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001

境鳥村立中学および小学校

野咲ミク 中学担任

相原リョウコ 小学担任

霧山ユリ 中2

藤アラシ 中2

藤タイスケ 中2

星ホクト 中1

霧山アン 小6

藤サクラ 小5

星ミナミ 小4

天城マヤ 小2

射手ヒロ 小1


境鳥中学怪獣対策(本)部


星ホクトは戸惑っている。


江戸時代中期、そこには集落がなく小さな山があるだけだった。

ある日隕石が落ちた。

直後、二体の巨大な二本足の人の形をした何かがすぐ近くに降り立った。

雲まであるその大きな身体は

頭の方はもう空と同じように見えていた。

隕石が落ちたその地面は大きく抉れ深い穴になっていた。

二体の巨人が近寄ると、大きく丸いそれはもぞもぞと動いた。

一体がすぐにそれに飛び乗り抱きかかえ

しっかりとそれが動かないように自らも丸くなった。

別の一体が、丸い何かを抱えたままのもう一体に土を乗せた。

何日も、何日もかけて土を乗せ続けて、すっかりと覆ってしまった。

巨人の中から、同じ形だか小さな何かが数体現れた。

巨人は空へと去ったが

中から現れた人の姿をしたはそのまま残っていた。

それから何年も何年も経って、そこには木が生え、川が流れ何処にでもある山になった。

人の姿をした何かは、その山にずっと棲み続けていた。

山には温泉が湧いて、人が集うようになった。

集った人々は、山の中に人のような、鳥のような姿の影を見た。

山の中を飛ぶように舞う姿から「あれは山の神。人と鳥の境にいる者」と呼んだ。

以来、この山は境鳥山と呼ばれ、

今でもこの山では天狗の目撃情報が後を絶たない。



「って妄想、いや設定どう思う?」

目の前の中学二年生女子霧山ユリは

席に着いているホクトに身を乗り出し尋ねる。

その表情は真剣のようで笑っているようでもある。

「どうも思わないです。」

真顔で答えるホクトの頭にチョップ一閃。

「何か思えよ。」

ホクトは頭をさすりながら答える。

「江戸時代中期ってところがちょっと。」

「ちょっと何。」

「神話だの伝説だのと言うわりに」

「江戸時代では最近かと。」

土を盛って300年程度で

木々が生え川が流れる山になるのだろうか。

霧山ユリは腕組しながらうーんと唸る。

「最近のお江戸事情は知らんが」

「それなりに人がいる時代にしないと」

「この話誰から聞いたん?てなるじゃん。」

それはまあ確かにそうなのだろうけど

数多の神話だの伝説だのは誰が見ていたのかと。

何より巨人が巨大すぎやしないか

「巨大過ぎる巨人もどうかと」

などと思っても言わない星ホクト。代わりについ、

「何処かで聞いたようなお話ですね。」

霧山ユリはもう一度ホクトの頭にチョップした。


星ホクトは戸惑っていた。

それは昨日の入学式。

ボールが挟まったままの低い天井の体育館で行われた小・中合同の入学式。

全校生徒9人。内2人が新入生、内1人は小学生。

軋む床板とかろうじてアルミの窓枠の木造校舎。

教室の扉の上にあるプレートに書かれた文字。

「中学校」

隣の教室のそれを見ると

「小学校」

何からどう、誰に聞くのか考えていたら眩暈がした。

今日から中学1年生の星ホクトは恐る恐る木製の戸を開ける。

黒板、教壇、教卓、それに向かい合わせに横一列に並ぶのは、

どうやら中学生4人の机と椅子。

「どうしたホクト。佇んでいないで席に着け。」

初対面で下の名前を呼び捨てにする担任の野咲ミク。

その後ろから残り3人の中学生か教室に入る。

「机の上のプリントに名前がある。そこが自分の席だ。とっとと座れ。」

横並びの席の左端。窓際。無駄に広い校庭と広い空。

「詳しい事はそのプリントに書いてあるから帰ってからよく読むように。」

「明日から普通に授業があるから忘れ物のないように。}

「それから霧山ユリ。」

呼ばれたのは4人の内唯一の女子生徒。

「はい。」

返事をしながら立ち上がると

「お前が年長者だ。クラス委員、じゃなくて生徒会長を任せる。」

任せてと返事をしようとしたのだが

隣に座る(髪型こそ違うが)同じ顔をした二人の男子が立ち上がり、声も同時に

「ちょっと待ってください。」

「俺たちも年長者だ。」

全てを言い終わる前に霧山ユリは

「任せてください。この腐ったミカン共を無事に出荷できるよう尽力します。」

「いや腐ってたら処分しようよ。」

「では先生、汚物の消毒用に火炎放射器を一丁。」

「お前のクラスメイトは生ゴミでも汚物でもないから却下だ。」

何を聞かされているのだろう?

「他の委員は明日のホームルームで決めよう。今日はこれまで。」

「ああそうだ、4人になったから部活が創れるぞ。立ち上げるなら」

担任が言い終わる前にユリが再び立ち上がる。

「先生。それなら皆決まっています。」

皆?

「そうか。何部だ?」

霧山ユリは勿体ぶって、担任に意味深そうに微笑み言った。


「境鳥村立境鳥中学怪獣対策本部」


星ホクトはずっと戸惑っている。


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