表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/82

制裁 ②

くぐもった悲鳴と絶叫混じりの嗚咽が繰り返されるガレージ内で2人の作業者を見るアマネは吐き気と涙を止められず、横に置かれたバケツに幾度目かの嘔吐をしていた。


椅子に固定された男の歯は無くなり、鼻を鋏で切り落とされ、僅かに繋がった皮膚を引きちぎったアンリは作業台のトレー横のゴミ箱に投げ入れ汗を拭う。


「初夏にガレージ作業は暑いね。少し休憩でもしようか。」

「撮影してるんだろ?編集とかいう作業面倒になるんじゃないのか?」

「スナッフビデオとして売る用は雑な編集で誤魔化すからいいよ。それより従業員の健康が大事だ。」


タオルで額を拭い手振りで5分ね。と示したアンリは保冷バッグから缶チューハイを取り出し喉を潤す。


「うひぃー・・・生き返るねぇ。」


送風機前でジャージをパタパタさせ身体に風を纏わせ体温を下げながら同様の動きを作るサラに微笑む。


「合わない仕事をさせてごめんね。」

「ん?あぁ別にいいさ。戦いの中で殺してやりたい気持ちはあるが仕事と嗜好は別だからな。」

「ありがとう。またアングラな戦いが出来る機会を探しておくよ。」

「お、それなら前廃墟でやったやつがいいな。土屋には悪いが武器も薬も覚悟も有りの相手は楽しかった。」


雑談に花を咲かせる2人の後ろで胸に手を当てていたアマネは、啜り泣く声と消え入りそうな謝罪が耳に届き顔を向ける。


「か、神崎ひゃん。ずいませんでひた・・・勘弁してくらひゃい。」


数秒の沈黙がガレージ内満たし、歯も鼻も耳も無くした男の口から続く言葉が届く。


「に、2度とオンヒャをズカウドじまぜん・・・だ、だからいのぢだけはたすげて下ひゃい。」

「・・・謝る事は無いよアミーゴ。君の言葉も気持ちも十二分に届いている。」

「ほ、ホンドでずがぁ・・・?」

「あぁ、心からの謝罪を聞けた今、君に更生の未来を確かに感じとったとも。」


俺は嬉しいよ。と涙ぐむ目頭をハンカチで拭ったアンリは缶を傾け喉を潤しながら言葉を続ける。


「安心しなさい。君の命を脅かす事はしない。例えサラが手を下そうと、アマネさんが手違いをおこそうと俺は決して君を見捨てない。」

「あ、あぃがじょゔごひゃいまふ・・・。」

「うん。だから今見える光景を目に焼き付けて欲しい。

この狭いガレージが君の網膜が写す最後の画だ。」


ビクリ、と肩を震わせる男に近づきその背に回ったアンリは優しく血に濡れた肩に手を置きカメラを指さし言う。


「君の誠意ある謝罪に答える為にもこれからする事を説明しよう。

先ずは二度と両手が使えないよう健を断つ。手術による再建手術も絶望的となるよう電気メスで丹念に何度も焼き切るよ。」

「神崎ざぁんっっ!?」

「勿論選択肢はあるとも。全ての指を落として良いなら健を断つ必要はないから好きな方を選ぶと良い。」


ポンポンと肩を優しく叩きあやすアンリは恐怖から震える喉に触れる。


「その後、喉軟骨を破壊し、鼓膜部と口と鼻と目の粘膜をバーナーでしっかりと癒着させる。こちらも医療再建手術で治せないよう粘膜部位も眼球内の水分も奥まで念入りに蒸発させるとも。

あぁ、安心しなさい。呼吸は出来るようストローサイズの穴は空けてあげるから。」


サービスだよ?とカメラに顔を向けさせると、男は動揺と混乱から身体を暴れさせはじめ拘束している椅子ごと床に倒れ込んだ。


「おいおい危ないな。サラ〜起こしてあげてよ。」

「今は休憩中だ。これを飲み終えてからでも良いだろ。」

「あらら、まぁ話しはその状態でも出来るからいっか。

最後に腰椎最上部と胸椎最下部を骨折及び電流により神経ごと破壊する事で下半身不随にさせる。この処置の素人ではあるが、とある友人の作業手伝いを何度かしているからそこは安心して欲しい。

なに、多少手違いがあっても死ぬ事はないさ。ただ生涯尿漏れと便を垂れ流す人生を送るだけだよ。」


ハッハッハ。と笑いながらアマネに近づいたアンリは、保冷バッグから水を取り出し差し出す。


「吐いた後は直ぐに口を濯がないと胃液で口内が荒れちゃうよ。」

「すいませんすいません、ありがとうございます。」

「うんうん。口内炎は痛いから気をつけなくちゃ。後、彼に行う一連の処置が見せしめを兼ねた口封じの手法だから覚えといてね。」


は、はい・・・と消え入りそうな返事をしたアマネは俯く。


「私もいつかやるんですか・・・?」

「必要な時はやると良い。手を下したくないなら部下に覚えされば良い。そういうもんだよ。」

「だなぁ。私もアンリも友人に毒されてこの手の行為は慣れっこだがお前はまだ無理だろ。

ならちゃんと倫理の壊れた友人を作るか、慣れるかだ。」


慣れますかね?と乾いた笑いを作るアマネに親指を立てたアンリは力強く頷く。


「慣れる慣れる。むしろ慣れなきゃ精神患うからどっちにしても大丈夫だよ。」

「アンリアンリ、それ大丈夫じゃないぞ。」

「そう?まぁ気にしなくなるのは確かだからね。

今回アマネさんに覚えほしいのは殺しておしまいの口封じだと見せしめには使えないって事だ。

ほら、俺とサラがこの辺りに来た時ちょっとはしゃいだけど詳しく知ってる?」


数秒考えたアマネは小さく首を横に振る。


「幾つかは聞いた事がありますかほとんど噂程度です。こうして直接やり取りするまではそれも尾ひれのついたものだと・・・。」

「だよね〜。そうなると勘違いしたおバカさんが絡んで来ちゃうでしょ?そこで彼のような生きた見せしめが必要って訳。

で、腕も口も耳も目も足も使えなくするし、ほぼほぼこの追い込みでPTSDが発症して俺等を思い返すだけでパニック障害に陥るから警察に唄われる心配も無い。そもそも口が開かないんだけど。」


安心だね。とサラと2人でポーズを決める姿を見て過去に何度もやっているのだと理解したアマネは乾いた笑いで誤魔化す。


「さて、休憩は終わりにして作業を進めよう。」

「あぁ、確か今日は寿司を食いに行くんだろ?席に回って来るやつか?」

「サラは回転寿司好きだね〜。でも今日は高層マンションのセーフハウスに板前さんを出張コースで予約してあるから出掛けないで食べれるよ。」

「おぉ、なんかよくわからないが楽しみだな。アマネも来て作法とか教えてくれ。」

「えぇ!?高級寿司店の作法なんてわかりませんよ。それに・・・この後で食欲湧きます?」


ガレージを満たす血の臭いを前に、ね?と問うアマネに首を傾げた2人は微笑む。


「仕事中と終業後はメンタル共々切り離しなさい。当カルテルは仕事の持ち帰りも反省会も非推奨です。」

「そうだそうだ。自宅残業とかが当たり前になったらゴロゴロしてるだけの私の立つ瀬がないだろ。労働時間とプライベートは分けるべきだ。」

「完全な反社組織なのにホワイト企業精神・・・。」

「使い潰しても替えがある無能なら気にもしないけど、貴女を含め有能な人材は宝だ。

簡単に辞めるだ、裏切るだのされたら業界の損失になってしまう。」


というわけで、と朗らかな笑顔を浮かべるアンリは言葉を続ける。


「そろそろ作業を開始しようか。」


倒れた椅子を壊さんばかりにもがく男の怨嗟混じりの絶叫がガレージ内を満たしていく。






腰元から胸椎下部付近にアイスピックを突き刺し倒れ伏す男から離れた位置で床の掃除をしていたアマネは、アイスピックの尻部に繋がるケーブルとコンセント前に立つアンリを見ると、手にしていたオン・オフのスイッチが差し出され頷きが来る。


「最後の処置だ。長時間だと感電死してしまうからオンは一瞬で良い。」

「・・・。」

「アマネ。直接手を下せないなら私達と肩を並べて生きていくのは無理だ。んで、お前は引き返すには色々知りすぎちまっている。

こう言いたくないが・・・それを置くなら1日待ってやるからエスケープバックを持って全力で逃げろ。」

「おいおいサラ、逃がすなら俺が聞いていない所でやらないと立場上・・・ね?」

「・・・大丈夫ですよサラさん、ザキさん。やります。押します。」


箒を横に置き、深呼吸をしてからスイッチを受け取ったアマネは覚悟を決めたように頷き床の男を見る。

顔とおもしき部位は火傷により穴という穴が癒着し、頬に突き刺された木製ストローから呼吸により笛のような音を生むだけの存在となったモノ。

最後の最後まで直接手伝うように言われなかったのは未熟な私への優しさだろう。

でもここで何もしないが通る程この人達は甘く無い。


手にしたスイッチを押す事で彼の下半身を永遠に奪う事になる罪悪感を他者を踏み躙る事で日々の糧とする悪党の覚悟で塗りつぶしたアマネはゆっくりとオンにし、1秒程でオフとする。

背後で聞こえていた暴れるような音が止み、代わりに生肉が焦げた臭いと失禁した尿の臭いに振り向いた。


「オッケー。これにて完了。カメラの編集は後日やるとして、サラと俺で彼を捨てて来るからアマネさんはガレージの掃除を頼むよ。」

「はい・・・わかりました。」

「血痕を消すオキシドールは棚にあるから使って。後、今着ている服は焼却処分するから纏めといてね。」


ゴム手袋をしたアンリが男の衣服を剥ぎ取り粗く床の血痕や尿を掃除するとビニール袋に放り込んでいき、その横で大型のボストンバックに男を畳み入れたサラは鞄を担ぐ。


「さっさと片付けて寿司パーティーだな。」

「そうだね〜。車に積んだらちょっとまってて。」

「おう、アマネも適当な所で終わらせていいからな。換気扇だけ回しとけば明日にアンリがちゃんと掃除する。」

「はい・・・。」


ガレージのシャッターを半分開け外へ走っていく車を見送ったアマネは緊張の糸が解けた事で膝から崩れ落ち大粒の涙と嘔吐を地に広げた。

本作にもレビューを頂きありがとうございます。大変励みとなります。


最近非常に世間を騒がしている分野である事は重々承知ですが、前作の終了時から構想し一章まで完成したので投稿させて頂いております。

クズ系キャラが多い私の作風ですが楽しんで頂けるよう稚拙ながら励んでまいります。

引き続き本作をよろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ