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境鳥村立中学および小学校
野咲ミク 中学担任
相原リョウコ 小学担任
霧山ユリ 中2
藤アラシ 中2
藤タイスケ 中2
星ホクト 中1
霧山アン 小6
藤サクラ 小5
星ミナミ 小4
天城マヤ 小2
射手ヒロ 小1
「本日から職場体験でお世話になる霧山ユリです。よろしくお願いします。」
「かましたったぜ。と思っていると」
「はい。姫から聞いています。よろしくお願いします。」
「なんとっ。この神社にはお姫様がいるのかよっ。」
「一緒に歩いて社務所に案内されると中に巫女姿の女性。」
「すらりと背が高く、長い黒髪を後ろで束ね」
「あれ?姫は?の声に振り替えるとまぁ美しい。」
「さっき拝殿に行ったよ。」
「この人も娘さんじゃあないのか。しかし挨拶はかまさんといかんな」
「私はもう一度職場体験でーと挨拶すると」
「おう。よろしく。なんだよ格好いいなおい。」
「二人に連れられ拝殿に行くと」
「中から現れたのはこの世の者とは思えぬ美少女。」
「熊の娘とは思えない。突然変異か?それとも母親似なだけか?」
「おっとりしているようで威厳があって」
「それでいてお茶目でかわいらしい神巫女さん。」
「天国か?ここ桃源郷なのか?」
「こうして私はハーレムで3日間」
「巫女見習いとして職場体験に励みました。」
「終われ?」
全員が戸惑う。。
藤アラシ藤ダイスケの報告にも相当の突っ込みがあったが
霧山ユリの報告は常軌を逸している。
「巫女さんたちの報告ではなく職場体験の報告をしなさい。」
「掃除してお守り売ってあとは楽しくお茶してた。」
いろいろと小学生の教育には不適切なのでは?
「アラダイが「巫女さんうっひょう」とか吠えていたら」
「そりゃあ通報案件かもしれないが」
「女子が言っている分には何の問題もないだろ。」
ダメな教師だ。
隣で頭を抱える妹の霧山アンがいたたまれない。
その日の放課後。
「ホクト。」
帰り支度をするホクトを呼ぶ霧山ユリ。
「なんです?」
教室には2人だけ。
「私の職場体験先の神社」
「何かあるぞ。」
「何かって?」
名前が無い。
人と人非ざる者を繋ぐ。
オーラ全開美少女神巫女。
「何かあるに決まっている。」
理屈が判らん。まったく判らん。
霧山ユリが自宅の旅館「霧山荘」に戻り
職員用の作務衣に着替え髪を纏め
空き部屋の清掃をしていると
同じように作務衣姿の藤ダイスケが
クリーニングから戻った浴衣を抱えてその部屋に現れる。
「お疲れ様。私がたたむからそこ置いておいて。」
「判った。」
「ダイスケちゃんとお給料貰ってる?」
「は?」
「アンタ元々厨房で皿洗いで雇われたじゃん。」
「他の業務させられたらその分請求しなよ。」
藤ダイスケはわざとらしい乾いた笑いをして去る。
同じ頃、ホテル「大太楼」では兄の藤アラシが厨房でじゃがいもの皮むきをしている。
境鳥温泉組合長でもある支配人湯川は
「バイトの時間帯がもう少し早ければ館内清掃させるんだがなぁ。」
「バイトは学校から禁止されているんで。賄いだけで有難いっす。」
「それに厨房の手伝いは将来の役に立つかなって。」
「将来?」
「大学行って一人暮らしして自炊できるように。」
「今からその修行?」
「はい。なので出来れば高校生になったら正式にアルバイトで雇ってください。」
「若いのに偉いってキングに褒められた。」
「キングって呼ばれてるのか支配人。」
藤家自宅ではアラシとダイスケがそれぞれのバイト先から持ち帰った食事を囲み
兄弟妹3人がそれぞれの報告をする。
と言っても喋るのはいつも兄2人。
妹サクラは殆ど毎日美味しい食事にありつけるので
聞き役に徹し時に賞賛し、激励し2人を操る。
ただこの日は開いた口がふさがらなかった。
兄アラシのバイト動機は弟ダイスケも初耳だった。
「もう大学決めたのか?」
「落研があればどこでもいい。」
「ただ通えなかったら後で困る。」
アラシは本気で落語家になるつもりなのか、
それとも落研出身の芸人になるつもりなのか。
目標があるのは悪いことじゃあない。
芸人の妹になれる可能性もなくはない。
「お前こそ何で霧山荘でバイトなんだ?」
アラシが大太楼でのバイトが決まった際、
霧山荘の長女霧山ユリから
「それならダイスケはうちで働く?」と言われていた。
ダイスケは少し考えてから頷いていたのをサクラは覚えている。
アラシが稼ぐのだからダイスケも稼ぐつもりなのだろう。
霧山ユリは小学生の頃から家業を手伝い
同じように天城マヤも早くからホテルのブーランジェルを目指している。
まだ幼稚園に通っていた射手ヒロでさえ
「大人になったらパティシエになる」とテングランドで父母の作業を見ていた。
自営業ではない藤家では外で働くしかない。
ダイスケはそれに感化されたのだろう。
程度に考えていた。
「霧山荘を継ぐなら今から仕事覚えて損はないだろ。」
「は?」
サクラは無意識に声に出していた。




