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004

境鳥村立中学および小学校

野咲ミク 中学担任

相原リョウコ 小学担任

霧山ユリ 中2

藤アラシ 中2

藤タイスケ 中2

星ホクト 中1

霧山アン 小6

藤サクラ 小5

星ミナミ 小4

天城マヤ 小2

射手ヒロ 小1


星ホクトは祖父母の営む饅頭屋「湯の星」で店番。

霧山ユリは旅館「霧山荘」にて女将修行。

藤兄アラシは「ホテル大太楼(ダイタロウ)」にて、

藤弟ダイスケは「霧山荘」厨房でアルバイト。

教師は「手伝い」「社会勉強」として黙認。

なので通常授業が始まっても部活動は休憩時間か給食時間のみとなる。

「怪獣対策(本)部」は承認され活動予算の申請も通ったものの

部活動と呼べる活動は数日行われなかった。

少なくとも、星ホクトは部活動をした覚えはない。

いや、していたのかも知れない。

それどころではない。

中学2年生が3人、1年生が1人の教室での授業とは

「自習」

渡された問題集を自力で解く。

担任野咲ミクはいるが

「質問があったら呼べ。」とだけ言って自分の作業をしている。

ホクト以外はずっとそうしているので「いつもの事」だろうが

「登校する必要ありますか?」

「給食はどうする。あの美味しい給食がなくてもいいのか?」」

担任が必死に言うだけあって確かに給食は美味しい。

「給食だけ食べに来る。」

「まあそれでもいいな。」

何よりホクトを困らせたのは猫の存在だった。

どうにか自分を納得させて問題集を開くと

突然その上に真っ黒な毛の塊が現れた。

「せっ先生っ。」

「なんだどうした。」

「猫がいます。」

「おう。いるな。それで?」

「どうして教室に猫が?」

隣の霧山ユリが立ち上がり

「この子はミクラス。」

黒猫を抱き上げ床に下ろす。が、すぐにホクトの机に飛び乗る。

担任野咲ミクはそれを見て

「気に入られたな。まあどうにか工夫して勉強してくれ。」

霧山ユリはホクトの机の上の黒猫ミクラスを撫でながら

「あと二体いるから。」


土曜日、朝10時。

霧山荘駐車場に一台の軽バンが止まる。

後部座席から降りた星ホクトは霧山荘従業員玄関に向かう。

ドアを開けようとしたところで中からそのドアが開き霧山ユリが飛び出す。

顔を見合わせて驚き

「ああ、ごめんなさい。待った?」

「え?いいえ今着いてちょうど開けようとし。」

「そうなの、じゃあ行きましょう。すぐバスが来るから。」

「あ、いやそれが。」

金曜日の放課後、帰宅の準備をしているホクトの前に

「明日10時に家に、旅館に来て。」

「頼代市の神社前公園までのバス代調べて用意して。」

「部活動だから部費からね。」

霧山ユリはホクトに口を挟む余地を与えなようにしたのか

早口で捲し立ててとっとと帰宅した。

帰宅したホクトは祖母に

「明日ヨリシロ市の神社公園前に行くことになった」と伝える。

部活動で何時に戻れるか判らないが店の手伝いは戻り次第する。

祖母星ノリコは少し考え「バス代は調べておきなさい」とだけ言った。

当日、ホクトが出かけようとしていると

祖母が「送っていく」と言い出して車に乗り込んだ。

「ちょうど出掛ける用事があってね。」

「帰りは何時になるか判らないから自分達で帰りなさい。」

乗り込んだ霧山ユリが礼を言うと

「浮いたバス代で食事ができるでしょう」と笑った。

ホクトが「他の2人は何処で待ち合わせですか?」と尋ねるが

霧山ユリは

「いないよ。私とホクト君2人で行く。」


山を下り、大きな川にかかる橋を渡り

「この先に駅があってそこからバスが出ている。」

祖母がそう言いながら頼代市内を通り抜けると上り坂になる。

なだらかではあるが山道を登ってほどなく公園に到着。

公園の中に神社まで続く階段ある。

目的地は神社ではない。

それとは別に、山に沿って通る道。

一般車両の通行は出来ないが徒歩では歩ける。

「初詣で歩いたから大丈夫。」

その道の途中、霧山ユリが足を止め指差す。

正面に見える山に境鳥村境鳥温泉がある。

「私達の家のあるあの山、横向山って言うの。」

「ヨコムキ?」

「誰かが横を向いているように見える?」

ホクトはじっと山を見るがただの山にしか見えない。

中腹に自分達の住む温泉街が見える。山頂付近に木々はなく岩山になっている。

「仰向けで寝ている人の顔に見えなくもないこともないような?」

あそこが額で、鼻で、顎で、とこじつけようとすればできる。

「それなら仰向け山になるじゃない。」

「それはどうかと。」

「横向山の由来を調べようとしたけど文献が見付からないの。」

図書室の郷土資料にもwikiにも載っていない。

「ホクト君は妄想って言うけど」

「いやそれは自分で」

「何かが横向きに埋められたから横向山って呼ばれるようになった。とは思わない?」


その後2人は神社で参拝し、階段をくだって公園まで降り、

バスは使わず歩いて市内へと戻る。

商店街を散策しつつ昼食へ。

町中華、定食屋、蕎麦屋を通り過ぎ入ったのは小さな喫茶店。

「もう一週間ね。慣れた?」

「問題集だけなのは驚きました。」

「学校もそうたげど周囲に何もなくて面白くないでしょ。」

「元々出掛けたりしなかったので。」

「違うでしょ。」

「はい?」

「私が聞きたいのは都会自慢なんだけど。」

「で、それを聞いて都会自慢うぜぇってうんざりしたいの。」

ホクトは戸惑いながらも

「あー、この辺りにはスタバありますか?」

「そう、そういうの。勿論ない。車で30分くらいかかる。しかもホムセンの敷地内。」

「ホームセンター?ハンズですか?」

「いいやカインズだ。」

「マクドナルドの斜向かいにケンタッキーはありますか?。」

「エジプトか?お前はエジプトにいたのか?ちょっと遠すぎてうんざりできない。」


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