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夢想少女  作者: *amin*
10/20

10 俺の彼女を紹介しましょう

「幸!今日は俺のバイト先を紹介するぜ!」

「はぁ?」



10 俺の彼女を紹介しましょう



幸は突然の俺の言葉に持っていたケータイを落とした。

それを素晴らしい反射神経で地面に落ちる前にキャッチした俺が幸にケータイを返すと、それを受け取りながらも目をパチクリさせた。

完全に状況が理解できてない証拠だ。

幸と付き合ってる事を皆に黙って付き合ってたけど、初めて石原以外に幸を紹介する時が来た。


学校の奴らじゃなくて、バイト先の先輩だけど。

ってか先輩にニヤニヤしながらメール打ってたのを見られて彼女の存在がばれた時、紹介しろってうるさかったから。

この間、初めて一緒に遊びに行った時に撮ったプリクラを見せれば先輩はかなり興奮してた。

そりゃそうだ。幸は可愛いもん、誰から見ても。モデルって言っても通用するくらい可愛い。

言いすぎじゃないぞ。本当に可愛いんだよ!


「え、な、何で?何であたしが春哉のバイト先に?」

「先輩が幸を見たいってうるさくてさぁ、プリクラ見たら」

「何で見せんの!?春哉馬鹿じゃないの!?やだ!絶対行かない!ハズすぎ!!」

「そ、そこまで言わなくても……いいじゃん!俺だって彼女誰かに紹介してぇよ!」


俺が食い下がれば幸は真っ赤な顔をして口をパクパク動かしてる。

そんなに恥ずかしいのか。ここまで渋られたら可哀そうになってくるな。しょうがない、先輩には言っとくか。


「無理しなくていいよ。先輩には言っとくしさ、急にゴメン」

「行ける」

「へ?」

「春哉の彼女としてじゃなくてラーメン食べるだけなんだから。奢ってね」


幸はあんま行きたくないだろう。でも顔を真っ赤にしながらも行くと言ってくれた。

それが嬉しくて、俺は何度も頷いた。


「お、おう!奢ってやる!トッピングにチャーシューつけてやる!」

「あたしチャーシュー麺だから卵トッピングで」

「あ、そう……」


何気に高い物を食う気満々でいる幸は実はちゃっかりしてると思う。

俺のバイト先に学生ラーメンがあるって事を幸は知ってるはずなのに、安い学生ラーメンを食べる予定はなさそうだ。

まぁ仕方ない。それで幸が来てくれるなら喜んで貢いでやろうじゃないか。


とりあえず放課後に幸をラーメン屋に連れていく約束をして、俺は自分の教室に戻った。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「嘘ー!春の彼女ちょー可愛くない!?やばいやばい!」

「俺の彼女より可愛い……くそぉ春の奴!あんな可愛い彼女作ったのかよ!」


放課後、幸をラーメン屋に連れて行ってカウンターに座らせてバイトの服に着替えてる俺の横では、幸を覗き込んで騒いでる先輩達。

今日の夕方のシフトは俺と女の真由ちゃん先輩、大学生の智樹さんと優太さん。んでここの本店員でおっさんの次郎さん。

何気に次郎のおっさんも混じって幸を見てキャッキャと騒いでいる。

それを少し誇らしげに見ていると優太さんが俺の肩を掴んできた。


「マジ春のくせに生意気じゃね?なんだよ彼女めっちゃ可愛いじゃん!プリより可愛いし!」

「春貢がされてんじゃないのー?気をつけなよー」

「マジで春なんかに先を越された。このまま彼女出来なくて童貞だったらどうしよう俺……!」

「若いっていいねぇ。俺も若い時は青春してたもんだ」


それぞれが好き勝手にはしゃいでいる。ってか智樹さん童貞だったのか……彼女いないのは知ってたけど。

もてそうなのになぁ、でも智樹さんチャラチャラしてるもんなぁ。

その事実に少し驚きながら、俺は幸が食べる様のラーメンを作っていると、優太さんが幸に話しかけてるじゃないか!!

慌てて幸の所に行こうとした俺の肩を次郎のおっさんと智樹さんが掴む。


「まぁまぁ春哉君。彼女がどんな子か、おっさんが見極めてやろう」

「俺も協力すんぜー」

「いらないっすよ!放せー!幸がヤリチンの優太さんの毒牙にかかる~!」

「あんたそれ優太が知ったらぶたれるよ。いいじゃない春、あたしも彼女がどんな子か見極めてあげるからねー」


やばい、先輩達マジで勝手に楽しんでやがる。

ってかそんな暇があったら、さっさと他の客にラーメン出せ!他にも客来てんだぞ!!

その時、ラーメン屋のドアが開いて高校生が3人入ってきた。

中の1人はこないだ幸と見かけた男子がいた。女に完全スルーされてた……あれ?あの野球のバット持ってる奴は見覚えがあるんだよな。良く来るから、結構あの男子も来てたのか?

真由ちゃん先輩が席に案内してる中、俺は幸と優太先輩の会話に耳を傾けながら作業した。


「春どう?あいつちゃんと彼氏やってる?」

「春?春哉の事ですか?どうですかねぇ、春哉はヘタレですから」

「あはは!確かに」


え、ちょ……悪口言うな。誰がヘタレだ。

幸の方を振り向くと何ともまぁ可愛らしい笑みを浮かべて話してるじゃないか。少なくとも学校で愛想がないと言われているのが嘘のように明るく振舞っている。

まさか幸……優太さんがタイプとか!

そう考えるといてもたってもいられなくなって、俺は幸にラーメンを持って行った。

俺が来たのを見て、雄太さんはにやりと笑って幸から離れ、俺の肩を叩いて厨房に入って行った。


「はい、お待ちどうさん」

「マジ遅い。ってか卵ついてない」

「あ、ごめん」

「春哉、あたしが客だからって気ぃ抜いてんでしょ。ムカつくから店のアンケートに名指しで悪口書いてやる」

「止めてそれ!店長にマジで怒られるから!」


何だよ、俺と優太さんの態度違いすぎない?やっぱ幸はツンデレすぎる。ん?デレあるか?ツンツンじゃね最近。ツンツンツンデレだ。俺仮にも彼氏だよねぇ。

とりあえず卵を追加して、俺は渋々持ち場に戻った。


暫くして客入りも落ち着いてきて、俺は再び幸の所に向かった。

幸はラーメンを食べながらもケータイをいじっていた。


「ラーメンどう?」

「美味しい。先輩作るのうまいね」

「いや、それ俺が作ったのもある。トッピングの卵は俺製~」

「……さっきから可笑しい味があると思ってたら卵か」

「おい!」


軽い会話を繰り返した後、俺は気になった事を幸にぶつけた。


「幸さー、優太さんに愛想良すぎじゃね?」

「はぁ?あたしが愛想悪かったらあんたが気まずいじゃん。空気読んであげたんだよ」


そう言われると言い返せない。

しかも俺の為と言われたらどうしようも無いじゃないか。幸の言葉1つに一喜一憂してる自分が悔しい。

幸は少し意地の悪そうにニヤニヤ笑ってる。

くそぉ……幸は本当に可愛くない事しか言わない。その癖に実は俺の為なんて言われたらそんなの許しちゃうに決まってるじゃないか!


「幸ありえねー!ツンツンすぎる!少しはデレを見せてくれ!」

「はぁ?」


ラーメンをズルズル食べながら幸が視線だけをこっちに寄こす。

正直マドンナがラーメン食べてる光景は少しだけ不釣り合いだ。ってそんな事はどうでもいい。

なんで優太さんにはあんだけ愛想良くって俺にはこれな訳!?

ツンデレなんかじゃない。ツンツンだ。これじゃ俺が報われなさすぎる!


「すいませーん!ラーメン替え玉ー!」

「中谷お前よく食うなぁ……」


あの野球坊主、毎回替え玉してくんなぁ。向こうも高校生だから大して俺と歳変わんなそうなのに。

隣にいる奴らは呆れながらも面白そうだ。

よく学生ラーメンを食いに来る常連の3人。中指に高そうな指輪してる奴と、よく食う野球少年、それと野球少年に突っ込みを入れてる常識人そうな奴。

いつも騒ぎながらラーメンを食っていく。かなり仲がよさそうだ。

しかも指輪してる奴、こないだすれ違った時全く顔が分かんなかったわ。ラーメン屋にくると分かるのにな。


「ほら春哉、早く行きなよ」

「どんだけツンツンなんすか!しかも俺だけ!」


幸にしっしと扱われて仕方なく俺は急いで野球少年の所に向かおうとする。

そんな俺の背中に幸が一言。


「これは春哉専用。これも立派な特別扱いじゃない?」

「……っくそ~!」


楽しそうに笑いながらそう言われたら言い返す言葉もない。

負け惜しみだけを言って、俺は野球少年のオーダーを受けに行った。


「替え玉1つですねー」

「あと餃子も」

「え、光太郎も食うのかよ」

「中谷見てたら食いたくなった。拓也食わねーの?」

「セーレにお菓子貰う気でいたし……でもお前ら食うならなぁ、すいませんチャーハンも」


どうやら外人の友達もいるみたいだ。最近の高校生はすごいな、俺も高校生だけど。

野球少年達のオーダーを受けて、再び厨房に入る。

幸はそれをニコニコしながら眺めている。もう何だよ、こんな時にデレを発揮しなくても……

でも言い返す事が出来ない俺は、完璧に幸の尻に敷かれてるようだ。



小さな幸せに浸る土曜日、

 俺は絶対に君には敵わないみたいだ。


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