表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/25

第十一話

 朝焼けの光が川面を赤く染める。

 ルシアは胸元の光を抱え、歩幅を揃えて進んでいた。

 昨日までの静けさは消え、世界の端から微かな圧が押し寄せる。

 それは、神界――アウレアの存在を感じさせる冷たく理屈のない力だった。

 「……ルシア、気をつけて」

 隣に立つミカが声をかける。

 肩までの茶色い髪が朝の光で揺れ、瞳が真剣に光を追う。

 小さな手は少し前に出すが、触れずに守る覚悟を示している。

 ルシアは黙ったままうなずく。

 胸の奥に、痛みと覚悟が絡み合う。

 光は手の中で小さく震える。

 触れれば温かく、守らなければ消えてしまう。

 重さと責任が、今の彼女を支配していた。

 川向こうに、ヴァルの影。

 姿勢を崩さず、視線だけで二人を追う。

 声はない。存在感だけで、空気を張りつめさせる。

 光が突然、手の中で強く震えた。

 ――神界の圧が直接届いたのだ。

 冷たく、理屈のない力が世界の端から押し付ける。

 ルシアは呼吸を整える。

 手を閉じ、光を抱え続ける。

 痛みが走る。胸の奥が燃えるように熱くなる。

 けれど、守る。手を離すことはできない。

 ミカは一歩近づく。

 触れない。視線で光を見守るだけ。

 恐怖はない。純粋な共感だけがそこにある。

 「……本当に、強いんだね」

 短く、震えのない声。

 光とルシアの強さをそのまま認めた言葉だった。

 ルシアは答えず、胸の奥の痛みを感じながら歩き続ける。

 川面に映る朝の光が二人の影を長く引き伸ばす。

 静かな川沿いで、初めて二人だけのリズムが生まれる。

 一歩一歩が、世界に小さな波紋を広げていく。

 ――今日、ここから、光と祈りの力が少しずつ世界を変えていく。

 胸の奥で、痛みと覚悟が絡み合い、確かな手応えがあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ