009
境鳥村立中学および小学校
野咲ミク 中学担任
相原リョウコ 小学担任
霧山ユリ 中2
藤アラシ 中2
藤タイスケ 中2
星ホクト 中1
霧山アン 小6
藤サクラ 小5
星ミナミ 小4
天城マヤ 小2
射手ヒロ 小1
4月25日金曜日
「明日からゴールデンウィークになる世界線があるらしい。」
学活にて担任野咲ミクが何やらほざいた。
ホクト以外の生徒達は揃いぐったりと心底うんざりしている。
「今年は28日、30日、1日、2日と4日間の平日がある。」
「風邪を引いて休む予定の者は挙手。」
この教師はさっきから何をぬかしているのだろう?と戸惑うのだが
霧山ユリ、藤アラシ、藤ダイスケがゆっくりと手を上げた。
「ホクトは?」
「え?え?風邪?今のところその予定は」
「ミナミは風邪になるらしいぞ。」
「先生っ他は?」
霧山ユリが尋ねると
「アンは休み。サクラ、マヤとヒロは来るって。」
「は?アンも休み?あいつ手伝いしませんよ。」
「お前の家の事情は知らんよ。」
なるほどゴールデンウィーク中は忙しくなるから学校休まされるのか。
「そんなわけで明日から風邪引くから部活も休みね。」
「え?ああはい。」
4月26日土曜日
ホクトは朝早くに起きて、今までは祖母がしていた店の前の掃除を代わり、
朝食後には割烹着に着替えマスクと三角巾も装備し厨房に入った。
今までは前日に翌日の仕込みの補助だったので
本格的な饅頭の制作工程を見たいと申し出た。
「普通は着替える前に聞くだろ。」
祖父が呆れると
「着替えるまで始めるの待ってて言うのは違うかなって。」
ホクトの答えにさらに呆れたので
「忙しくなるのは判っているから隅っこで見学だけでも」
「判った。しばらくは見ていろ。いよいよ忙しくなったら使うぞ。」
ホクトは黙って頷く。
「基本の八手饅頭と今は季節限定のうぐいす餡。」
「ホクト、うぐいす餡の材料は知っているか?」
「豆?」
「よく知ってるな。」
「前に食べた時に豆の皮があったから。でも種類とかは知らない。」
「青えんどうだ。北海道から仕入れている。」
祖父星タツゴロウは少し嬉しそうに鍋の前に立ち
「最近ようやく気に入った豆が入るようになった。」
旬がどうのとぶつぶつ言い出し
「砂糖も北海道産のてんさい糖で」
「小麦と卵は地元産で」
要は「こだわっている」と言いたいのだな思うことにした。
祖母が合流し作業が進むのを見て、
饅頭製作の全工程を祖父1人で行っているのだと気付く。
祖母は焼き上がった饅頭を包装し箱詰めをする。
午前9時になると祖母がそれを車に積み込む。
ホクトがその積み込みを手伝いながら尋ねると
「霧山さんと天城さんとこに置かせてもらっている分。」
チェックアウトのお客さんがお土産として手に取れるように。らしい。
配達の間、祖父は店頭販売用の饅頭を作るのだが1時間ほどて終わる。
ホクトは祖父から「包装してみろ」と言われ
祖父から手解きを受けていると祖母も戻り3人で作業をする。
それも1時間ほどで終わり厨房の清掃。
12時に昼食、13時に開店。
「昔は10時に開けていたけど客が来ない。」
「その頃は5時前に起きて準備していた。」
採算やら廃棄やらいろいろと言いだしたが殆ど判らない。
午後から品出しを手伝い一日を終える。
4月27日日曜日
昨日同様早起きして厨房に向かう。
すれ違いに妹のミナミが朝食へ。
挨拶を試みるが言葉を発する前にミナミは通り過ぎる。
がっくりと肩を落とすものの
厨房のドアの前で顔を上げる。
中では既に祖父が作業を始めている。
「お前は出掛けないのか?」
「特に用はないから。」
「友達は、と言っても皆忙しいだろうな。」
4月28日月曜日
登校したものの教室には1人。
元々自習なので特に困ることはないだろう。
しかし始業時間になっても担任が現れない。
休みか?実は休みなのか?学級閉鎖なのか?
5分ほど過ぎてようやく担任野咲ミクが現れ
「すまんホクト。ゴールデンウィーク中は隣だ。」
「となり?」
「人数少ないから小学生達と一緒に頼む。」
出たな担任のウッカリ。
「授業時間違いません?」
「よく知っているな。小学生に合わせる。」
カバンを持って小学生教室に入ると
藤兄弟の妹、藤サクラ。
ホテル・シエルシャトーのラ・ブーランシェル天城マヤ。
テングランドのホール見習い射手ヒロ。
小学生担任相原リョウコ。
「席はそこな。」
三人の小学生が横並びになり
その前に一つ用意されている席。
その正面に何故か相原リョウコが椅子だけ持って座る。
「よろしくねホクト君。」
ホクトの隣に野咲ミクが座るが
彼女は小学生達に向かっている。
「今日は担任変わるけどまあ気にするな。どうせ自習だ。」