第97話 RPG!
バヒュンッッッッッッッ!!!!
聞きなれない爆音!
「みんな散開!」
「スドウさん!?」
「おそらく俺の世界の武器だ!的を絞らせないように動き回れ!反撃開始!」
間一髪飛んできた何かを全員かわせた。
後部から火を上げていたことから推進する何かを搭載しているのだろう。
俺たちはゴーレムに装備した30mmバルカンやロケット砲、7.62mm汎用機関銃で何かが飛んできた方向へ一斉射をかけた。
やや離れたところで敵兵が吹き飛ぶのが見えた。
連中はその他の兵と防具こそ甲冑を着込む西洋風騎士だが、モニターに映る連中の手にする武器は明らかにこの世界のものではない。
「きゃあああああ!!!!」
「ルニエールさん!!」
ルニエールさんの搭乗するゴーレムの脚部に先ほどの何かが一発被弾し、瞬く間に走行不能になった。
脚部に何らかの爆発の後、丸い穴が開いて右足が破壊され、走行不能になっていた。
この感じは・・多分、成形炸薬弾頭!?
成形炸薬弾とはアメリカの科学者モンローとドイツの科学者ノイマンが発見した火薬の爆発に関する原理を対戦車・対装甲車両用の弾頭に応用した兵器の通称である。
アメリカの科学者チャールズ・エドワード・モンローは1888年に鉄の鋼板に通常の爆薬を取り付けて爆発させても鋼板表面には爆発の跡が残るのみだが、爆薬の鋼板に接する面をすり鉢状にした状態で爆発させると鋼板表面に大きなへこみが生ずることを発見した。
時代は下りドイツの科学者エゴン・ノイマンは1910年にモンローが発見した原理を応用し、すり鉢状の内側に同様の形状の金属製インナーをかぶせた状態で爆発させた場合、爆発の瞬間、金属が液状化してすり鉢状の中心部に柱の状態となって集中し、金属を含むジェット噴流の柱となって標的の固い装甲板を貫通して穴を開けることを発見した。
本弾頭は弾頭内部中央が空洞になっており、その後方部分は標的に接触する方向に向かってすり鉢状になっている。
すり鉢状の内側には金属の内張りが施されており、そのすり鉢状の後方にはそれをおおうように炸薬が詰められており、すり鉢状の中心には起爆薬がセットされて、弾頭先端の着発信管と同時に起爆するシステムになっている。
戦車などの標的に着弾後、前記したように内部ですり鉢状の中心部分に集中する形で液状化した高温の金属を含むジェット噴流の柱が生じて装甲板を高温で溶かして貫通し、内部の機器や乗員を焼き尽くして殺傷することで撃破する兵器である。
通常の物理的な運動エネルギーで標的の固い装甲を貫通する砲弾とは異なる原理を持つため、化学エネルギー弾とも呼ばれている。
「ルニエールさん、大丈夫か!?」
「だ、大丈夫です・・・。少し驚いただけで・・。でもこのゴーレム動かなくなっちゃって・・・」
「スドウさん!2時の方向から敵の攻撃!これは魔法や弓の類じゃない!スドウさんの持っている武器と同じ匂いがする!」
ルイーゼの指摘にエールが叫ぶ。
「スドウ、あれは一体なんだ!?」
モニターには遠距離の敵が所持する武器が見えた。
それは。
「RPG7だ!」
「アールピージー、なんだそれは?」
「俺が元居た世界の武器!このゴーレムに装備しているのと同じ系統のだ!」
RPG7。
旧ソ連が1961年に正式化した携帯式の対戦車ロケットランチャーである。
現在においても紛争地帯でAKアサルトライフルシリーズとともに幅ひろく使用されている。
本ランチャーは第二次世界大戦時にドイツ軍が開発し実戦に投入されて成果を上げた携帯式対戦車無反動砲パンツァーファウスト(戦車への鉄拳)を参考に開発された。
最初に正式化されたRPG2は弾頭をランチャー本体にセットしてそれを保持するストッパーがないため、弾頭を手で押さえておかなければならない欠点があったが、7ではストッパーがついて克服されている。
実質的な有効射程距離は300mだが、モンロー・ノイマン効果を応用した化学エネルギー弾頭による金属ジェット噴流の威力により現用の西側戦車でも当たり所では撃破できることから、ゲリラや民兵に愛用されて今もなお紛争地帯で必ず見かける兵器である。
本ランチャーは発射後に弾頭後部に搭載されたロケットモーターに点火して推進することからロケットランチャーと説明されることが多いが、発射時に弾頭と同じ質量の爆風を後方から放出することで反動を相殺することで射手にかかる反動を極力抑える無反動砲の構造も併せ持つことから、正確にはロケットランチャーと無反動砲の中間的な兵器である。
「ルニエールさん!もうそのゴーレムはいい!自爆装置を作動させて脱出して!」
「ルイーゼさん!ルニエールさんを収容して!エールさん、ルイーゼさんを援護!」
「分かってる!敵もスドウの世界の武器を持ち出してきやがったな!」
「スドウさん!?」
「ああ、何かを感じる・・・・」
「特に強い魔力があの部隊の中にいる!」
「何かすごく禍々しい魔力を感じます。かなりの悪者の感じですよスドウさん」
ギュイイイイイイイイイイイィィィィィィィッッッッッッッ!!!!!!
俺はゴーレムの足に仕込んだ高速移動用の魔力モーターを発動させた。
市街地の通りを敵陣地に向けてバルカンで射撃しながら移動する。
ゴーレムの体を横方向向きにしながら、大通りをまっすぐ城の方へと向かう!
相手に未来位置を予測させぬよう、幅のある大通りを活かして不規則に動き回りながらゴーレムを操縦する。
すると。
「スドウ!魔力の強い奴が来る、甲冑の感じから見て指揮官だ!」
ゴーレム内のモニターには俺を遠距離から魔法で攻撃してくる中年の騎士が突如、建物の屋上から飛び降りて飛行しながら俺たちにまっすぐ向かってきた!
中年の騎士は軽々と崩れた建物のがれきの上に着地し、俺たちを見下すように叫んだ。
「見つけたぞ!貴様須藤兵衛だな!」
見慣れぬおっさんの口から俺の名が出た。
俺たちは走るのを一旦やめてとっさにゴーレムごと隠れられる大きな石造りの建物の影に隠れた。
拡声魔法でゴーレムの操縦室から奴に向かって叫ぶ。
「なぜ俺の名を知っている?誰だお前は?」
「お前のことは手に取るようにわかっている。どこでそんないかれたゴーレムを作ったかは知らんが直ちに投降しろ!」
建物の影からわずかに見えるいかつい肉体に全身を覆うやや黄金色を帯びた騎士の甲冑姿。
そしてその甲冑の胸にはどこかで見た特徴的な紋章。
「お前、国内治安騎士団の人間だな?」
「いかにも、俺は国内治安騎士団団長のイーストマンだ!そして、これがお前の耳に残るこの世の最後の言葉となる!」




