を少し前に出すが、触れることはせず、ただ見守る。

 恐怖と覚悟が混ざった複雑な表情。

 ルシアは微かにうなずく。

 胸の奥で痛みと覚悟が絡み合う。

 光は手の中で微かに震え、守らなければ消えてしまう。

 握れば痛みが走る。手を離すことはできない。

 川向こうにヴァルの影。

 動かず、距離を保ちながら二人を見守る。

 声はないが、存在感だけで緊張が生まれる。

 光が手の中で激しく震えた。

 ――神界の圧力が限界を試すように強まったのだ。

 冷たく理屈のない力が、世界の端から押し付ける。

 ルシアは息を整え、光を胸に抱え、踏み出す。

 痛みが胸を焼き、全身に力が走る。

 それでも守る。手を離せない。

 ミカは一歩前に出る。

 触れず、視線で光を追うだけ。

 恐怖はない。共感と信頼が瞳に宿る。

 「……一緒に、頑張ろう」

 小さく、力強い声。

 ルシアは振り返らずうなずく。

 二人の決意が光を通して世界に伝わる。

 光が胸で輝きを増すと、広場全体に淡い光が広がった。

 木々や石畳が柔らかく照らされ、小鳥が飛び立ち、葉がわずかに揺れる。

 ――光の力が現実に影響を及ぼした瞬間だった。

 ヴァルは影のまま、一歩も動かず見守る。

 距離と視線だけで二人の行動を確認する。

 世界はまだ途中で止まったままだが、少しずつ前に動き始めている。

 ルシアとミカは歩みを止めない。

 胸の奥で痛みと覚悟が絡み合い、互いの存在を確かめながら進む。

 今日、ここから、光と祈りの力が世界を少しずつ変えていく。

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