アレンは死ぬことにした
アレンは死ぬことにした 夏目悠里・作(沼津平成が本垢となっております)
アレンは死ぬことにした。
事件さえ起きない、暇な現代に絶望していた。
転生する前は、異世界は楽しいことがいっぱいだと思っていた。
そりゃあ、辛いこともあるだろうけど。
でも、僕はインキャだからね。
友達はいないんだ。
薄々気づいていた事実ではあったが、身をもってそれを体験した時アレンは絶望した。
そして友達のいないアレンは、電車に轢かれるところだった。
意図的ではなかった。ぼんやりとしていただけだ。
そして、そこを勇者に身代わりになって助けてもらった。
勇者は一命を取り留めたが、重傷を負った。
あれから数年がたった、春であった。
アレンは人を助けた。その人は松葉杖をついて歩いていたところ遮断機が降りたのだ。
その人は怪我一つしなかったがアレンは死んだ。
死ぬ直前にその人は、こんなことを言っていた。
「ありがとう。君はもしかしてあの少年かね?」
しかしその時にはもうアレンは目を瞑っていた。アレンに見えていたのはあの勇者ではなく、神経が見た幻影だったのだ。