015
境鳥村立中学および小学校
野咲ミク 中学担任
相原リョウコ 小学担任
霧山ユリ 中2
藤アラシ 中2
藤タイスケ 中2
星ホクト 中1
霧山アン 小6
藤サクラ 小5
星ミナミ 小4
天城マヤ 小2
射手ヒロ 小1
集合場所の学校には中学担任野咲ミクと天城マヤ。
野咲ミクは何やら不機嫌で待ち構えている。
「どうしたの?」
霧山ユリが尋ねると野咲ミクは不貞腐れながら
「じゃんけーん」
「は?」
「じゃーんけーん」
「ほい。」
野咲ミクが勝つ。
「勝てるんだよ。私ジャンケン強いんだよ。」
察した霧山ユリは
「ジャンケンに強いも弱いも無いから。」
「いや。私はあいつに勝ったことがない。」
霧山ユリはホクトを呼び何やら耳打ちをする。
「じゃーんけん」
「ほい。」
ホクトが負ける。
「じゃーんけん」
「ほい。」
ホクトが負ける。
「な?私強いだろ?」
ユリはドヤる野咲ミクを一瞥してからホクトに向かい
「じゃんけんに強いも弱いも無い。よね?」
ホクトも担任の顔を見てから向き直り頷く。
「は?おい。なんだそれ。」
「はいはい。みんな揃いましたよ先生。」
藤兄妹と射手ヒロが現れ有耶無耶に。
ゴールデンウィークも明け、観光客の姿もなく
道中は穏やかに長閑にゆっくりと歩く。
「こんな事になるなら部活する必要無かったな。」
「なんて思っていたらごめんなさい。」
霧山ユリの謝罪にホクトは
「思ってないですよ。」
ホクトは霧山ユリとの遠足の後
何度か一人でダムまで歩いている。
学校が終わって、真っすぐ帰宅せず
ダムまで渓谷を見ながら歩き、日が落ちるまで湖を眺める。
もっと何かを思い出せるような。
「そう。ならよかった。」
結局何も思い出せていない。
ダムに到着すると野咲ミクは子供たちを一休みさせ
「筆記具持ってきたな?」
「1時間やるからダムと湖と渓谷を見学して」
「思ったこと感じたこと何でもいいから書きなさい。」
背負っていたリュックの中から
コピー用紙数枚挟まれたA4バインダーをそれぞれに配る。
「ちょっとっ。」
受け取りながら霧山ユリは
「急に本物の教師みたいなことしないで。びっくりするでしょ。」
「お前は私をなんだと思っている。」
「先生、これは提出ですか?」
藤サクラの質問に
「そうだ。採点対象になるから真面目に書くように。」
「その採点とやらは今日のお肉の量に関係しますか?」
藤アラシはいたって真面目だ。
「関係無かったが関係あることにする。」
教師のこの言葉に
「アラシが余計な事言ったからダイスケの肉が減った。」
話を聞いていなかった藤ダイスケに妹サクラが衝撃発言。
「アラシてめぉ」と事情を知らないまま兄弟喧嘩勃発。
その寸前で妹サクラは
「まあまあ。私が頑張って二人のお肉も確保するから。」
「それならいいか」と二人は治まるのだが
藤サクラはこのやり取りを見聞きしていたホクトとユリにボソリと
「確保する肉を分け与えるとは言ってない。」
ホクトはいつものようにダムの天端に向かおうとするが
「まずは展望デッキへ行きましょう。」
霧山ユリの先導で全員がそれに従った。
ホクトもそれに続いて展望室への階段を登る。
他の皆の声が遠くに感じる。
この感じは霧山ユリとダムに来た時もそうだった。
一人で来ていた時もそうだった。
ただそれは、
何かを思い出そうとして集中しているからそうなるのだと
あまり気にしなかったし、今回もそうだろう。
実際目の前に見える景色に意識を向けると皆の声も元に戻る。
「ホクトさんは何書きます?」
天城マヤがダムを眺めるホクトの隣に来る。
「せっかくだから部活で使える事にしようかと。」
「部活?」
「災害対さ」
「違うっ。怪獣対策本部だっ。」
霧山ユリの力説。
「部活のことを考えるなんてと感心していたのに。」
「何ですかその部活。」
藤サクラは兄達からは何も聞かされていないようだ。
「サクラ。ユリ姉の言うことは気にしないで。」
霧山ユリの妹霧山アンは続ける。
「姉は今ちょっと患っているだけ。」
「ユリさん病気?」
「いや年齢からくるアレだから大丈夫。」




