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007

境鳥村立中学および小学校

野咲ミク 中学担任

相原リョウコ 小学担任

霧山ユリ 中2

藤アラシ 中2

藤タイスケ 中2

星ホクト 中1

霧山アン 小6

藤サクラ 小5

星ミナミ 小4

天城マヤ 小2

射手ヒロ 小1


センターラインのある片側一車線の道路の片側には歩道が整備されているが

それはダムの駐車場までであり、

昨夜ホクトが移動させたバリケードから先は歩道がなくなる。

ダムまでのその歩道は谷側にあり、見下ろすと川が流れている。

「今日はまだ普通の土曜だから人はいないけど」

「ゴールデンウィークに入ったらそれなりに混む。」

「紅葉の時期もね。」

温泉街の旅館やホテルの宿泊客の観光先だと言った。

「他に名物もないから。いやだからこそ天文台開放すればいいのに。」

渓谷、と言うのだろうか。

新緑の隙間から川を眺め、車が通らなければその水の音も届く。

温泉街からダムまでは徒歩で1時間もかからないので

なるほど確かに観光のお勧めになる。

ダム施設の駐車場に到着。

「ここが八手ヤツデダム。まず管理棟に行きましょう。」

管理棟の一階は施設の案内に使われている。

周辺地形とダムの模型。ダムの役割や利用目的がパネル展示されているが

「この上、展望室になっているから直接見て。」

霧山ユリは展望室までの階段を登りながら説明する。

「元々は八手湖ってのがあってね。」

「天狗の持っているウチワみたいのあるでしょ。あれをヤツデって言うの。」

「湖の形がそのヤツデに似ているから八手湖。」

展望室は四面の壁に窓があり、その下にはそこから見える景色の地名が記されている。

霧山ユリは湖を指差し

「ここからだと八つも手があるようには見えないけど」

確かに入り組んではいるが八本もあるようにも、もっとあるようにも見える。

「境鳥って地名もここが由来と言われている。」

由来?調べたけど判らなかったような事を言っていたような。

それで霧山ユリが何やら設定を語っていたような?

「境鳥って天狗の別称、なんだけど」

「けど?」

「テングの持っているのは実はテングの羽で」

「それが植物のヤツデに似ているって後出しでヤツデって呼ばれているの。」

「おかしな話しですね。」

ホクトの率直な感想。

「それだと境鳥って地名が先で八手湖って名前が後のように聞こえます。」

「え?」

「え?」

そしてホクトは八手湖をを眺めながら呟く。

「この湖、景色?前にも見たような。」

2人はダムの天端(てんば)を歩く。

霧山ユリはその先にある公園内の東屋を指差し

「あそこでお昼にしましょう。」

ホクトは天端の中央で立ち止まり、八手湖を見る。

間違いない。僕はここに来た。



小学3年生(ホクトはそれを覚えてはいない)。

季節は多分夏。場所は「湯の星」。

2階の住居には祖母と母と妹がいる。。

ホクトは1階に降りる。

開店準備をしている祖父がいる。

「出掛けるのか?湖か?」

ホクトは頷く。

「ちよっと待ってろ。」

祖父はホクトの前から消え、すぐに戻り水筒を渡す。

「天狗さんに会ったら挨拶しろ。」

ホクトは頷き外へ。

強い日差し。蝉の声。

渓谷を眺めながらとぼとぼと歩き八手ダムへ到着。

駐車場には数台の車とバイク。

ホクトと同じくらいの歳の子を連れた家族。

年配の男女。1人旅らしい男性。

ホクトは管理棟に入り展望室へ。

しばらく八手湖を眺めて、それからダムの天端へ。

その中央付近に1人の少女。

八手湖を眺めている。いや見ている。

少し年上だろうかホクトより背か高い。

肩までの黒髪が湖からの風でなびく。

「天狗様?」

殆ど無意識にホクトは呟いていた。

少女は一度ホクトとは逆を向いて誰もいないのを確認してから

「せめて妖精とか言え。」

「妖精と呼べと要請?」

「何だ君は。」

「星ホクトです。母の実家に遊びに」

「星?湯の星の星さん?」

「そうです。」

「私はユリ。霧山ユリ。」


ホクトはユリの隣に立ち湖を眺めながら

祖父から聞いた湖の「伝説」をそのまま離した。

「遠い昔、はるかかなたの銀河系で」

「おいやめろ。」

「え?でも祖父が」

「そうなの?まあいいか。続けて。」

「巨大な、犬に似た獣が」

「え?なに?ちょっと急過ぎない?」

巨大な、犬に似た獣がいて、それが地球に落ちた。

直後巨人が現れ獣を退治しようとするが

鋼のような体毛にどんな攻撃も効かなかった。

そこで巨人は大量の酒を用意し獣を酔わせ

大きな穴を振りそこに埋めた。

巨人は指を二本ちぎって

「ぐろいっ。」

ちぎって山に落とすと人の形となり、木々の間を飛ぶようになった。

巨人はその者たちに

「空から現れた獣を見張る者」として天狗番と呼び、

それがいつからかその者達が天狗と呼ばれるようになり、

この湖を天狗の持つヤツデから八手湖となり、

「このあたりを境鳥と呼ぶようになったとさ。」

「巨人は?指を二本失った巨人はどうなった。」

「帰ったのでは?M78、正確には87星雲に。デアーって。」

「セブンか?今帰ったのはセブンなのか?」



「あの時の天狗様?」

霧山ユリはホクト頭にチョップ。

「全て思い出したようね。」

「今ので忘れたかも。」

それでもホクトはあの日の空の色と雲の形と

風に揺れる湖面と、なびく黒髪を思い出した。


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