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016

境鳥村立中学および小学校

野咲ミク 中学担任

相原リョウコ 小学担任

霧山ユリ 中2

藤アラシ 中2

藤タイスケ 中2

星ホクト 中1

霧山アン 小6

藤サクラ 小5

星ミナミ 小4

天城マヤ 小2

射手ヒロ 小1


1時間ほどして全員が管理棟へと集まると

引率野咲ミクの隣に作業着にヘルメットを被った男性が立っていた。

「こちらは八手ダム管理事務所整備担当のクロベさん。」

野咲ミクの紹介に子供たち全員揃って

「こんにちわー」の挨拶。

「わからない事はクロベさんに聞きましょう。」

「はいっ」と手を挙げたのは藤アラシ。

「どうしたアラシ。」

「富山の黒部ダムには八手さんがいますか?」

「わからない事はクロベさんに聞きましょう。」

野咲ミクの言葉にアラシ以外

「はーい。」

クロベ氏も「よろしくお願いします」と返し

「ではこれから八手ダムの内部へご案内します。」

「おおっ」とどよめく子供達。

用意されたヘルメットを被りダム見学ツアー開始。

まずは管理棟内の管理室。

壁のいくつかのモニターには何やら数字とグラフが映る。

デスクにはパソコンとスイッチがいくつか並ぶ。

「ここで24時間体制で監視しています。」

各種センサーと目視による監視。

「はいっ。」

手を挙げたのは霧山ユリ。

「このダムの建設されたそもそもの目的は治水ですか?」

クロベ氏は少し驚いて

「治水と利水の両方の目的があります。」

「治水とは洪水などの災害を防ぐ事です。」

「利水とは水を生活や産業に用する事です。」

「さらにっ」

クロベ氏の突然の興奮に子供達も驚く。

「災害緊急時に水力発電として利用できるよう設計されています。」

「いよいよダム内部へご案内しましょう。」

「機密情報もあるので皆さんには目隠しを」

どよめく子供達。

「しかし目隠ししては見学できないので」

「今回は特別に目隠しなしでいいですよ。」

ダムの内部へは管理棟を抜けて専用の出入り口からしか入れない。

「関係者以外が簡単に入れないよう」

「扉には普通の鍵と」

クロベ氏が別の監視員に合図すると

「監視員の操作による解除が必要です。」

再び「おおっ」とどよめく子供達の中で一人霧山ユリだけは

「虹彩認証は?声紋チェックは?」

「このダムではそこまで重要な機密は取り扱っていません。」

「テロリストが爆弾持ってきたら?」

質問したのは藤ダイスケ。

「下流の住民を人質に議会解散を要求されたら?」

「速やかに通報します。が、私はそれほど心配しておりません。」

「なぜなら」

「この八手ダムを破壊し大洪水を起こせるほどの爆薬を」

「そう簡単に運搬設置できるとは思えないからです。」

扉から中に入ると

コンクリートの壁の狭い通路から下に階段が伸びている。

「とは言え、万一危険物が持ち込まれてもすぐに対処できるよう」

「こうして毎日定期的に見回りしています。」

大人が二人横に並んで歩ける程度の狭い通路ではあるが

照明は多く、壁のあちこちにはダム施設の概要がパネル展示されている。

「機密も何も、ただの見学コースじゃん。」

藤アラシがボソリ。

「それはそうでしょう。本当に機密があったらただの小中学生を通すわけがない。」

「本物の点検用通路はほかにある。何処かに隠し扉とか」

「電子ロックで施錠された扉が」

霧山ユリと藤兄弟が何やら盛り上がっている横で

その妹達は俯いて「恥ずかしいからやめて」と嘆く。

通路の突き当りに到着すると扉があり

「次はダムの構造について説明しましょう。」

扉を開くと外に出て緩やかなカーブをした階段がさらに下へと通じている。

階段を降りきると目の前に巨大な塊がそびえる。

「でかい。思ったよりでかい。」

「これならちょっとやそっとの爆発物でどうこうならんな。」

子供達の感嘆が収まるとクロベ氏は

「こちらは放水部になります。」

「あそこに見える筒が発電用」

「と言っても一年中水を流してはいないので」

「発電は災害時と月に一度メンテナンスの時」

「それ以外の放水はあちらの」

別の放水ゲートを指さし

「ゲートから治水と利水に利用しています。」

「ここからでは少し見にくいのですが」

この先にももう一つ堰があって」

「大雨や長雨の際に一度とに大量の水を放水しないよう」

「調整する事ができます。」


施設の見学を終えた一同は

ダム施設に隣接している公園の東屋での昼食。

ダム談義で盛り上がりつつ

各自持参したお弁当を広げる。

霧山アンがミナミのお弁当に目を付ける。

「ちょいとその玉子焼きおくれよ。この唐揚げと交換でどう?」

「いいすよ。」

「おおう美味いな。ほんのり甘いのは何だ。」

「多分はちみつ。」

「多分。とは?」

「ホクトが作ったので。」

「何だよそれ。いい兄貴かよ。サクラ。いい兄貴がいるって。」

「ただの都市伝説でしょ。じゃなければ妄想。」

話を聞いていた霧山ユリは

「そうか星家の卵焼きは甘いのか」

「どれどれ私もいただこう。」

隣のホクトの卵焼きを奪う。

「あ。」

「ん?んん?甘くはないな。」


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